専門医が教える「夫源病」との向き合いかた【第2回】

お金のトラブルが「夫源病」の引き金に…専門医が教えるケア法

お金のトラブルが「夫源病」の引き金に…専門医が教えるケア法

「夫源(ふげん)病」という言葉を知っていますか。読んで字のごとく、女性が、夫やパートナーの発言や行動、存在によるストレスで多種の体調不良に見舞われることを言います。

その具体的な症状を含めた実態や、事例と治療については前回の「『夫源病』とは? そのイライラや不調は夫・パートナーが原因かも」で紹介しました。今回は、夫源病のきっかけになりやすいという「お金のこと」について、ひき続き、夫源病の名づけ親で著書『定年不調』(集英社)が話題の内科専門医・循環器専門医の石蔵文信医師に尋ねました。

「誰の金で食べているのか」と威圧される

夫源病の症状は、ホルモンや自律神経のバランスが乱れて起こる、めまい、頭痛、不眠、イライラ、憂うつ感などで、前回は、夫による生活への細かい口出し、いやみ、威圧的な態度からひどい耳鳴りや吐き気に見舞われた女性の体験談をお伝えしました。石蔵医師は「次に複数の患者さんに見られるケースでは、お金のトラブルがあります」と言い、次の女性の例を挙げます。

<Aさん・31歳 主婦>

出産を機に退職して育児と家事に専念して3年半、夫はなにかにつけて、「誰の金で食べているのか」「俺の稼ぎがなければこんな暮らしができるか」などと言うように。Aさんは怒りや情けない思いでいっぱいで、「私が家事を全部しているから威張れるのだ」と言い返したいところを、夫と同じようになりたくないと思ってとどまっている。夫との食事時間は、胃がつかまれるように痛み、食欲はなく、体重も目に見えて減ってきた。

石蔵医師から

夫のこうした発言は妻がもっとも怒りを感じるものです。夫はこれを言えば「妻も子も文句は言えない」と思い込み、プライドを誇りたいのでしょう。言い返すと激しいケンカになることは目に見えています。

Aさんには、食生活の指導をし、胃痛ケアと精神安定剤・抗うつ剤の処方をしたうえで、カウンセリングで「子どもをあずけて仕事へ復帰し、家事は各自分担を宣言すること。忙しくても経済的に自立してメンタルの充実をはかること」を勧めました。ただし、こういう発言をする夫は、妻が仕事を持つことには反対する場合が多いです。その言動は矛盾しているのですが、自分の存在意義が脅かされることを恐れるのです。

しかしAさんは私の勧めをもっともだとして、「医師の治療のひとつだから」と夫に宣言し、仕事に復帰しました。また、「家事は分担を」と告げ、週末は子どもと実家に帰って休息を取る生活を続けました。夫は当初はかなり怒って威圧的な態度に出たものの、Aさんが知らぬ顔をして食事も洗濯も掃除も夫の分は放置を徹底すると、夫は自分でするほかなくなり、自分でするようになったと言います。

ある保険会社の調査では、夫婦間でお金のトラブルがある人は約56%、そのうちの30%の妻は離婚を考えたという結果があります。Aさんは「これ以上夫の暴言が増える場合は、自分の健康、子どもの成長に差し支えると判断し、離婚を覚悟して行動しました」と打ち明けます。現在は「時間的には忙しい日々ですが、夜ぐっすり寝られるようになって、メンタルが健全でいられます」と話し、半年ほどで薬が不要になりました。意を決して実行したことが功を奏した例です。

生活費を出さない、浪費家、ギャンブラー、仕事をしない

石蔵医師は、お金のトラブルについて、Aさんの夫のように「俺が食わせてやっているんだと威嚇する」ケースのほか、次のタイプを挙げます。

・夫が生活費を渡さない。もしくは、食費に満たないほどしか渡さない。
・夫が浪費家で、相談もなく高額の貴金属や車を衝動買いする。
・夫がギャンブル好きで負けては小遣いをせびる。
・夫が仕事をせず、妻の給料や実家に頼りっぱなし。

これらは周囲からよく耳にする話しでもありますが、こういった場合、どうセルフケアをするとよいのでしょうか。

「どのケースも家庭崩壊が見えていて、大問題です。悩む女性の患者さんにどのような薬を処方しても、体調は一向に改善しません。常に生活への不安と緊張を強いられているので、自律神経が乱れて激しい不調が続くでしょう。重い病気につながりかねません。

どのケースにもアドバイスをしているのは、『妻が夫と収入を合算して管理し、生活費や貯蓄分を差し引いたうえで、夫婦ともにおこづかいを受け取る方式にする。妻は収支を報告する。そうルールを決めて実践すること』です。私の治療では夫婦同伴でカウンセリングを行いますが(第1回参照)、2人を前にそれを伝えます。こうすると、『夫が生活費を渡さない』事態は予防できるでしょう。また夫の浪費の原因に「ストレス」が考えられる場合は夫の治療も必要となります。

しかし、夫の態度によってこれが不可能であれば、健康や命に関わる問題として、夫の勤務先の上司や身内ら第三者に訴える、本人と離婚を前提に話すという強硬手段をとってでも、この状況を改善する必要があります。体調は、それが実現すると回復に向かいます」

「細かいケチ」は「金銭管理ができる」面も

ここで石蔵医師は、お金のトラブルのもうひとつのケースについて、次のアドバイスを加えます。

「一方、『夫婦間でも1円単位で立替金を精算する。ケチ』と夫の性格を愚痴る妻は多いのですが、生活費を出さない、またお金にルーズなケースよりはよほどいいでしょう。このタイプは『浪費をしない』、『倹約家』、『金銭管理ができる』ことが多いという良い面があります。『妻に収入があれば何も言わない』ことも多いでしょう。細かさや倹約の程度にもよりますが、一度、良い面のほうをクローズアップする見方に変えてみてください」

また、おこづかいの使いかたについて、
「過度にギャンブルに使う以外は、お互いに口を出さないようにすることをルール化すると、無用なケンカが防げます。おこづかいは各自が自分の判断で自由に使うお金であり、相手から見ると無駄遣いであっても、本人にとっては自己実現や生活の充実のための出資であることが多いものです」と石蔵医師。

お金によるもめごとは極力避けたいものですが、夫やパートナーとの間では、多かれ少なかれ経験がある人は多いのではないでしょうか。石蔵医師が「大問題」と指摘するように、お金は共同生活の基盤であるからこそ、もっともトラブル化しやすいのかもしれません。体調悪化の原因としてこれらが思いあたれば、深刻な事態になる前にできるだけ早く解決に向けて行動したいものです。

次回は、夫源病の引き金になりやすい「生活習慣」についてお尋ねします。

(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル)

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