過敏性腸症候群を治したい・第4回

「低FODMAP食」って何? 過敏性腸症候群を治す食事法【専門医に聞く】

「低FODMAP食」って何? 過敏性腸症候群を治す食事法【専門医に聞く】

下痢や便秘が長く続いたり、下痢と便秘をくり返したりすることはありませんか。「電車で急におなかが痛くなってトイレのために下車しなければならない」「ウエブでプレゼンする日の1週間前から便秘がひどくなる」などという声を聞きます。そうした症状は「過敏性腸症候群(IBS)」という病気かもしれません。

つらいこの病気について、消化器病専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医でむらのクリニック(大阪市中央区)の村野実之(みつゆき)院長に、連載にて症状、治療法、ケア法などを聞いています。

第1回は症状のチェックリストや特徴について、第2回は原因について、第3回は治療法と薬について詳しく教えてもらいました(リンク先は文末参照)。今回は食事によるセルフケア法について尋ねます。

村野実之医師

村野実之医師

FODMAPとは過敏性腸症候群の原因となる食事

——過敏性腸症候群のケアとなる食事法として、炭水化物に含まれる特定の糖質の『FODMAP(フォドマップ)』が注目されているそうです。どういうものでしょうか。

村野医師:まず、FODMAPとは、過敏性腸症候群を引き起こす可能性がある糖質のことを示します。次の複数の糖質の頭文字の略称です。

F  Fermentable…発酵性の 
  小腸で吸収されにくい・大腸で腸内細菌のエサになり発酵する
O  Ologosaccharides…オリゴ糖  
  ガラクトオリゴ糖:レンズ豆、ヒヨコ豆など豆類。フルクタン:小麦やタマネギに含まれる。
D Disaccharides…二糖類 
  乳糖(ラクトース):牛乳、ヨーグルトなど高乳糖食
M Monosccharides…単糖類  
  果糖(フルクトース):果物、ハチミツなど
AND
P Polyols…ポリオール類 (糖アルコール)
  ソルビトール・マンニトール:マッシュルーム、人工甘味料(キシリトール)など

——糖質にも多くの種類があるようですが、子どものとき、これらを食べるとおなかをこわしたことがありました。いまでも、牛乳やある種の果物、ハチミツを食べるとおなかはゆるくなります。

村野医師:子どもや高齢者では、これらを食べると下痢や下痢気味になる人がいます。おとなでも、過敏性腸症候群の人は、FODMAPに含まれる糖質を小腸で適切に吸収できない場合が多いことが近年の研究でわかっています。

低FODMAP食で腸内の異常発酵を改善する

——なぜ、小腸でうまく吸収されないのでしょうか。

村野医師:健康な人の場合、糖質を食べると消化管から分泌される消化酵素で分解されて、小腸で栄養素として吸収されます。しかし、FODMAPは小腸で吸収されにくい質のもので、たくさん食べるとその濃度を薄めようとして、小腸に大量の水分が引き込まれます。いわば小腸は水浸し状態です。その中、FODMAPはそのままの状態で大腸へと送られます。

そうすると、大腸では腸内細菌と混ざり合って異常に発酵します。このとき、水素ガスが過剰に発生して腸にたまり、腹部の膨満(ぼうまん)感や腹痛、下痢、便秘といった不調が起こります。

過敏性腸症候群の人の中には、体質として、乳糖や果糖を分解する消化酵素を持たない「不耐症」の人がいます。その場合は、うどんやラーメン、牛乳やヨーグルト、ハチミツ、リンゴやスイカを食べるとおなかをこわします。

——FODMAPを活用した食事療法があるということですが、どうすればいいのでしょうか。

村野医師:糖質が含まれる食品には、FODMAPが多い「高FODMAP食」と、少ない「低FODMAP食」があります。食事でケアするにあたり、最初の3週間は高FODMAP食をひかえ、低FODMAP食を食べます。

次に高FODMAP食の中から、自分が食べやすいと思う1品を選んで食事に取り入れます。もしこれでおなかに不調が生じたら、その1品は「不調の原因食品だ」とわかります。逆に、症状が出なければ、その食品は食べても大丈夫だと判断できます。

こうして、自分に合う食品、合わない食品が見えてきます。この療法の期間は、食事内容を記録しながら続けましょう。欧米や豪州ではいま、低FODMAP食の実践が盛んです。

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主な高FODMAP食と低FODMAP食には、次の食品があります。

FODMAP食_表

——分類として意外なものもありますね。高FODMAP食にはたくさんの食品が並びますが、中でも注意する食品はありますか。

村野医師:多くの人が合わないと訴えられるのが小麦です。うどんやラーメン、パスタなどめん類やパンを食べ過ぎるとおなかをこわしやすい場合はこれらをひかえ、米やそばに変えてみてください。数週間の低FODMAP食でおなかの調子が改善したという人が75%になったという研究報告もあります。

聞き手によるまとめ

FODMAPとは過敏性腸症候群の原因となる複数の糖質の総称であり、食事療法として一定期間、低FODMAP食を食べる方法があるということです。この食事法によって、自分の体質や合う食事が判明するというメリットは大きいでしょう。また、高FODMAP食と低FODMAP食の分類では、予想と異なるものが多くあり、食生活を見直す機会に活用できそうです。

★お知らせ
村野医師が理事を務める「大阪府内科医会」が主催のオンライン健康セミナー・第23回市民公開講座「美と健康はおなかから~腸活のススメ~」が、2021年12月12日(日)13:00~、15:00~の2回、開催されます。村野医師による講演「悩んでいませんか? おなかの症状で」もあり、無料で視聴できます(事前登録が必要です)。申し込み先:https://www.osaka-naika.jp

大阪府内科医会_2021年12月オンライン講座2

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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