「自分が不得意なことは得意な人にお願いする」多部未華子さんの仕事への向き合い方

「自分が不得意なことは得意な人にお願いする」多部未華子さんの仕事への向き合い方

ドラマ『これは経費で落ちません!』の奥手な経理女子や『私の家政夫ナギサさん』の仕事は完璧だけれど家事は苦手なアラサー女性など、等身大の女性を演じて同世代のみならず幅広い世代から支持を得ている女優の多部未華子(たべ・みかこ)さん(31)。

10月23日公開の映画『空に住む』(青山真治監督)では、両親の急死という出来事を受け止めきれないまま、叔父夫婦が所有するタワーマンションの高層階に住むことになった直実を演じています。

長年の相棒・黒猫のハルと暮らし、出版社で気心の知れた仲間と働きながらも喪失感を抱え日々葛藤する彼女の前に現れたのは同じマンションに住むスター俳優・時戸森則(岩田剛典さん)だった——。

こちらの問いかけに、時には「うーん……」と考えながら、時間をかけて誠実に答えてくれた多部さん。映画について、仕事の向き合い方について伺いました。

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理解できない部分もあるのが人間関係

——脚本を読んだときの感想をお聞かせください。

多部未華子さん(以下、多部):脚本を読んだときは……すごく難しいなと思いました。ストーリーというよりも、会話の中の哲学っぽいセリフ部分がすぐに表現できるとは思えなかったので、感覚で演じていたような気がします。青山監督は「直実はこういう女性でね」と役柄について事細かに伝えてくる方ではなく、いい距離感を保ちながら接してくださったので、とてもやりやすかったです。

——多部さんは直実はどんな女性だと思いますか?

多部:台本を読んでいただけのときは、直実につかみどころがなくてあまり理解ができなかったのですが、出来上がった作品を見たら人間らしいところもあって、理解できないこともないなと思いました。それは直実に限らずほかの登場人物についてもそうですね。

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——実際に演じてみていかがでしたか?

多部:「悲しい」とか「うれしい」のような単純な言葉じゃないセリフの羅列は楽しかったですね。曖昧な表現であとから考えさせられたり、哲学的な表現で「きっとこういうことを言いたいんだろうな」というようなふわっとした表現が多かったのですが、演じていてそれが楽しかったです。

人間関係も「ここは理解ができても、ここは理解できないな」ということは友達でもありますよね。例えば、映画では直実の部屋に(美村里江さん演じる)叔母の明日子さんが勝手に入ってきます。直実の目線で見ると考えられないんだけれど、一歩引いた目線で見ると「こういう人いるよな」って思えたり。明日子さんには明日子さんなりの苦しみや、答えがない悩みがあるんだろうなって理解できる部分がありました。

一方で、理解できないからと言って友人関係をやめるということはないですし、(人間関係というのは)そういうものなんだと思います。

——直実は両親を亡くしたけれど泣けないという女性です。「なぜ泣けないのか?」については映画を見た人がそれぞれいろいろ感じたり、思ったりするところがあるのかなと思うのですが、多部さん自身は直実が泣けないことについてどのように理解していましたか?

多部:直実の“泣けない問題”に関しては「泣く人もいれば泣けない人もいるのかな」という感じでした。「なんで泣けないの?!」「両親が亡くなったのにどうして?」とは思わなかったです。

それを言ったら、この映画には他にも「なんで?」がたくさんあって、例えば(岩田剛典さん演じる)時戸さんと直実の関係もそうですよね。非現実的ですが、直実はなぜ時戸さんを受け入れようとしたんだろう? と。「なんで?」がたくさんありました。でも「理解できない」と思っていたわけではなく、「こういう感覚になるときもあるんだろうな」と思いながら演じていました。

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「特別だと思わない」仕事への向き合い方

——多部さんが直近で出演なさったドラマ『私の家政夫ナギサさん』も大好評のうちに最終回を迎えました。ドラマでは等身大の働く女性を演じることも多いと思いますが、多部さん自身の仕事へのスタンスというか向き合い方について聞きたいです。

多部:向き合い方……あまり深く考えないようにしています(笑)。

——というのは?

