「おかしなことをおかしいと言えるように」グーグル・カルビーの女性役員から働く女性たちへ

「おかしなことをおかしいと言えるように」グーグル・カルビーの女性役員から働く女性たちへ

女性も男性のように長く働くことがデフォルトになりつつある、とはいえ「従来の男性のような」キャリアアップの仕方には違和感があるもの。

5月19日、「東京ミッドタウン」(東京都港区)で開催された「WOMAN EXPO TOKYO 2018」で、「女性がつくる未来の働き方」をテーマに、長いキャリアをどう設計するか、働き方をどうするかについて基調講演が行われました。スピーカーとして、グーグル日本法人専務執行役員CMO・岩村水樹さん、カルビー上級執行役員の鎌田由美子さんが登壇。その一部をお届けします。

ワークハード、プレイハードな時代の中で…

東日本旅客鉄道(JR東日本)が初めて文系の四大卒の女性を採用した年に入社した鎌田さん。当時の女性比率は1%で、その職種の内訳は秘書か国鉄病院の看護師だったそう。「周りに女性がいなかったので、逆に男女差を意識せずに仕事ができたのはラッキーなことでした」と入社当時を振り返ります。

最初の転機は35歳で駅ナカの開発に携わったこと。寝食を忘れるほど仕事漬けの日々を経て39歳で子会社の社長に就任します。「仕事は楽しくて大好き。だけど42、3歳くらいのとき、『これが一生の仕事なんだろうか』という気がしました。70歳、80歳になっても、ボランティアでも仕事というものに関わっていたい。けれど、その歳になっても商業をしているイメージが掴めませんでした」。迷いが吹っ切れたのは本社に戻ってから。地域活性化を担当するなかで、まだまだ知らないこと、ワクワクできることがあると気づいたのだそうです。

電通からキャリアをスタートさせ、コンサルティング企業やラグジュアリーブランド、ベンチャー企業などを経て、グーグルに入社した岩村さん。「電通にいた頃はまさにバブル。栄養ドリンクの『24時間戦えますか?』というキャッチコピーのような、ワークハード、プレイハードが当たり前の時代でした」と言います。

「インターネット」という言葉が広まる前から「マルチメディア」に関わっていた岩村さんは、「新しいテクノロジーが出てきて、情報流通の世界が変わろうとしている。その世界に飛び込んで行きたい」と留学と退職を決意します。そして、「(飛び込んでみたら)やはり大きな世界があった。このまま変化の海を泳ぎ続けたい」と、いくつかの職業を経て2007年にグーグルへ。

さらに、グーグルの入社前に印象的なエピソードがあったと明かします。なんと、採用インタビューの期間中に妊娠・出産をしたのだとか。「採用通知がきたとき、『すみません、出産してから入らせてください』と言って(笑)。出産をすませて3ヶ月後に入社しました」(岩村さん)。

自分が「ロールモデル」だと思っていたけれど…

「女性初」の冠がついた仕事を引き受けたり、転職活動中の妊娠出産を経験したりするなど進歩的なキャリアを積んできたおふたりですが、後輩の女性たちの言葉に考えさせられたことがあるそうです。

岩村さんのケースは、「Women@Google Japan」の立ち上げを打診され、周囲の女性社員にヒアリングをした時のことでした。「私がワーキングマザーとして働いていたので、みんなも大丈夫だろうと思っていたのですが、『とてもじゃないけど働き続けられません』と言うんです。きちんと発信しなければならない、もっとテクノロジーを活用したスマートなワークスタイル、自分らしく働けるカルチャーに変えていかなくてはならないと思いましたね」(岩村さん)

その話を受けて「今まで、部下に何度も昇進を断られたことがある」と明かした鎌田さん。

「男性の部下に昇進を断られた経験は一度もないんです。自分自身がロールモデルになりきれていないのかなという反省もあるけれど、どうしてだろうと考えると、女性はマジメ。責任に応えなくてはという気持ちが強いんです。でも、責任を全うできてない男性っていっぱいいるんですよ。そこでハタと気付いた。良くも悪くも男性には、デキる上司もデキない上司もいっぱいいて、それだけロールモデルがある。

一方で女性の場合はデキる人しか上がってきていないから『そこまでできないです』と思ってしまう。だから、(女性は遠慮しないで)どんどんトライしたらいいと思う。それが裾野を増やしていくことになる。ただ人数を増やそうというのには賛否両論あるけれど、私は一理あると思う」と述べました。

「自分の気持ち」を無視しない働き方を

そんな彼女たちが今思う「未来の働き方」で大切なこととは?

岩村さんは、「働き方改革で大切なことは、テクノロジーとカルチャー。カルチャーが変わらないと、フレキシブルな働き方もなかなか浸透していかない。みなさんには、職場で心理的安全性をつくることをしてほしい」と言います。

「つまり、誰もが自分らしく発言したり、わからなかったらわからないと聞けたりする環境かどうかということ。シンプルなことですが、自分の意見が大多数と揃っていないから言えない、となるとなかなか新しいものは生まれない。

そのためにどうするか、少し弱みを見せるのです。ガチガチに頑張るだけでなく、弱みを見せることで、『わからないことは聞いてもいいんだ』と周囲も気づく。オンラインのカレンダーに『保育園に迎えに行く』と堂々と書いてください。そうすれば、みんなも書いていいんだと思えるようになります。

グーグルの基本に、『志は大きく、スタートは小さく(Think Big, Start Small)』という考え方があります。みなさんの1歩は大きな働き方改革につながると思います。

また、自分の人生においては自分がCEOだという意識を持ってほしい。仕事は仕事。人生の一部です。自分の人生をどう生きたいのか、リソースをどこに使うのか。外部の家事サービスを活用してもいい、チームを頼ってもいい。いろんなものをうまく活用してください」(岩村さん)

そして、「仕事をしていると、5年経つけどまだこんなこともできないと悩むこともあるかもしれません。10年経って、自分のキャリアはどうなるんだろうか、20年後の私はどうなっているんだろうか。迷うこともあると思う」と働く女性の気持ちに寄り添う鎌田さん。

「でも焦らないで目の前のことをしっかりとやってほしい。絶対に結果はついてきます。そして、疑問に思うことをやめないでほしい。『効率が悪いな』とか、『本当はこうなんじゃないかな』と思うことがあるはず。それらは放っておくと次第に日常になる。その状態に慣れると『変えよう』という意欲も失われます。すると、組織は次のステップに変われない。

おかしいなと思ったことはやっぱりおかしいんです。それを仲間とどうしようかと話し、1歩ずつ変えていってほしい。

隣の芝生は青いと言いますが、今、素敵だな、華やかだなと見えている人も、かなり泥臭く、転びながら、人生を歩んでいることが大半です。だから、これまでの自分の歩みとこれからに自信を持ちながらいろんなことにチャレンジしてください」(鎌田さん)

「WOMAN EXPO TOKYO 2018」は日本経済新聞社、日経BP社が主催する働く女性のための総合イベント。2014年に始まって以来、今年で5周年を迎えました。今回はゲストスピーカーとして女優の草刈民代さん、米倉涼子さん、ニュースキャスターの安藤優子さんらが登壇しました。

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