2022年11月10日に発売された『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)。脳内科医の著者、加藤俊徳先生は「30代も40代も50代も60代以降も、脳は伸び盛り。むしろ、大人の脳は学生時代より『いい状態』になっています」と話します。
学び直したいと思っている大人に「希望の書」となる本書から、特別に全2回にわたり抜粋してご紹介します。(この記事は前後編の前編です)
大人の脳は勉強したがっている

(マンガ:うのき)
学生時代、勉強することが苦痛だったり、つまらないと感じたりしていたのに、なぜか今は”学びたい”と思っているという人は、学び直すのに適した脳になっている証拠!
中年の脳こそポテンシャルが高い
学生時代、あまり勉強をしてこなかった、勉強が得意でなかった、勉強がちっとも面白くなかった、という思い出がありますか?
もしくは「学生時代に勉強をサボったことを深く後悔している。今だったら大学の授業、しっかり聞くのに……。どうしてあのとき真面目に授業を受けなかったのだろう」と、大人になってから、学びたい欲が湧いてきたという人も少なくないはず。
実は、これ、脳科学的に当たり前の現象なのです。
私は、かねてから脳の成人式は30歳と言ってきました。
脳が構造上、「大人になった」という状態になるのは30歳だからです。
もちろん個人差はありますが、学生時代の脳と30代からの脳とでは、前述したように脳の働き方が変わります。
脳のことをよく知らないと、若いとき、つまり20代くらいまでの脳のほうが、イキイキしていて、脳としてもよく働き、だから物覚えもよかったんだと思ってしまいますよね。
しかし、これは間違い。
脳の働きから言えば、大人になってからのほうが断然よく働きますし、記憶力、判断力、決断力など、あらゆる面から見ても、”学生脳”より”大人脳”のほうがレベルが上。
大前提として脳科学的には、20代までの学生脳は、器官として未熟で未発達。
脳が持っている本来の力をちっとも発揮できない状態だったのです。
脳力を体力にたとえてみましょう。
子どものときと今を比べて、どちらが体力があったでしょうか?
子どものときですよね。
私自身、学生時代は運動に打ち込んだのですが、学生時代のほうが圧倒的に体力がありました。どんなに動いても疲れにくいし、ちょっと休んだだけで回復できる身体を持っていました。
しかし、たしかに体力はありましたが、できることは限られていなかったでしょうか。
体力が有り余る5歳児も、時速100㎞の球を投げることはできません。
陸上でもテニスでも野球でもサッカーでも、プロアスリートは体力があった高校時代よりも、大人になってから全盛期を迎えます。
自分史上一番の記録が生まれるのは、体力があった若い頃よりも、大人になってからです。
脳力も体力と全く一緒。
若いときのほうが、たしかに元気だったかもしれませんが、本当の脳力を発揮できるのは、大人になってから。頭がよくなるチャンスは、大人になってからのほうが多いのです。
脳が成人を迎える30歳を境に、脳の機能はどんどん成長していくため、本来の脳の力を発揮できるようになります。
そういうわけで、学生脳と大人脳を比較すると、大人脳に軍配が上がります。
もし、冒頭のように「昔は勉強したいなんてちっとも思わなかったけれど、今は学び直したいなぁ」と思っているならば、それは、あなたの脳がしっかりと成熟している証しです。
学びたいという意欲は脳にとって最高のご馳走。
この機会を逃さず、今のあなたの脳が喜んで働くようになる勉強法を身につければ、まさに鬼に金棒です。
「そうはいっても、実際に物覚えは悪くなっている! 加齢の影響はあるでしょ」と考える人もいるでしょう。
これは大人の脳の使い方をしていないために、記憶力が下がったと勘違いしているのです。
脳科学的にはっきりわかっていることですが、記憶力は加齢によって下がりません。
記憶力の仕組みについては2章で後述しますが、「物覚えが悪くなった」と感じる原因は、すでに大人脳の仕組みになっているのに、まだ学生脳と同じ脳の使い方をしているから。
ルールが変わったのに、古いルールのまま一生懸命頑張っても、結果はついてきませんよね。
まずは私たちが、大人脳の取り扱い説明書をしっかり理解する必要があります。
新しい取り扱い説明書通りに脳を使うことで、この先の人生において、どんどん学びを深めていったり、新しい分野の知識を学んだりすることさえも容易にできるようになりますよ。
*後編は12月22日(木)公開です。
『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)、1540円(税込)は好評発売中!