柔らかな笑顔と、抜群の透明感で、映画やドラマに引っ張りだこの俳優・坂口健太郎さん。さまざまな役に挑戦し、出演作が途切れない多忙な日々は、きっと相当なプレッシャーや疲労の連続のはず。でも、坂口さんの言葉には、いつもポジティブなワードがあふれています。「すごく自己愛が強いんです」と語る坂口さん。どうすれば自分を愛し、人に優しくできるのか。
主演を務めた映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』(伊藤ちひろ監督)が公開されたばかりの坂口さんに、自己肯定感をキープする秘訣(ひけつ)をうかがいました。前後編。
他者にも愛を向けられるのは自分を愛しているから
——インタビュー前編でもそうですし、メディアでのこれまでの発言を見ても、坂口さんは、監督や人からのポジティブな評価を素直に受けとめて、それをうれしかったと進んでお話しされる姿勢がとても印象的です。自分でパフォーマンスのハードルを上げることにもなりますし、実は結構難しいことだと思うんです。周りから褒められても自虐してしまったり、謙遜し過ぎてしまったりという人も少なくない気がします。適切な自己肯定感をキープする秘訣(ひけつ)や、心がけていることがあれば教えてください。
坂口健太郎さん(以下、坂口):僕、自己愛がすごく強いんです。すごく自分のことが大好きで、自分を愛して初めて自分じゃない他者にも愛を向けられると考えています。生活していく中では、しんどいこともめちゃくちゃたくさんあると思うので、自分を嫌いになっちゃうと一気に全部が崩れ去るような気がしていて……。他の人にも優しくできないし、他の人のことも愛せなくなると思います。
一度ある人から「愛情の自家発電能力がすごく高い」と言われたことがあって。「 “水槽”が大きいから、人に渡せるってことですかね」と言われて、すごくうれしい言葉だなと思いました。
母親だったり、友達だったり、仕事関係の人だったり、基本的にすごく人が好きだし、人から愛情を感じたときに、僕も返そうと思うんです。たとえば、その人が大きなミスをしてしまっても、多分それが原因で僕がその人を嫌いになることはない。人にはそれぞれ、大変なときもあるし、ミスしてしまうこともあるけど、そういうときに、その人から僕という存在がいると思ってもらえる人でいたい。そういう気持ちがすごく強くあるからこそ、ポジティブマインドでいたし、うれしいことは「うれしい」って言いたいんです。
さっき僕を「素直」だとおっしゃってくれましたが、逆にしんどいときも素直に「しんどい」って言っちゃいます。
しんどいときは人を頼る
——「しんどい」「助けて」と言えるタイプですか?
坂口:言えます。なんだか「頼る」ことを良いことではないと考える空気がちょっとありますよね。周りに依存しすぎてしまうのは考えものかもしれないですが、ちゃんと人を頼って必要とすることはすごくいいことで、大事なことだと思っています。しんどいときは、マネージャーさんや会社の人や共演者やスタッフさんに頼るべきだと思うし、頼られる人でもいようと思います。頼られるということは、必要とされているということだと思うから。そういう気持ちが、自分の根本にはすごくあるのかな。
——つい反射的に自虐的なことを言ってしまいがちな人も、坂口さんの前向きな姿勢に力をもらえると思います。
坂口:ただ単純に、僕が完全な楽観主義の人間だから(笑)。でも「苦しいんだよね」って吐き出すことも絶対的に大事だと思います。
■映画情報
『サイド バイ サイド 隣にいる人』
4月14日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023『サイド バイ サイド』製作委員会
(聞き手:新田理恵、写真:宇高尚弘)