お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコさんによる連載「今日も今日とて、もがいてます」。川村さんの日常に巻き起こる小さな出来事から、衝撃の事件(!?)まで。川村さんのユニークな視点で綴っていただきます。今回が最終回です。
ほんっと真面目だよねぇ
最近、とある図書館主催のオンライントークイベントに出演させていただきました。そこで下記のようなご相談を受けました。
「真面目だね」と言われることが多いのですが、それにモヤモヤします。「真面目」という言葉が悪いことのように使われているのがモヤっとします。直接的に悪いとは言われませんが、良い意味で言われている感覚がなく、自分の中で消化しきれません。
ものすごく深く深くうなずきました。
「真面目」という言葉がマイナスの意味で使われたあの瞬間。私も同じ経験を学生時代によくしておりました。
たとえば、ノートを貸してと言ってきたクラスメイトに言われました。
「本当真面目だよねぇ」
「本当」の「本」と「当」の間に小さな「っ」が入ります。呆れた調子で言ってきます。
ノート借りといて「そりゃないぜ!」です。
こちとら「ノート貸して」とクラスメイトに言うことが出来ないと踏んで、雨の日も風の日も熱の日も学校に通って黒板をノートに写し続けたのですから、借りた人はノートの重みをわかって欲しいもんです。
兎にも角にも、一瞬で心に霧がかかります。
「本当真面目だよねぇ」の他には、「本当細かいよねぇ」もございました。
理科の授業で花を描き写す課題で「おしべ」やら「がく」やらを描いている時に「うわっ!めっちゃ丁寧じゃね?」(丁寧過ぎるだろ。の意味を込めて)と言われたこともありました。
ポコポコと沸かすお湯の泡のようにこの手のエピソードは沸き上がって来ます。
学生時代に言われていた時は苦虫を噛み潰したような顔でモヤっとした気持ちごと飲み込むことしか出来ませんでしたが、何度も繰り返し言われる度にいろいろと返し方を試して試して、その結果出た答えは「あじゃーす!」が一番でございました。
答えは「あじゃーす!」
「ありがとうございます!」でも「あざーす!」でもなく、「あじゃーす!」です。「ありがとうございます!」は真面目に上乗せ状態で「本っ当真面目だよねぇ」と皮肉で返されることもありました。
そうです!「ポップに軽く、気にしてませんよ。感」を出すのです。
しかし、「あざーす!」は大衆的で、私が使うには勇気が爆発的に必要でして、だけれどもここで最も大事になってくる「ポップ感」も消したく無く、「あぜんすー!」というのを試したことがありました。
「ありがとう!全然気にしてません!ありがとうございます!」を略して「あぜんすー!」です。いざ使ってみると「え?」と大きめの声で聞き返されたりしまして、何度も気まずい雰囲気になったのでひっそりと使用を中止しました。
また、「サンキューです!」とファストフードバイトのつもりで返そうとした事もありましたが、英語、横文字というのはこれは「あざーす!」より勇気がいることが分かり、即却下!
そして、「あざ、、ーす!」んー。。「ざ、じ、ず、、」「あざ、、あじゃ、、ーす?」あ!「あじゃーす!」と変化しまして、軽めにポップに「本当真面目だよねぇ」を受け入れつつ、自分自身の心も逃して楽にしてあげる事ができる「あじゃーす!」が生まれました。
「あじゃーす!」の良いところはまず「あざーす!」よりモゴモゴとしゃべれる所です。「あざーす!」ほど、ハキハキ頑張らなくて良いのです。
自信がなくたって、「じゃ」という音は優しく軽さを出してくれるのです。
実際は気にしてて大いに結構!と私は思っておりますし、自身もそうでございました。
もちろん、「あじゃーす!」と言えば心の霧が100%晴れるかと聞かれればそうではないのですが、軽めに答えることで、自分自身の心から一歩距離を置いて客観的に逃してあげる事が出来るので気持ちが楽になる事が分かりました。
モヤモヤのガス抜きが出来ました。
それでは、リピートアフタミー!
「あじゃーす!」
もう一度! せーの!!
