「私はどう生きる?」バービーが選んだ道と描かれた母と娘のストーリー【グレタ・ガーウィグ監督】

「私はどう生きる?」バービーが選んだ道と描かれた母と娘のストーリー【グレタ・ガーウィグ監督】

60年以上にわたって世界中で愛されてきたバービー人形を初めて映画化した映画『バービー』が8月11日に公開されます。監督と脚本、制作総指揮を務めたのは、『フランシス・ハ』(2012年日本公開、以下同)では役者として高い評価を受け、『レディ・バード』(2018年)や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2020年)を手がけたグレタ・ガーウィグ監督。

映画化にあたり「バービーの伝説をたたえながら、予想外の新しい切り口で彼女の物語を掘り下げ、新鮮で生き生きとした現代に合ったバービーを描けると思った」と明かしたガーウィグ監督にお話を伺いました。
※2ページにネタバレを含みます。

<ストーリー>
すべてが完璧で夢のような毎日が続くバービーランドに暮らすバービー(マーゴット・ロビーさん)。自身の体に起こった異変の原因を探るために人間の世界へ行き、“現実の世界”の矛盾や困難に直面しながらも自分の道を見つけていく……。

変化し、進化し続けてきたバービーの物語

——映画にはさまざまな才能や異なる身体能力を持つバービーたちが登場します。ケイト・マッキノンさん演じるのは髪を切られ、服もズタボロにされた“変てこバービー”という役どころですがキャスティングについて教えてください。

グレタ・ガーウィグ監督(以下、ガーウィグ):ケイトは私が18歳の時から知っていて、このキャラは彼女が演じたら最高だと思いました。私が遊んだバービーは近所の人からもらったバービーで、髪を切られたり服を剥がされたりしていたのですが、個人的にはすごく思い入れがありました。

今回、重要だったのはバービーの64年の歴史を反すうすること。バービーが象徴するものに対する意見がどんなものがあるかは、バービーのことが好きではなかった母を通して知っていました。でもバービーは進化し続けてきたので今回の映画でそれを反映することが大事だと思いました。

映画を見た人がバービーたちやケンたちに自分自身を見いだしたり、重ねたりできること。それがこの映画でやりたかったことです。

「バービーの恋人」にすぎなかったケンの生きづらさにもスポット

——今回の映画では常に「バービーの恋人」としての存在だったケン(ライアン・ゴスリングさん)にもスポットライトが当たって……というかケンが大騒動を起こします。「バービーの恋人」という立ち位置にすぎないケンの生きづらさも描かれていますが、どんなふうにストーリーを膨らませていったのでしょうか?

ガーウィグ:ケン自体がバービーの数年後に生まれた、あとで思いつかれたキャラなんですよね。もしかしたらバービーにとっては車ほどの価値がないかもしれない悲しい存在です。ケンの視点から考えたら悲劇だし、バービーランドは私たちが生きる現実の世界を反転したような世界です。そういう意味で、ケンの物語の中でも、現実の世界で女性が誇らしい瞬間を望むのと同じような瞬間が必要だと思っていました。

「世代を超えて手を取り合うこと」描かれた母と娘のストーリー

——現実社会のマテル社で働くグロリア(アメリカ・フェレーラさん)が社会での女性が置かれた状況について独白するシーンがとても印象的でした。しかもグロリアは娘のサーシャ(アリアナ・グリーンブラットさん)の前で女性たちが直面している困難や矛盾を訴えるわけですが、そのシーンはどんな思いで撮ったのでしょうか?

ガーウィグ:とても意義深いシーンの一つだと思います。私自身も下の世代や上の世代から助けを借りたり、学びを得たりしてきて、やはり世代間で会話をすることは大事なことだと思います。サーシャは利発で雄弁で洗練された議論をすることができる子ですが、母親が社会や置かれた状況への矛盾を娘の前で語ることで、娘たちはそこから解放されていく可能性があるのではないかと思います。

やっぱり私は世代を超えて手を取り合うことや母と娘の関係にとても興味があります。「お母さまとの関係性は?」と聞かれて「シンプルでわかりやすい関係です」と答えられる人は果たしてどのくらいいるでしょうか? 必ず母と娘の関係には何かあるし、私はそこにすごく興味があります。

メイキングの模様

公式アカウントの反応「心からお詫び」

——ガーウィグ監督が主演された『フランシス・ハ』や監督作『レディ・バード』、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』など、監督の作品は時代や場所は違えど常に「これは私のための物語だ」と思わせてくれるパワーがあります。『バービー』もそんなファンの期待に応える作品で、この記事を通じて作品の魅力を伝えられればと思っていましたが、アメリカの映画のX(旧ツイッター)公式アカウントが、ファンが制作した原爆投下を想起させる画像に反応をし、改めて本社が謝罪を行ってSNSの該当の投稿を削除したことについて、監督の見解を伺いたいです。

ガーウィグ:今回の問題については、心からおわびを申し上げます。本当に自分にとってはワーナー・ブラザーズが謝罪をすることが大事だと思っています。

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