『思わず考えちゃう』インタビュー第3回

「気の合う人と悪口言っている時間も楽しい」僕が“つながらない関係性”を大事にしたい理由

「気の合う人と悪口言っている時間も楽しい」僕が“つながらない関係性”を大事にしたい理由

絵本『りんごかもしれない』『りゆうがあります』など、子どものみならず大人にもファンが多い絵本作家のヨシタケシンスケさん。3月30日に初のエッセイ集『思わず考えちゃう』(新潮社)を上梓しました。発売されるやいなやたちまち重版がかかり、話題になっています。

ヨシタケさんがいつも持ち歩いているというスケジュール帳に書き留めたメモやスケッチを元に、「こんなことがあったんです」「あんなことを考えていたんです」と自ら解説した一冊。

「富士山を撮るのは盗み撮りにならないの?」「子どもに優しくできないよ」「何かを決めた瞬間が一番楽しい」など、”思わず考えさせられちゃう”エピソードがつづられています。

“思わず考えちゃう”女性に向けて、ヨシタケさんに5回にわたってお話を伺いました。3回目のテーマは「名刺交換が苦手な貴女へ」です。

【第1回】「できないよね」ってちゃんと傷を舐め合いたい “思わず考えちゃう”貴女へ
【第2回】「向いてないこと」から自分の道を決めてもいい

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思っちゃったことはしょうがない

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——仕事に関するエピソードに励まされました。「その時その時にその場にいない人を悪者にしながらなんとかのりきる」「できないことをできないままにするのが仕事」とか。普通は逆のことを言われるし、求められる。大きな声では言えませんが、私は悪口のセンスが合う人といるのが一番楽しいです。

ヨシタケシンスケさん(以下、ヨシタケ):要はそういうことじゃないですか。楽しく悪口言っていきたいわけであって。世の中ってやっちゃいけないことがたくさんあるけど、思っちゃいけないことはないはずで。思ってもいいんですよ。そのことをわざわざ言うかどうかっていう話であって。

僕も子育てが最初すごく大変だったときに「子どもを作って良かったんだろうか?」って思っちゃったことに、自分で傷ついちゃったりしてるわけだけど、思っちゃうのはしょうがないよねって。

それをみんなの前でベラベラ言ったりすると問題だけれど、思っちゃうことはしょうがないよなって。思っちゃったことにいちいち傷つくことはないよなって自分でも思ったんです。どの範囲で発散するかっていうことのセンスを問われるだけで。

気の合う人と悪口言ってる時間が一番楽しいわけで、ポジティブなことばかり言い合っていてもつまらないわけですよ。だから、その辺のぶっちゃけた話を言える友達が増えるっていうことが、人生の質を上げるわけですよね。だから、どれだけ悪口言えるかだと思うので。

つながらない関係性も大事

——QOLが上がるっていうことですか? そこまで言われるとは思ってなかったです(笑)。まあ、ポジティブなことはSNSでいくらでも言えるから……。

ヨシタケ:(SNSも)「ようやるわ」と思うんですよね。僕は、SNSは怖くて一切やらない、というかできる気がしない。一方で、こういう本というか紙の束を通じてのコミュニケーションはまだまだ全然できるわけだし、そういうつながらない関係性も大事だなって思うんです。

——つながらない関係性?

ヨシタケ:僕は小さい頃からすごく本が好きだったんです。わざわざファンレターは書かないけれど、好きでその本をただ持っている。そういう関係があっていいし、わざわざ作家のSNSに投稿して返事もらって「ワーイ」みたいなことがなくても、自分にとっての大事な本はいっぱいあるわけで。僕が本が好きな理由はそういうところもあるんですよね。一方通行な感じというか。何かの運命で手にして読んで、その本の影響を受けてっていう。

作った人には一生会うことはないだろうし、思いを伝えることもないだろうけれど、何かしらお互いにとってやんわり影響を与え合ってるわけですよね。そういう関係って良いなって。そういう意味では、本を人に渡せるのはすごくうれしいんです。

——あまり考えたこともなかったです。今の時代はSNSみたいな双方向のやりとりがよしとされるから。

ヨシタケ:お互いにコール&レスポンスをするような、相互的な関係が好きな人ももちろんいるし、それが楽しいのであれば邪魔する気はまったくないです。

僕は、コンサートや演劇とか苦手なんですよね。目の前でやっているから、面白いところで笑わないといけないんじゃないかとか気を遣っちゃう。映画を見るのは好きなんですよ。目の前にいないから。本も本人がいないじゃないですか。だからそういう一方通行なものが落ち着くんです。

だから、絵本のイベントをやっていても、前に来れない子やお母さんの後ろから出てこない子に感情移入しちゃうんです。「来なくていいよ」「来たくて来てるわけじゃないんだよね、わかるわかる」って。「うちに帰ってニヤッとしてくれればいいからね」って。

自分自身も前にグイグイ来れない人間だったし、今でもそうなので。だから、もしこの本を読んでくれて面白いと思っても、別に僕に言わなくていいというか……。お互いに何も言葉は交わさないけど、「だよね」というやんわりとした共感でつながるはずで、そういうつながり方もあるはずだと信じています。

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——セミナーとか懇親会での名刺交換がすごく苦手なんです。

ヨシタケ:同じ感覚ですよね。だったら「ビデオで見せてくれ」っていう。ゴロゴロ寝っ転がって、お菓子食べながら見たいじゃないですか。

——中継や録画でいいからって。でも、そういうことを言うと社会人失格だの意欲がないだの言われる。少なくとも「セミナー行ったけど名刺交換しないで帰ってきました」なんてSNSには書けないですね。

ヨシタケ:お互い顔を付き合わせなきゃできないこともたくさんあるけど、顔を付き合わせないからこそできるコミュニケーションもたくさんあるはずで。そういうものを探したいですね。

みんなで一緒に一つのものを作り上げるのが楽しい人もいれば、そうじゃない人もいる。だから、“そうじゃない人側”として、そうじゃない人はどういうことに喜ぶんだろうって、自分で観察し続けていきたいなと思います。

——自分が喜ぶことを観察していきたいということですか?

ヨシタケ:自分が何に喜ぶかを観察していきたい。自分のような、綺麗事にイラっとしちゃう人間は何に喜ぶのかを。自分で夢を持てない人間はどういうことでホッとするのかというのは、僕が知りたいことであって。その方法論を一つでも二つでも増やしていければ、僕は楽になるはずだってことなんですよね。そういうところをずっとやっていきたいですね。

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※次回は4月18日(木)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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