多部:なんでだろう?……誤解を生む表現かもしれないですが、何事も“特別”だと思わないようにしています。「この仕事は特別!」と思うと肩肘を張ってしまいそうなので「私はこの作品に賭ける!」などとはあまり思わないようにしています。もちろん一つ一つの仕事は大事ですし、その仕事に携わっているときのベストを尽くすのですが、「これがあるから人生が変わる!」とは思わないようにしています。それが「深く考えない」につながっている気がします。

——それは昔からですか?

多部:そうですね、昔から変わらないです。

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——多部さんの過去のインタビューを拝見すると「30歳を迎えて」のような記事をいくつか見かけました。質問するほうは「30歳は区切りだから」「同世代の女性に向けて」という意図で質問すると思うのですが、多部さん自身は年齢は気になりますか?

多部:30歳になったときはさすがにいろいろ思いましたね(笑)。20代の頃は「30代になると楽だよ」とよく言われていて、確かになってみたら本当にその通りだなと思いました。周りの友達も、結婚している子なら「30歳までに出産したい」、独身の子なら「30歳までに結婚したい」と言っていましたが私自身はそこまで思っていなかったですね。プライベートでしたいことは特になくて、むしろ仕事で「こうしたいな」とか「これに挑戦したい」と思っていました。

——どんなことに挑戦したいと思っていたのですか?

多部:仕事ではある役者さんと一緒に仕事をしてみたいと思っていて運良く実現しました。他に挑戦したいこととして、ミュージカルをやりたいと思っていたのですが、ちょうどお話をいただいて「これは20代最後の挑戦になるかもしれない」と思いお引き受けしました。

「やりたいことをやる」は変わらない

——30代でやりたいことや挑戦したいことはありますか?

多部:それが……「20代最後」と意気込み過ぎて目標のないまま30代を迎えてしまったんです(笑)。特にこれという目標が今はないのですが、「やりたいことをやる」というのは昔から変わらないので、継続してやりたいと思えたことをやっていきたいですね。

——やりたいことをやるのが一番ですよね。

多部:選択は自分がするものだと思うので、自分が後悔しない選択を考えたら、やっぱりやりたいことをやるのが大事だと思います。

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自分が不得意なことは得意な人にお願いする

——『私の家政夫ナギサさん』では周りの期待に応えようとするあまり、頑張りすぎてしまうメイを演じられていました。メイのように頑張りすぎてしまう人って少なくないと思うのですが、多部さんからアドバイスをいただきたいです。

多部:そうですね……でも頑張りすぎちゃうのはいいことだと思います。私は頑張らないですから。他力本願で生きているので(笑)。

——どういう意味ですか?

多部:自分がやりたいことをやるけれど、それをやっていく中で他の人が手助けしてくださる部分は、素直に「お願いします」と頼りますね。自分が得意なことは自分でやればいいけれど、逆に自分が不得意なことを得意とする人がいれば、その人の力を借りればいいのかなと思います。だから頑張りすぎる人って偉いなと思うし、悪いことではないと思います。

——最後にお聞きしたいのですが、多部さんの「仕事ルール」ってありますか? 例えば「嫌なことがあった日はさっさと寝る」とか。

多部:仕事ルール……そうですね、ドラマの撮影となると長丁場なので、セットがあるときはそこを自分の部屋のようにしてくつろぎます。「私は仕事場に来ています!」という感覚にならないようにするというか……。かと言って具体的に何をしているかと言ったら、自分のマグカップを持っていくくらいなんですけれど(笑)。好きな飲み物を持っていって、いつでも飲めるようにしています。

映画『空に住む』メインビジュアル

映画『空に住む』メインビジュアル

■映画情報
『空に住む』2020年10月23日(金)全国ロードショー
【クレジット】 (C)2020 HIGH BROW CINEMA 
【配給】アスミック・エース

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

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