わたし、虚弱体質ですか!?【心療内科医に聞く】第3回  漢方薬を試す編

虚弱体質かも…と思ったら試してみたい、心療内科医が教える漢方

虚弱体質かも…と思ったら試してみたい、心療内科医が教える漢方

心身の疲労がとれない悩みについて、心身医学専門医で心療内科医・野崎クリニック(大阪府豊中市)の野崎京子院長に教えていただくシリーズ、第1回の原因編、第2回のセルフケア編に続く今回は、漢方薬の選択について詳しいお話を伺います。

漢方薬は複数の症状と体質を考え合わせて選ぶ

——これまでに教えていただいたように、女性の不調は、頭痛、肩こり、めまい、むくみ、イライラ、ウツウツ、不眠、いつも疲れているなど、複数に及ぶ場合が多くあります。まとめて改善できる薬はないものでしょうか。

野崎医師:不調の治療には原因を追及して対策を取るようにします。まとめて治したいといっても原因や体質によって一概には言えず、完全に対応する薬はないと言えますが、1つの不調が改善するとほかの不調も良くなることはあるでしょう。

西洋医薬は、1つの症状に1つの薬で対処します。胃が痛ければ胃痛薬を服用するでしょう。それに比べて漢方薬は、多岐に及ぶ症状とともに、「体力がない、疲れやすい、眠りが浅い、顔色が良くない、胃腸が弱い、神経過敏、暑がりや寒がり」などの体質を考え合わせて選びます。症状が複雑な場合は、医療機関では血液検査などを行って病気かどうかを調べる場合がありますが、漢方薬を試すという選択もあるでしょう。

——具体的にどのような漢方薬を選べばいいのでしょうか。

野崎医師:虚弱体質かもと思う不調の対策として、いくつかの漢方薬を紹介しておきましょう。選ぶ際には、第1回、第2回でお話したことを参考にしていただき、まず、自分の睡眠の状態とイライラや憂うつ感など精神の状態、また、体力とほかの不調をポイントに見つめてみましょう。

・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
体力があまりない、イライラする、些細なことで怒りっぽい、興奮しやすい、食欲がない、胃腸が弱い、不眠

・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力は比較的ある、不眠、イライラしやすい、動悸(どうき)がする、便秘

・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
体力があまりない、憂うつ感が強い、些細なことでも気になる、不眠、疲れやすい、興奮しやすい、眼が疲れる

・加味帰脾湯(かみきひとう)
体力がない、不眠、貧血、いつも疲れている、顔色が悪い、憂うつ感や不安感がある

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
体力も気力もなく、食欲がない、疲れやすい、胃腸が弱い、寝汗をかく、だるい、風邪気味

・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
補中益気湯の症状に加えて、冷え、貧血、皮ふの乾燥、朝起きれないほど疲れている

・人参養栄湯 (にんじんようえいとう)
補中益気湯の症状に加えて、筋力が低下している、冷え、貧血、寝汗などが若いころに比べて目立つ、咳(せき)など呼吸器の症状がある

・加味逍遙散(かみしょうようさん)
体力があまりない、肩こり、腰痛、めまい、頭痛、のぼせ、発汗、ほてり、イライラ、ウツウツ、また月経異常、更年期障害など女性特有の症状に

医療機関で漢方薬を処方してもらう時の注意点

——多くの種類があるのですね。市販の漢方薬は日を追って種類が増え、ドラッグストアや薬局には多くの種類が並んでいます。迷った時はどうすればいいでしょうか。

野崎医師:迷った時だけではなく、体力や気力がわかないと感じる、また疲労感が強い時などには、まずは内科か心療内科を受診し、医師に相談して漢方薬の処方を希望してください。不眠や精神不安が強い場合は、心療内科がよいでしょう。

ただ、漢方薬を処方する医療機関は増えていますが、どこででも行っているわけではありません。事前に、漢方薬を処方しているかどうか、電話やウェブサイトで確認してください。

また、自分の体質や症状をわかっているつもりでも、意外な病気が原因である場合や、漢方薬が適さないこともあります。その場合は医師とよく相談してください。さらに、市販の漢方薬を2週間から1カ月ほど飲み続けても改善が見られない場合も医師に相談しましょう。ほかの病気が隠れている場合があります。

いずれにしろ、「自分は虚弱だから」と思い込んで、不調の改善をあきらめることは避けてください。受診は自分の体調を見つめ直すいい機会になると考えましょう。

——よくわかりました。3回にわたり、ありがとうございました。

気力も体力もなくてすぐに疲れる、貧血や冷えなどの不調も重なる場合、そういった自分の今の状態をできるだけ冷静にとらえ、自律神経のバランスを整えるように努めたいものです。それには、睡眠と食事、運動といった生活習慣を見直し、また漢方薬を試す方法もある、さらに不調を我慢せずに医療機関に相談しましょうということです。ぜひ参考になさってください。

(取材・文 藤井空/ユンブル)

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