おとなのためのインフルエンザ講座【内科医が教える】

毎年接種すべき? おとなのためのインフルエンザ講座【内科医が教える】

毎年接種すべき? おとなのためのインフルエンザ講座【内科医が教える】

寒さが厳しくなるにつれて、インフルエンザの猛威のニュースに接する機会が増えます。そのたびに、感染したくないと強く思うのですが、内科医で大阪府内科医会副会長、泉岡医院(大阪市都島区)の泉岡利於(いずおか・としお)院長によると、「おとなの患者さんでも、情報を勘違いしている人が多くいらっしゃいます。予防にもっとも有効な方法はワクチンを接種することですが、感染した場合に備えて正しい知識を持っておきましょう」とのことです。

さまざまな疑問がわくインフルエンザの謎について、詳しく聞いてみました。

ワクチン接種でインフルエンザにかからない?

 
(1)昨年、インフルエンザワクチンを接種しました。今年も受けた方がいいのでしょうか?

泉岡医師 :はい、接種してください。理由は、「ワクチンの効能が持続する期間は5カ月間程度」なこと、「ワクチンは、その年の流行が予測されるタイプのウイルスをもとに製造される」ためです。また、厚生労働省は、「十分な免疫を保つためにも毎年受けたほうがいい」としています。

インフルエンザワクチンの役割は、発症を予防するだけではなく、重症化や合併症を防ぐことにあります。おとなが感染すると厳しい症状になるケースが多く、特に肺や心臓、糖尿病などの疾患がある人には接種を勧めています。

(2)感染するインフルエンザのタイプが違えば、予防接種は効かないのでは?

泉岡医師 :確かに、流行予想の当たりはずれや、受けたワクチンとは別のタイプのインフルエンザにかかるケースもあります。違うタイプのインフルエンザにかかれば予防の効果は低くなりますが、健康な成人では、ある一定の割合で発症を防ぐ効果があるとされています。

(3)インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザにかかりませんか?

泉岡医師 :かかりません。現在、日本で使用されているインフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」です。これは、ウイルスの病原性を失くして免疫をつくるための成分を取り出す、安全性が高いとされるワクチンです。つまり、ウイルスとしては働かないため、ワクチンの接種によってインフルエンザを発症することはありません。

また、予防接種の効果が現れるまでには約2週間かかるとされるので、接種直後にインフルエンザにかかると、「ワクチンが原因では?」と誤解される場合があります。小中学生がよくそのように話していますが、間違いです。

さらに、予防接種を受けた人の中には、副反応として接種直後に、注射した部分に赤みや腫れ、かゆみ、痛みなどが現れる以外に、発熱や頭痛、寒気、体のだるさなどの全身症状が見られるケースもあります。「ワクチンでインフルエンザにかかったかも」と思われる患者さんもいらっしゃいますが、通常22~33日でこれらの症状はなくなります。特に処置をする必要はありませんが、心配な場合は医師に相談しましょう。

(4)「インフルエンザかも?」と受診しても、再検査が必要と言われました。どうしてですか?

泉岡医師 :インフルエンザかどうかは、医療機関でウイルスの抗原を検出する迅速診断キットを使って、綿棒で鼻の粘膜をこすり、液体に浸し、約15分で調べます。

ただし、発症して12時間以内の場合、迅速診断検査では陰性となることがあります。鼻水から検出されるウイルスの量がまだ少ないためです。その後、半日~1日経ってウイルスの量が増殖して陽性化することはよくあります。1回の検査では断定できない場合は、翌日に再検査をすることがあります。

(5)インフルエンザワクチンを接種する費用はいくらぐらいですか?

泉岡医師 :健康保険の適用がなく自由診療になるため、全額自己負担です。全国の平均は、約3,500円とされています。遠慮なくかかりつけ医に問い合わせをしましょう。

(6)インフルエンザワクチンはいつ受けるのが有用ですか?

泉岡医師 :国内での流行のピークは例年12月~3月で、おおよそ11月~4月ごろまで流行します。また、ワクチンの効果は接種後すぐに発揮されると思っている人は多いのですが、約2週間かかります。よって、インフルエンザが流行しはじめる11月か12月中ごろまでの接種が望ましいでしょう。

(7)2017年は11月ごろ、「インフルエンザワクチンが不足して医療機関にいき渡らない」と報道されていました。その後、どういう動きになっていますか?

泉岡医師 :11月中に接種を希望しても、できなかった方がいらっしゃいました。ですが、インフルエンザの流行のピークは1月~3月なので、1・2月の接種でも予防には有用です。そのころでも遅くはありませんから、早めの接種をお勧めします。

(8)ワクチン接種の前日や夜に、飲酒はOKですか?

泉岡医師 :前日も当日の夜も、できるだけ控えてください。飲酒をすればどうなるということではありませんが、平時でも深酒や大量に飲むなどすると体調を崩しがちです。ワクチンを接種した日はそういったことがないようにして安静に過ごしましょう。

(9)インフルエンザにかかったら、何日ぐらい会社を休むべきですか?

泉岡医師 :発症から3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出します。解熱とともに減少しますが、数日間は排出します。その間に出勤するとウイルスをばらまくことになります。企業では、学校保健安全法の「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまでを出席停止期間とする」を参考にしていることが多いでしょう。特に、発熱している、鼻水やくしゃみが止まらないといった期間は、仕事が忙しくても自宅で休養につとめましょう。

(10)抗インフルエンザ薬は、発症してからなるべく早く服用しなければならないと聞きます。どうしてですか? 前もって処方してもらうことはできますか?

泉岡医師 :抗インフルエンザ薬は、体内で急激に増殖するインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬です。症状が現れてからはできるだけ早く服用するほうが治療効果は高く、2日(48時間)以内の服用が重要になります。発症から2日以上経って服用しはじめても、十分な効果は期待できません。

また、家族や身近な人がインフルエンザにかかった場合は、「タミフル(ロシュ/中外製薬)」と「リレンザ(グラクソ・スミスクライン)」という2種類に限って、予防のために治療薬を服用する予防投与が認められています。治療目的ではないので、診察料、調剤料、薬代などすべての費用が自費で、病院や薬局によって価格は異なり、1万円前後です。

これは予防接種とは違い、服用期間中のみ予防効果があります。まずはかかりつけ医に相談してください。

(11)おとなのインフルエンザの予防にもっとも重要なことは何ですか?

泉岡医師 :インフルエンザウイルスは飛沫感染するため、マスクの着用でしょう。自分がうつることだけではなく、自分が誰かにうつすことを避けるためのエチケットであり、マナーと言えます。マスクは毎日1回、取り換えてください。

次に、接触感染を避けるための念入りな手洗い、うがいです。これらは当然と思われるでしょうが、実際に毎日実践している人は少ないのではないでしょうか。風邪の予防にもなるので、ぜひ日常の習慣の1つとして実行しましょう。

いまだに知らないことが多くありました。正しい知識こそが予防の第一歩と言えそうです。また、バッグに替えのマスクを常備し、手洗い、うがいぐらいは実践したいものです。

(取材・文 岩田なつき/ユンブル)

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