ぐるぐる・ふわふわ…めまいを治したい/第5回

ぐるぐるめまいが1回の治療で改善することも…理学療法とは?【専門医に聞く】

ぐるぐるめまいが1回の治療で改善することも…理学療法とは?【専門医に聞く】

「ぐるぐる・ふわふわ…めまいを治したい」と題し、耳鼻咽喉科・気管食道科専門医で『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)の著書がある遠山祐司医師に連載で詳しいお話しを聞いています。

これまで、「ぐるぐるめまい」と「ふわふわめまい」の特徴、また「危険なめまい」について、病院での問診や検査法、薬についてなどを紹介してきました(文末のリンク先を参照)。今回・第5回は、ぐるぐるめまいで受診した場合の病院での治療法について尋ねます。

遠山祐司先生

遠山祐司医師

はがれ落ちた耳石を元に戻す理学療法

——前回までに、めまいの患者さんの数がもっとも多いのは、ぐるぐると回転するように感じる「良性発作性頭位(とうい)めまい症」であること、それは耳の病気が原因なので、耳鼻咽喉科を受診しようと教えてもらいました。ぐるぐるめまいは、耳石が関係するのでしたね。

遠山医師:「回転性めまい」である良性発作性頭位めまい症は、耳石がはがれて三半規管に紛れ込み、コロコロと転がって神経を刺激することで生じます。

耳石は通常は、新陳代謝によって自然に消失します。めまいが起こっても、軽くて吐き気もあまりない場合は、数日~数カ月で自然に治る場合が多いのです。そのため、病名には「良性」とついています。ただし、めまいと吐き気でつらい場合も多くあり、これが問題なのです。

——「半年以上も断続的にめまいがして軽快しない」、「急に目が回ると立っていられない」という声が多いです。

遠山医師:治まっても、いつまた起こるのか…という不安もあり、仕事や生活に差し支えることがあるでしょう。

そこで、理学療法として、はがれ落ちた耳石を適切な位置に戻すために、医師が患者さんの頭を右や左に傾けながら動かす治療を行うことがあります。「浮遊耳石置換療法(頭位療法)」と呼びます。

どの位置でめまいが起こるのかを問診

——浮遊耳石置換療法とは、具体的にどうするのでしょうか。

遠山医師:回転性のめまいは、前にお話ししたように(第3回)、頭をある特定の位置に置いたときに発症しやすいのです。生活上のしぐさで、上を向いたとき、下を向いたとき、右を向いて寝ているとき、左も同様です。美容院のシャンプー台での洗髪時や歯科の診察チェアでの治療時に、首から頭を後ろへそらす姿勢でめまいが起こる人もいます。

そこで治療では、「どういう位置に頭を向けたときにめまいが起こるのか」を問診してから、浮遊耳石置換療法を試みます。

具体的には、患者さんには診察台に寝ていただき、医師が患者さんの頭を手で支えて右に左にと傾けながら、めまいが起こる位置を確認します。

患者さんには、めまいの検査法でも使用することがある「フレンツェル眼鏡」をかけてもらうこともあります。この眼鏡はぶ厚い凸レンズで、めまいが生じると眼球が振り子のように激しく動く様子を医師が観察できるものです。

1回の療法で改善することも

——その治療法の効果はどうですか。

遠山医師:1回の浮遊耳石置換療法でめまいが改善する、治る場合もあります。全体として、受けた患者さんの7~8割は改善することもわかっています。

ただし、治療中にはめまいが起こります。医師が事前に説明をしますが、めまいが起こる位置を探って耳石を元の位置に戻すわけですから、必然的にめまいが起こるのです。1回にかける時間は約5分ですが、帰宅時は車や自転車の運転は避けてください。

また、浮遊耳石置換療法にはいくつかのパターンがあり、もっとも用いられるのが「エプリー法」です。これはアメリカのエプリー医師が発案した方法で、三半規管のひとつ、「後三半規管」に耳石がある場合の治療法です。

——浮遊耳石置換療法は自分ではできないのですか。

遠山医師:できません。必ず受診して医師に行ってもらってください。ただし、どの耳鼻咽喉科でも実施しているわけではありません。医療機関を探す際には、第1回でも紹介した「日本めまい平衡医学会」認定の「めまい相談医」の一覧を参考にしてください。

聞き手によるまとめ

耳石がはがれて三半規管に入り込むことで起こる良性発作性頭位めまい症の場合は、医療機関を受診して浮遊耳石置換療法を受けると、高い確率で改善が見込まれているということです。ぐるぐるめまいに限っての治療法ですが、つらい場合は試みたい方法です。次回・第6回は、メニエール病について尋ねます。

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(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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