見知らぬミシル×川崎貴子対談①

「それは恋愛じゃなくて執着かもしれない」恋愛がうまくいかないと思ったら…【見知らぬミシル×川崎貴子】

「それは恋愛じゃなくて執着かもしれない」恋愛がうまくいかないと思ったら…【見知らぬミシル×川崎貴子】

オンラインサロン「魔女のサバト」を主宰する、トイアンナさん、金澤悦子さん、川崎貴子さんと「結婚しなくても幸せになれる時代」の恋愛や結婚について考える当連載。

第2回目のゲストは、Twitterを中心に支持を集める恋愛カウンセラーの「見知らぬミシルさん」です。川崎貴子さんと「恋愛と執着」をテーマに語りつくしました。全3回。

見知らぬミシルさん(左)と川崎貴子さん

「人生に恋愛は必要」という思いこみが執着を生む?

川崎貴子さん(以下、川崎):はじめまして。川崎貴子です。

見知らぬミシルさん(以下、ミシル):はじめまして。見知らぬミシルと申します。よろしくお願いします。

川崎:TwitterやInstagramを拝見していて、ずっとお会いしたいと思っていたんですよ。新刊『いい女は、“去る者”を追わない その恋、ただの執着です』(大和出版)も拝読しました。赤べこのようにうなずいてしまい、首がもげそうになりました。

ミシル:とてもうれしいです。ありがとうございます。

川崎:というのも、私は「魔女のサバト」(金沢悦子さん、トイアンナさんと3人で主宰する婚活オンラインサロン)を8年以上行ってきて、私がサロンメンバーに伝えてようとしてきたことがすべて的確な言葉になっていて、驚きました。

ミシル:え!? そうなんですか。

川崎:恋愛も人同士のコミュニケーションですよね。でも、相手が恋愛対象となると途端に表現方法や物事の捉え方にバグが起こる。実際に彼女たちをカウンセリングしていると「そう考えないほうがいいよ」と執着しないように導くことはできるのですが、基本的には本人自ら気付いてもらわないといけないんですね。でも、ミシルさんの著作は、その難しい部分を的確に文章にしてくれてまして。

ミシル:うわ……ありがとうございます。お声がけいただいたこと、とてもうれしいです。

川崎:「魔女のサバト」に来てくれる女性たちは、仕事もでき、学歴も高い人が多いし、頑張り屋な傾向があります。それに、素直で責任感も強く、魅力的な人ばかりです。それなのに恋愛でつまずいてしまって、さらに結婚になるとうまくいかなくなってしまう。

ミシル:そうですよね。恋愛と結婚はひと続きですから。

川崎:一般論として「恋愛と結婚は違う」とは言いますが、そこはどうしても地続きなんですよね。婚活で出会ったとしても好きな人だから一緒にいられますし、その先に結婚があります。ただ「ここまで付き合ったのだから結婚しなくては」とか「婚活にこれだけ費やしたのだから」というマインドになってしまうと途端に本人たちにとって苦しいものになってしまう。

ミシル:とてもよくわかります。

川崎:そして、「絶対に一生添い遂げなければならない」という強迫観念を抱えたままだと、結婚はかなりの難事業になってしまいます。一方で、恋愛も結婚も流れるように進み、結婚してから数年……いや数十年も幸せに生きている人もいます。恋愛と結婚が難しい人と簡単な人の間にあるのが、ミシルさんの指摘する「執着」だと思い至りました。

ミシル:うれしいです。ありがとうございます。

川崎:今ではそんな、結婚とも地続きな恋愛に関してですが、「恋愛は必要か」という議論も行われるようになりました。ミシルさんはどう思いますか?

ミシル:そうですね……恋愛は、人生においてまあ必要だと思えば必要ですし、必要ないと思えば、必要はないと思うんです。個人の心のあり方としては、「必要じゃないかな……?」くらいに思ったほうがちょうどいいとは思っています。

川崎:「不必要です」もしくは「必要です」と言い切るのではなく、疑問形にとどめる。

ミシル:はい。「人生に恋愛は必要だ」と決めつけるような価値観が、そもそも執着を生むのではと思っています。恋愛は「別にあってもいいけど、必ずしも必要じゃない」と思っているほうが、健全な恋愛ができると思います。

多くの人の相談を受けてきて、恋愛は嗜好(しこう)品のようなものになっているのではないかと感じています。また、恋愛をすることで、自分に足りない部分を補完しようとする人も多いです。そうするとやっぱり相手も居心地が悪いというか、「搾取されているのではないか」と感じてしまうと思うんです。すると、対等な関係性を築くのがなかなか難しいんじゃないかな……と思っています。「恋愛によって幸せになろうとしてるなら、それは執着ですよ」と。

川崎:よくわかります。幸せになるために恋愛したい、幸せになるために結婚しなければという執着を抱えている人は多いです。これを手放すには、まず自分が幸せにならなければならない。でも、個人的に幸せになることが難しい。自分を幸せにするために、どうしていいかわからなくなっている人はとても多いのです。

SNSに振り回されないために…確保したほうがいいことって?

