4月23日より放送・配信を開始するWOWOWの新作オリジナル作品『連続ドラマW フィクサー Season1』。世の中を裏から操る主人公・設楽拳一を、唐沢寿明さんが演じます。
同作に出演する内田有紀さんは、ある事件を通して拳一と知り合う、人気ニュースキャスターの沢村玲子役を演じています。実在する報道番組に見えるほど作り込まれたニュースシーンの裏側や、内田さんが日ごろどのように役と向き合っているかを伺いました。
人間としての脆い部分に、共感できる役だった
——内田さんが演じた沢村玲子は、報道番組の人気キャスター。真摯に仕事と向き合う姿が、凛とした内田さんのイメージにぴったりでした!
内田有紀さん(以下、内田):ありがとうございます。自分のイメージって自分ではよくわからないので、そう言っていただけて嬉しいです。
——ドラマのオフィシャルサイトに寄せたコメントでは「玲子は自分の知らない世界の扉を進んで開く女性」ともおっしゃっていましたね。
内田:玲子は自分の知らないことや物事の真実を知りたいという欲求が子どものように強い人だと思ったので、そのようにコメントしました。たとえば「それを触るとやけどするよ」と言われても、どうしてもその熱さが気になって触れてしまうような。
——内田さんご自身は、そんな玲子という人間に共感できましたか?
内田:強い女性ではあるけれど、人間として弱い部分や脆い部分も持っているところは共感できました。真実を知りたがるところも少し似ていると思います。一方で、自分の野心のために人を利用することもいとわないところや、打算で誰かに近づいていくようなところは私にはない部分。だからこそ、玲子のそういう「裏」の部分は、自分との違いを楽しみながら演じていました。キャスターとしてのポーカーフェイスからどう「裏」をにじませていくかは、監督ともよく話し合いながら演技をつくっていきましたね。
ニュースを読むシーンは、練習も本番も1000本ノック
——そういえば内田さんは、とても丁寧に役作りをされる「準備フェチ」とのこと。監督との話し合いのほか、今回はどんな準備をされたのでしょうか?
内田:玲子を演じるうえで大きなポイントだったのは「ニュースキャスターであること」です。ドラマのなかのいろんな場面で、私がキャスターをしている報道番組の映像が使われています。だからまず、ニュースキャスターを演じるための準備に念入りに取り組みました。さまざまな女性キャスターの映像を見て研究したり、演技コーチに指導してもらいながら実際に原稿を読んで、その様子をカメラで撮影したり……。ニュースの読み方って、すごく難しいんですよ。
——たとえば、どんなところが大変だったのでしょう。
内田:ニュースキャスターは、いつどこで何が起きたかというニュースの内容を、ぱっとテレビをつけた人にもちゃんと届けなければいけません。キーワードがきちんと耳に残るよう配慮しつつ、でもナチュラルに読むという作業が本当に大変でした。ただ読むだけでは成立しないし、かといって感情移入すると芝居になってしまうし、そのさじかげんが非常に難しくて。撮影日まで、何度も原稿を読んで映像をチェックしてという作業の繰り返しでした。
——その練習映像だけで一つのドキュメンタリー作品になりそうです!
内田:すっぴんに部屋着姿で良ければ(笑)。
——(笑)。でも、本当にこまやかな作業で、役に命を吹き込まれるんですね。撮影はいかがでしたか?
内田:私だけでなく、美術や照明、カメラ、演出の力も加わって、本当の報道番組みたいに仕上がっています。ぱっと見たら「あれ? なんか新しいニュース番組始まったの?」という感じ。
——「このキャスター、内田有紀に似てるな?」と。
内田:そうですね(笑)。それくらいの再現度で忠実に作り込まれています。クランクインした初日に、Season1で使用されるすべてのニュースシーンをまとめて撮ったのですが。朝の8時から夜遅くまでかかって……もう1000本ノック状態だったので、撮影が終わった時にはカラカラに干からびていました(笑)。そんな裏側も想像しながら見ていただけたら楽しいかもしれません。
毎回とことん準備したい。その努力が実を結ぶときのために
——内田さんはどんな役に対しても毎回それほどの準備をなさるんですか?
内田:はい。毎回したいと思っています。ただ、準備には一人で取り組む俳優さんが多いなかで、私には演技を俯瞰で見てくれるコーチがついているから、まず恵まれているんですね。そういう第三者の目線を取り入れながら芝居と向き合っていくのが、この数年で私のスタイルとして確立されてきました。一人だけで考えて役作りするのが私にはなかなか難しいので、監督をはじめ、周りのいろんな方々が力を貸してくれるのが本当にありがたいです。
——それほどまで努力を重ねていける原動力は、どこにあるのでしょうか。
内田:やっぱり、その努力が実を結んだときの達成感だと思います。ニュースキャスターの稽古は確かに大変でしたけれど、撮影を終えて「みなさんにしっかり満足して帰ってもらえたかな」「完璧じゃないかもしれないけど、やったぶんの成果はなんとか出せたかな」と思えたのが、本当にうれしかった。努力して、それが実って喜んで、だからまた準備して……の積み重ねなんだと思います。何もせず人から与えられるだけの喜びよりも、自分のアクションが実る喜びのほうが、感動も大きいですし。今日、こうしてみなさんがお話を聞きに来てくださったこともうれしいです。
——取材も、喜びにつながりますか?
内田:はい。こうして仕事について対話することで発散したり、私の言葉を受け止めて昇華してくれる方がいたりするから、また次に進めるというか。これまで重ねてきた日々をいまここでひとつの形にできたと思えることは、俳優としてとても大きな幸せです。
(取材・文:菅原さくら、編集:安次富陽子、写真提供:WOWOW)
■番組情報
WOWOW『連続ドラマW フィクサー Season1』
WOWOWプライム・WOWOW4K/WOWOWオンデマンド
2023年4月23日(日)放送・配信スタート
放送:毎週日曜午後10時~/配信:各月の初回放送終了後、同月放送分を配信
監督:西浦正記
脚本:井上由美子
出演:唐沢寿明
藤木直人 町田啓太 小泉孝太郎 要潤 吉川愛 斉藤由貴 駿河太郎
/ 西田敏行(特別出演) / 永島敏行 富田靖子 陣内孝則 内田有紀 小林薫