はい。たしかに聞こえました。「あじゃーす!」が恥ずかしくなってきたら、「あじょんすー!」や「ありがとうごじゃります!」などにしてみても大丈夫かと思われます。勇気があれば原型「あざーす!」も使ってみてください。
心を逃がせる言葉やモヤモヤを少しでも晴らしてくれる言葉を見つけるとほんの少し日々が生活しやすくなります。おすすめでございます。
最終回を迎えました!
今回をもって川村エミコエッセイ「今日も今日とてもがいてます。」は最終回になります。
短い間でしたが、ページを開いて読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
読んで感想を送ってくださった方々ありがとうございます。「読んではないけど応援してるよ!」と言ってくださった方ありがとうございます。
最近の日々を振り返っても、やっぱりもがいています。もがいてはいますが、その中でも「ためいきをポイント制」にしたり、モヤモヤを「スペぺぺぺぺ!」で追い払ってみたり。自分なりの対処法、心を軽くする術を見つけるきっかけにすると自分磨きのようで、気持ちが少しラクになります。「もがきながら自分磨きしている」と思うようにしました。
良き言葉を加えると少し苦しさが軽減したように感じるので言葉は不思議です。言葉は無限です。
だけど、私に降りかかる、人より少しツイテイナイ、所謂「そういう星の下」感はいったいいつまで続くのでしょうか。
先日もタクシーで、目黒に行きたかったのに目白に着きました。目白と目黒の位置関係は北と南です。黒と白、位置的にも色的にも真逆ですがタクシーの運転手さんはごちゃごちゃしちゃったのでしょう。「目白のどの辺りですか?」と目白近くで言われたのでおったまげました。
寝ていた私もよくないのです。そう思うのです。起きてしまったことは仕方ないです。
「目黒です!白じゃなくて黒いほうです」と言う勇気もなく、元気もなく、不幸中の幸い、全く急いでいなかったので、「駅でお願いします」と言って、電車で目的地に向かいました。
もう少し時間が早かったら、昔、先輩俳優にモロくそダメ出しされたファミレスにでも寄って、今どんな気持ちになるのか「思い出の現在の居場所」を調べたかったのですが、中途半端な時間だったので断念しました。
タクシーで目黒と目白を間違えられたのは東京で暮らしはじめて22年の間で3回目でした。
二度ある事は三度ある。とは言ったもんです。
出来たらこれで終わりにしてもらいたいです。
諺(ことわざ)超えだけはしないで欲しいなぁと思います。
同じような場所から目黒に向かうことがあれば、その時は「黒いほうです!」と言おうと思います。
もがきながら、一緒に
またこのエッセイを書き始めてからたくさん相談をいただくようになりました。
私自身毎日悩んでいますし、悩みすぎなのかなんなのか毛は抜けますし、モガモガしているのでありますが、とてもありがたく思っています。
いただくお悩みには私なりのANSWERを出しますが、私の回答は選択肢の中の一つくらいにしていただけたら嬉しいです。これからもきっと日々悩み続けているのでその中で見つけたものを丁寧にお伝え出来たらなぁと思います。
時に傷の舐め合いになってしまいますが、もがきながら自分磨きしながら、一緒に前を向けたら嬉しいなぁと思います。
あ、私の相談も今度聞いていただけたら嬉しいです。
最後になりますが、私は今 2ラインで生きています。真面目にもがいているでしょう?笑笑
「このまま独身の道」と「結婚した場合の道」と2ラインはなかなか持ってやる事が倍々ゲームで増えているので正直ひっちゃかめっちゃかです。
でも浮かんで来るいろんな雑念を拾っては捨てたり、飲み込んだり、「ペッペッ!」と吐き出したりしながら、進んで行けたらと思います。
私に巻き起こる「そういう星の下」な日々に寄り添いながら、時に悲しみ、時に笑って、ケセラセラと過ごしていけたらなぁと思います。答えなんてなくたっていいんじゃないかと思う時もあります。答えを欲する時もあります。
毎日違って良いのかと思います。
さぁ、今日も今日とてもがきながら突き進みます!
デパートのエレベーターが運悪く止まってた日やいつもの道が通行止めだった日、いつも開いているスーパーが予告なしに閉まっていた日などありましたら、「あ、川村さんにも同じ様なこと起こっているかなぁ」と思い出していただけたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
では、またどこかでです。