ミシル:今、個人的な幸せの追求が難しくなっている時代というのは、ずっと思ってきました。この10年間でSNSが広まり、発達していき、周囲の人から、遠い世界の人まで、「自分ではない人の幸せ」が目に入りやすくなっています。

川崎:そうなんですよね……。 それで、恋愛してる人はInstagramなどに彼との写真をアップして幸せそうにしている。「バースデープレゼントにハイブランドのジュエリーをもらった」から、「彼がカレーを作ってくれた」まで、ありとあらゆる幸せが次々とアップされています。それはとてもキラキラしており、自分との比較が生まれ「なんで私には恋人がいないんだろう」と一人の部屋で膝を抱えてしまう。

ミシル:「恋人がいない私は不幸だ」という感覚は生まれやすいと思っています。1人の時間にSNSを見ていると、「私もステキな恋人が欲しい」という執着が強くなっていきます。SNSにより失われてしまったのは静寂の機会だと思っています。1人で孤独になって、ちょっとじっくり考えるというような、静寂の時間というのは執着を手放し、幸せになるために大切だと思うんです。

川崎:静寂の機会……まさに。SNSは他人との比較装置ですから、とてもノイズが大きい。1人でいるときに、誰かの幸せを見続けていれば、幸せの基準が自分ではない誰かになってしまいます。

ミシル:情報に振り回されると、自分の幸せを見失ってしまいます。そういう人は多いと感じています。だからまず、恋愛がうまくいかない人は、孤独な時間を確保したほうがいいんじゃないかなと思ってます。

川崎:静寂の時間があれば、SNSで見せつけられる幸せの背景にも思いを巡らせることもできますしね。

例えば、先日私の知人が「今日は結婚10年目の記念日で話題のフレンチに来ています。主人がサプライズでカルティエのリングをくれました」という投稿をしていたのですが、彼女の夫には浮気癖があり、罪滅ぼしの「おわびカルティエ」だったと周囲の人は皆知っている。幸せの背景には何かがあるんですよ。

ミシル:でも、そこをSNSでは見せませんからね。「なんてうらやましいんだ。ジュエリーをもらえない自分は不幸だ」と思ってしまう。恋愛に限らず、想像力を働かせずに、そのまま受け止めてしまうと、あまりいい結果にならないことが多いです。

川崎:他人基準の幸せで承認欲求を満たそうとすると、恋愛はうまくいかなくなるのでしょうね。また、他人基準の価値観を持ったまま、SNSを発信することで承認欲求を満たそうとすると、地獄絵図のような執着が生まれてしまう。

ミシル:承認欲求には終わりがないですからね。

川崎:だから、SNSで承認欲求を満たすことを知ってしまうと、そこからなかなか抜けられない。癖になってしまうんですね。他人がいいと思うことを提供してくれる恋人やパートナーが必要になってくるんです。

例えば「結婚記念日に夫がスーパーで3割引きの焼き鳥を買って来て、2人で散らかった部屋でチューハイを飲んで幸せだ」と思ったとします。でもそれをSNSにアップしても「いいね!」は得られないことはわかる。幸せが他人基準になってしまっていると「結婚記念日なのにスーパーの総菜の私は不幸。フレンチでカルティエが欲しい」という思考回路にハマってしまう。

ミシル:あーーーそれはありますね。だから、SNSにおける幸せ、SNSでの承認欲求が満たされる恋人やパートナーを探してしまう。それが、恋愛を複雑にしていると思います。自分の幸せと他人基準の幸せ。ダブルスタンダードになっているんです。

川崎:私の幸せとSNSの幸せという、2つの方向性を満たさなくてはいけない。それに付き合う男性側も混乱し「恋愛はめんどくさい」ということになり、恋愛の構造が複雑化していく。恋愛を忌避する人も増えています。かつては職場恋愛があったのに、ほとんどの男性が「それだけはしたくない」と言っているのも最近の傾向です。その理由は、恋愛や結婚がうまくいかなくなったときの被害が甚大だと気付いているから。

ミシル:そうなると、普通の出会い、自然な出会いというのがどんどんなくなっていく。マッチングアプリを使う人が多いのは、身の周りの人と恋愛ができなくなっているからなんですよね。

川崎:仕事という、相手の人間性をある程度見極められるところで出会った人が恋愛対象外になってしまうのが現代です。ミシルさんは恋愛相談を受けていますが、相談に来る人は、お相手とどこで知り合っているんですか?

ミシル:もう本当に8割ぐらいがマッチングアプリです。便利ですし、気軽だからほとんどマッチングアプリに移行してるんじゃないかなと思っています。あと、数は多くないですが、職場での上司と恋愛しているという人もいます。

川崎:ってことは不倫?

ミシル:そうです。でも、大体そういう人はなんか失敗したりとかしてますね。

執着の本質について押さえ、不倫の話も出てきたところで、2回目「『付き合っている人、いるの?』と聞けないのはなぜ?」へと続きます。

(構成・執筆:前川亜紀)

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