五月病は気分的なものではなく病気…心療内科医が教える【前編】

五月病は気分的なものではなく病気…心療内科医が教える【前編】

毎年5月の連休が終わったころにはなにやら体がだるく、頭がぼおっとしてやる気が起こらないことがあります。憂うつ感が強くなって、会社に行きたくないと思うことも。「五月病」という言葉をよく耳にしますが、いったいどういう病気なのでしょうか。

心身医学専門医で心療内科医の野崎京子医師に尋ねると、「五月病とは、ゴールデンウイーク明けになりやすいことから呼ばれる通称であり、重くなると、医学的には『適応障害』と診断することがあります。休みが長いと発症する確率は高まるのではと予想できます」ということです。原因やその予防法など、詳しいお話を聞いてみました。

「憂うつな気分」と「うつ病」の違い【心療内科医が教える】

多趣味だがどれも楽しくなくなった

野崎医師ははじめに、「五月病は、かつては大学の新入生や新入社員に多く見られる症状でしたが、いまは年代を問わずに一般の社会人に多く見られ、六月に悪化することから『六月病』と言う言葉も生まれています」と説明し、次の五月病・六月病のケースを紹介します。

「32歳でIT業界の制作業務の女性の場合、4月頭に人事異動があって、新規の業務は苦手な分野だと思いながらもかなりがんばっていたところ、ゴールデンウイークに入って寝込むほど疲れが出たと言います。休みが明ける前から気分の落ち込みがあって食欲がなくなり、出社しているものの、6月に入ると夜によく眠れない、すぐに目が覚めるなどが続いてつらいと言われます。

また、市役所に勤務する28歳の女性の場合、4月からシステムの変更で仕事の量が増大し、ゴールデンウイークが明けてから2週間ほど後に疲労と意欲の低下で出社できなくなりました。職場の産業医に相談したところ、1カ月の休職と、同時に受診を指導されたそうです。話を聞くと、仕事もさることながら、もともと写真や料理など多趣味だったけれど、そのどれもが『5月の中ごろから楽しくなくなった』とのことです。

このように、ゴールデンウイーク明けに、仕事や日常生活に差し支える気分の低下が起こる症状を五月病と呼んでいます。食事や睡眠が思うようにいかずにとてもつらい、人と話したくない、外出ができないなどが2週間以上続く場合は五月病の可能性があるので、早めに心療内科や精神科を受診してください」

五月病は病気であり、性格や気分によるものではない

誰しも長い休み明けには、活動することが面倒になったり気分がブルーになったりすることもあると思いますが、その場合と五月病とは違うのでしょうか。野崎医師はこう話します。

「日本の5月は気象の関係などで、眠気やけん怠感を覚えることは誰しもよくあるでしょう。連休明けから6月にかけて気分が落ち込んでも、睡眠が足りていておいしいものを食べようと思えるなら、2~5日で回復するでしょう。その場合は心配はいりません。

しかしそういった状態と、仕事や生活に影響を及ぼす病気とは違うものです。問題は、気晴らしに出かけようという意欲も起こらず、先ほど述べたような心身の不調が続く場合です。

五月病を自分の性格が原因だと考える人は多いのですが、決して感情や気持ちの持ちようの問題ではありません。脳から分泌される神経伝達物質の作用による病気です。

それを自覚して、適切に治療することが改善への早道です。医療では、患者さんの症状によって、適応障害、うつ病の前段階の抑うつ状態、うつ病、パニック障害などと診断することがあります」

五月病の原因はストレス

では、その五月病の原因はどういったことが考えられるのでしょうか。野崎医師はこう話します。

「先ほどの患者さんの例のように、ストレスが強いことにあります。引っ越しや就職、転職、職場での人事異動や人間関係、家族、親しい人とのトラブル、出世をしていっそうと責任ある立場になった、子どもが独立した、離婚したなど、環境や生活に変化があって、ゴールデンウイークまで気が張っていてがんばったけれど、長い休みをきっかけに、疲れが噴出します。

『現実に直面して、自分が思い描いていた理想の状態ではなかった』というギャップへの精神疲労もあります」

体調の悪さはどのように現れるのでしょうか。

「休みの間に、いまの環境についていけないといった思いが増幅して精神的にも身体的にも疲労がつのり、頭痛、めまい、耳鳴り、胃重感、胃痛、便秘や下痢、肩こり、腰痛など、不定愁訴と呼ばれる自律神経失調症の症状が現れることもあります。五月病の予防には、とくに4月後半から連休中の過ごし方がポイントになります」と野崎医師。

五月病は病気であり、性格や気持ちの持ちようによるものではないこと、その原因はストレスであること、心身に複雑な症状が多発するということです。それはとても苦しい状況でしょう。そこで、五月病を自分で予防するにはどうすればいいのかについて、次の記事、「五月病予防に4月は気持ちの余裕、連休中に体力アップを…心療内科医が教える【後編】」でご紹介しましょう。

(取材・文 品川緑 / ユンブル)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

五月病は気分的なものではなく病気…心療内科医が教える【前編】

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング