冬はもちろんのこと、一年中冷えに悩まされる女性は多いと聞きます。そこで、日ごろから行っている「冷え対策法」は医学的に適切なのかについて、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に聞いてみました。
手足が温かくても、内臓が冷えていることがある
はじめに、冷え性の原因について正木医師は、こう説明します。
「体の中で熱を作り出すのは筋肉です。一般に、男性に比べて女性の方が冷えを訴える人が多いのは、女性のほうが筋肉が少ないからです。それに、加齢や運動不足で筋肉量が低下すると、冷え性になりやすくなります。
また、体温や血流、血圧は、自律神経の働きで一定に保つように調整されていますが、血液の循環が滞ると、心臓から遠い手や足へは血液が十分に行き届かず、血圧にも関係して冷えを感じやすくなります」
「この原因を踏まえて、適切な冷え対策の方法を考えましょう」と言う正木医師は、具体的に次のことを挙げます。
正木医師:主に10~30代のやせ型の女性には、手足の先が冷える「末端型冷え性」が多いのですが、手足は温かいけれど「下半身型冷え性」や「内臓型冷え性」の人もいます。
「下半身型冷え性」は、上半身はポカポカと温かく、太ももから下側は冷たいのが特徴です。加齢や運動不足でお尻の筋肉が硬くなり、下半身全体の血流が悪化して冷えのぼせのような状態になります。
「内臓型冷え性」は、手と足は温かいのに、主に胃腸が冷えている状態です。筋肉の量や運動の不足、低血圧、ストレス、更年期障害などのホルモンのバランスの乱れが原因だと考えられ、胃腸のトラブル、肌荒れ、不眠、肩こりなど、さまざまな症状を引き起こします。
正木医師:寝ているときは、体温を調節するために足の裏からたくさんの汗が出ています。靴下を履いていると、汗が発散されにくく湿ったままになるので、冷えやすくなります。また、靴下は足首を締めつけて血流が滞るので、冷えを進めます。
足先の冷えが気になるときは、レッグウォーマーを履きましょう。足の裏からの発汗を妨げずに、足首やふくらはぎの筋肉を保温して血流を促すため、足先まで暖かくなります。
正木医師:寒い場所での薄着が体を冷やすのは当然のことですが、タイトなスカートや下着、足を圧迫するロングブーツやハイヒールなど、体を締めつける衣服には注意が必要です。血流が滞りやすくなって冷えの原因のひとつになります。特に、おなか、腰、股関節、ふくらはぎの周りには余裕がある下着や衣服を選びましょう。
正木医師:シャワーや熱い湯は、体の表面しか温まらないので、すぐに湯冷めします。38~40度くらいのぬるめのお湯に、じんわりと汗をかく程度に浸かり、体の芯から温めましょう。リラックスモードを担う副交感神経が優位になり、血管が拡張して血液の流れが促進されます。
正木医師:低温サウナの場合は、血流が促されて体の芯から温まりやすくなります。ただし、ダラダラと汗をかくような高温のサウナは、交感神経が優位になって血管が収縮し、血液の流れが滞るので避けてください。また、必ず水分補給をしましょう。
正木医師:体に熱がこもって、汗をかきやすくなります。すると、汗が蒸発するときに体温が下がるため、体が冷えるもとになります。
布団やベッドの冷たさが気になる場合は、寝る1時間ほど前から、電気毛布や湯たんぽを入れて温めておき、寝る直前には電源を切る、また、取り出しましょう。
湯たんぽは足元に置きがちですが、腰やお尻の体幹部のあたりに入れておくといいでしょう。すると、腰部で温まった血液が下半身をめぐって全身が温まりやすくなります。
正木医師:ストレスや不規則な生活では、体温を調節する自律神経が機能しにくくなります。特にストレスフルなときは、興奮時や緊張時に働く交感神経が優位になります。すると、血管が収縮して血流が悪くなり、冷えやすくなります。
日ごろから、ストレッチやウォーキングなどで体を動かす、好きな音楽を聴く、趣味の時間を大切にするなど、ストレスを改善する方法を見つけて実践するようにしましょう。
手足が冷たくないから大丈夫だと油断しない、靴下ではなくレッグウォーマーを履いて寝る、シャワーではなくぬるめのお風呂に浸かる、電気カーペットやコタツでは寝ない……逆効果だったこれまでの冷え対策法、見直して正しく実践する必要がありそうです。
(岩田なつき/ユンブル)