ぐるぐる・ふわふわ…めまいを治したい/第4回

めまいにはどんな薬を処方される? 市販薬はある?【専門医に聞く】

めまいにはどんな薬を処方される? 市販薬はある?【専門医に聞く】

「乗り物酔いをしている感覚がずっと続き、吐き気がしてとてもつらい」「どうしてこうもぐるぐる回るのか」と読者の声が多く届いています。そこで、「ぐるぐる・ふわふわ…めまいを治したい」と題し、耳鼻咽喉科・気管食道科専門医で『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)の著書がある遠山祐司医師に連載で詳しいお話しを聞いています。

第1回は、めまいの中でももっとも多い「ぐるぐると回転するように感じるめまい」、第2回は「ふわふわ、ゆらゆらの非回転性のめまい」や「危険なめまい」、第3回は病院での問診や検査法について具体的に紹介しました。今回は、病院での治療法について尋ねます。

遠山祐司先生

遠山祐司医師

めまいのときに病院で処方される薬

——第1回・第2回のお話しから、めまいには、ぐるぐる回るように感じる回転性と、ふわふわ・くらっとする非回転性があること、また脳や体の病気ではない場合、前者の多くは「良性発作性頭位(とうい)めまい症」という耳が原因で、後者は疲労、ストレス、睡眠障害、自律神経のバランスの乱れなどが原因とのことでした。

患者さんの数が多いのは良性発作性頭位めまい症であり、これは耳石がはがれて三半規管に紛れ込むことの刺激で起こるとのことでした。耳鼻咽喉科では、どのような治療をするのでしょうか。

遠山医師:良性発作性頭位めまい症の場合、これまでにお話しした問診や検査で症状の程度を見つめて、必要に応じてセルフケア法、薬の処方、そして、三半規管を移動する浮遊耳石を元へ戻すように頭を動かす「浮遊耳石置換療法(頭位療法)」(次回で紹介)という治療を行うことがあります。

——まず、薬はどのようなものを処方するのでしょうか。

遠山医師:次のような薬から選びます。

・「循環改善薬」…めまいの症状を和らげるため、脳や耳の血流を改善する
・「抗めまい薬」…神経の興奮を抑えてめまいや吐き気を緩和する
・「制吐薬(吐き気止め)」…めまいに伴う吐き気やおう吐を抑える
・「抗不安薬(精神安定剤)」…めまいに関する不安を和らげる

ほかに、良性発作性頭位めまい症ではなく、後の回で紹介するメニエール病や前庭神経炎の場合は、耳のリンパ圧を下げる「浸透圧利尿薬」、突発性難聴を伴う場合は、炎症を抑えたり血流を改善したり、過剰な免疫を抑制する「ステロイド剤」、末梢神経のダメージを改善する「ビタミン剤」なども選択肢です。患者さんの症状や生活習慣に応じて、3日~7日間分を処方します。

——疲労やストレスが原因の非回転性のめまいの場合はどういう薬を処方されるのでしょうか。

遠山医師:これらの薬から選ぶこともありますが、充実した睡眠、ストレスを取り除く、栄養のバランスが整った食事法などの生活習慣の指導がメインになります。

めまいを治す市販薬はある?

——それらの薬は市販はされていますか。

遠山医師:同じ種類の薬は市販はされていません。医療機関を受診して、問診や検査でめまいの原因や症状の診断をしてから、状態に応じて処方します。

ただし第2回でお話ししたように、耳が原因である良性発作性頭位めまい症の場合、市販薬の中では、乗り物酔いの薬が有用な場合もあります。乗り物酔いは、医学的には「動揺病」といい、良性発作性頭位めまい症なら、乗り物酔いの薬を試すこともひとつの方法でしょう。

また先に話した処方薬にビタミン剤を挙げましたが、市販のビタミンB群をとるのもよいでしょう。ビタミンB群は、食事でも積極的に摂取してください。豚肉、レバー、にんにく、魚介類、焼のり、納豆などに豊富です。

めまいを改善する漢方薬は?

——漢方薬でめまいに対応するものはありますか。

遠山医師:めまいの原因によっては、漢方薬も有用です。市販されている中でよく用いられるのは次のものです。

・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
体力があまりなくて(中等度以下)、めまい、ふらつきがあり、のぼせ、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏などの場合に。一般に、めまいに対応する漢方薬といえばこれ、といわれるように、いろいろなめまいに幅広く用いられる。

・沢瀉湯(たくしゃとう)
体力は普通で、回転性のぐるぐるめまいに用いられる。

・五苓散(ごれいさん)
「水(すい)」(漢方でいう体内の透明な液体)の循環が滞っているとされるめまい、頭痛、吐き気、むくみ、下痢、二日酔いのめまいや吐き気にも用いられる。

また、処方薬では、非回転性のふわふわとした浮遊性めまいには「真武湯(しんぶとう)」がよく用いられます。元気がない、虚弱体質で、疲労、冷え、軟便、下痢などを伴う場合に向いています。

更年期障害や月経前症候群の症状のめまいの場合も、漢方薬が向く場合があります。

聞き手によるまとめ

「めまいは頻繁に起こるものの、短時間でおさまるので受診をためらう」「治るのか疑問」といった声が多いのですが、実は有用な薬が複数あり、医師が症状によって適切に処方するということです。市販の薬の情報も知っておき、めまいにだらだらと悩まされることから解放されたいものです。次回・第5回は、病院での治療法について尋ねます。

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(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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