「家族」と言うと世間では“家族の絆”や「家族なんだからわかり合える」といった“美談”でもてはやされがちですが、「そうは言っても面倒なときもある」「うちの家族は違うよ」と思っている人も実は多いのではないでしょうか。
コラムニストのジェーン・スーさんが自身の父親についてつづったエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)を上梓しました。
40代半ばに差し掛かったジェーン・スーさんが80歳になろうとしている父と、もう一度「父と娘」をやり直そうと向き合った日々をつづったエッセイです。
「母親とはよく話すけれど、父親とはちゃんと話してないな」「改まって何を話せばいいのかわからない」という人もいるはず。
ジェーン・スーさんに3回にわたって話を聞きました。
【第1回】「テンプレの家族像にとらわれていたのは自分だった」
【第2回】「家族なんだからわかり合える」はウソ?
「テンプレの幸せ」と「私の幸せ」で揺れ動く私たち
——第1回目のお話で「テンプレの幸せ」の話が出てきましたが「テンプレの幸せ」と「私の幸せ」の間で揺れ動いているのがウートピを読んでくれているアラサー女子なのかな、と勝手に思っているんですが……。
ジェーン・スーさん(以下、ジェーン):「テンプレの幸せ」に乗る気満々なのにテンプレにぴったりの相手が見つからないのか、「テンプレに乗れないのはヤバいでしょ」と勝手に追い詰められて、テンプレに乗りたくないのにもかかわらず焦っているのか、どちらかを見極めないとなかなか進む先は見つからないと思うんです。
——ジェーンさんはどちらですか?
ジェーン:テンプレ願望はだいぶなくなりました。
——テンプレ願望がなくなったのは年を重ねたからですか?
ジェーン:そうですね。あとはやっぱり、「家族も人生もテンプレ通りにはできねえや」っていう、「できねえ、おらできねえ」みたいな諦めもありますね。
すべてのテンプレに関して憧れがまったくなくなったわけではないけれど、「なぜできないんだろう? ギギギ……」のような自責はなくなりました。
アラサー男子の気持ちがよくわかる
——本にもチラッと出てきましたが、今はパートナーの方と暮らしているんですか?
ジェーン:私ですか? はい。
——ご結婚は考えてらっしゃるんですか?
ジェーン:考えてないわけではないんですけど、今結婚しなきゃいけない理由が自分のなかに見当たらなくてノロノロしてるんだと思います。
「結婚には勢いが必要」と多くの既婚者から聞いていましたが、まさにそうだなと思います。だから勢いでするしかないと思います。
今ね、私は “アラサー男子”みたいな感じなんです。
——えっ、どういうことですか?
ジェーン:彼女のいるアラサー男子。「結婚は?」と周囲から思われているなか、相手に対する愛情の多寡とはまったく別のところで「一生養っていけるのか。責任が持てるのか……」みたいな不安を感じてる。そんなこと頼まれたわけでもないのに、勝手に。
でも結婚したくないという明確な意思があるわけでもない。仕事の忙しさに甘えて考えるのを先延ばしにしているというのもあるでしょうね。相手の問題ではなくて、自分の問題なんですよ。自信がないんでしょう。
——でも、やっぱり自分が「結婚するぞ」って決めるのが一番なんじゃないかな。
ジェーン:いや、押し切られるのもありだと思いますよ。だって、悩めるアラサー男子はだいたい押し切られているから。結婚したくないわけではないんだし。したらしたで、みんな幸せそうです。
——えー、そうなのか。ウートピは「自分で決める」のをよしとしているニュースサイトなんですが、そういうのもありなのか。私も含めて頭でっかちに考えすぎていたのかな。
ジェーン:私も結婚に対して頭でっかちになって、身構え過ぎなんでしょうね。
——アラサー男子なんですね。では、同志として、アラサー男子に掛けたい言葉はありますか?
ジェーン:そうですね。言いたいことがあるとすれば、「バシッと決められなくて、オメーも俺も情けねえな」って言う。
自分としては、今は「決めない」っていうぬるまに浸かっていて、これはこれでダメだなとも思っているんで、自分なりの家族観をちゃんと考えなければいけない時期にきたなと思っています。
うちの父親じゃないですけど、大事な人を失ってからでは遅いですから!
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)