『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』インタビュー第3回

朝のコーヒーで体内時計をリセット! 時間栄養学に関するQ&A

朝のコーヒーで体内時計をリセット! 時間栄養学に関するQ&A

年を重ねるにつれて、「ダイエットをしてもなかなか痩せない」「毎日1万歩歩いているのに体重が落ちない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか? 実は、ダイエットのポイントになるのは、私たちの体に備わっている“体内時計”。脂肪がたまりやすい時間、筋肉がつきやすい時間を知ることで、効果的に肥満を防ぐことができます。

また、食事においても、これまでは「何を」「どう」食べるか? が注目されていましたが、「いつ」食べるか? という視点がとっても大切。

そこで、『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)などの著書があり、現在は広島大学大学院医系科学研究科で特任教授を務める柴田重信(しばた・しげのぶ)さんに、時間栄養学を生かしたダイエットのポイントについて、お話を伺いました。

第3回目のテーマは「時間栄養学と食べ物・食べ方の疑問」です。

『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』の著者・柴田重信さん

甘いものは朝か昼のうちに

——ドーナツやケーキが大好きなのですが、どうしても食べたい場合、夕食後のデザートではなく、昼食後として食べたほうが良いのでしょうか?

柴田重信さん(以下、柴田):夜に食べるよりは、絶対にいいです。甘いデザートには、糖分や乳脂肪などの脂肪分が多く含まれていますから。夜の遅い時間は、高カロリーの食べ物を欲する時間でもあるんですね。夜中にカップラーメンを食べるとおいしく感じるのも、夜にカップラーメンの糖質と脂質を摂取し分泌されるドーパミンがやみつきにさせるからです。

これはちょっと力技かもしれないですが、甘いものを見ると食べたくなってしまうので、昼間に食べてしまって物理的に「ない」状態にするのがいいと思います。

——「夜は過食しやすい」ということですね。

柴田:そうです。夜は食欲ホルモンが出やすく、つい過食になります。夜は食べたあとに、活動せずにすぐ寝てしまうので、エネルギー消費が少なく脂肪蓄積の元になり、肥満の原因につながってしまいます。

コーヒーは朝がおすすめ

——コーヒーなどカフェインが含まれているものも、夜ではなく、朝や昼にとるほうがいいのでしょうか?

柴田:コーヒーは、朝飲む人が多いと思いますが、時間栄養学的には体内時計をリセットして、体を起こしてくれる役割があります。昼食のあとに飲むのも、いいですね。私たちの最新のマウス研究では、高脂肪の食事で太らせるような状況下で、朝にコーヒーを飲むマウスは痩せていきましたが、夕方にコーヒーを飲む場合は痩せられませんでした。明らかに、朝コーヒーを飲むマウスのほうが、抗肥満効果が出やすいことが分かりました。人でも同じことが起こる可能性があります。

——夕方以降のカフェインは要注意ですね。

柴田:コーヒーを飲むにしても、ノンカフェインにすれば問題ありません。例えば、コーヒーだけでなく、お茶に関しても同じです。夜遅い時間にカフェインを摂取しないように、夜は麦茶にして、朝や昼は日本茶にするといいと思います。

足りない栄養素はサプリでとっていい?

——足りない栄養素をサプリメントで補ってもいいのでしょうか?

柴田:さまざまな議論がありますが、私は、足りない栄養素をサプリメントで補給することは良いことだと思います。ただ、とりすぎには注意です。例えば、たんぱく質も、今はサプリメントで気軽にとれますよね。そうすると、過剰に摂取してしまう場合があるので、それだけは注意してほしい。足りているにも関わらず、サプリメントで過剰に摂取してもあまりメリットはありません。

——あくまで、足りない栄養素を補給するということですね。

柴田:例えば、食事で20gのたんぱく質をとったほうがいいというときに、サプリメントだと量は少ないですよね。一方、食事でとろうとすると量が多いわけです。たんぱく質だけじゃなく、関係ない栄養素も入っていますから。でも、基本的には、食事からとるほうがいいですね。

例えば、キクイモには、水溶性食物繊維のイヌリンが多く含まれています。キクイモの50%がイヌリンだとすると、イヌリンを5gとろうとすると、キクイモを10gとることになります。残りの5gには、ポリフェノール、非水溶性食物繊維、ミネラルなどさまざまな物質が入っています。そのときに、腸内細菌を調べてみると、イヌリンだけを摂取するより、キクイモとして摂取したほうがいいということが分かりました。要するに、他の栄養素が、いい役割を果たしている場合が多いので、食事としてとるほうがいいと考えています。

更年期を迎えたら朝も夜も納豆がおすすめ

——更年期を迎えるとなかなか痩せにくいという話を聞きます。更年期を迎えても時間栄養学は有効でしょうか?

柴田:時間栄養学の観点から言えば、夜遅い時間に夜食や高カロリーのものをなるべく減らして、朝や昼に摂取するように心がけることが大切です。それは更年期を迎えても変わりません。

更年期の場合、女性ホルモンのエストロゲンが減少することで、頭痛、骨粗しょう症などさまざまな症状が出てくるので、エストロゲンを刺激するような薬を処方されることがあると思います。そんなときに、薬だけでなく、大豆製品に入っているイソフラボンの摂取も有効だとされています。イソフラボンは、エストロゲンに似た働きをしてくれるので、私たちは「納豆や豆乳などの大豆製品を、夜にとったほうがいい」と考えています。

——大豆製品を夜に摂取するのが良いのですね。

柴田:経口避妊薬にも使われているエストロゲン製剤ですが、一番の副作用は血栓です。血栓症は、血が固まりやすい朝に起こりやすい。そのため、エストロゲン製剤は、血栓症のリスクを減らすために夕方に処方されます。

ところで、納豆を夜に食べる利点は二つあります。一つは、前述したようにイソフラボンが入っていること。もう一つは、納豆に含まれるナットウキナーゼ。夜に食べたナットウキナーゼが、翌朝に血栓予防作用をもたらすからです。

また、更年期になると、筋肉も少しずつ衰えてきます。ある程度、筋肉がないと太りやすくもなる。そして、筋肉でグルコースを消費しているので、筋肉が少ない人は糖尿病にもなりやすい。そういうさまざまなリスクがあるので、朝にたんぱく質が豊富な納豆を食べるのもおすすめです。朝の納豆は、筋肉維持に有効ですし、夜の納豆はイソフラボンとナットウキナーゼを摂取できる。いずれにせよ、更年期の人には、納豆がおすすめだと思います。

——朝に食べる納豆と夜に食べる納豆の働きがそれぞれ違うのですね。朝も夜も食べるのが良いかもしれないですね。

柴田:両方食べても、まったく問題ないと思います。安くていい供給源なので、気軽に摂取できます。そして、納豆は、発酵食品なので、腸内細菌の働きをよくしてくれます。さらに、納豆が発酵する過程で、たんぱく質が一部分解されるので、消化吸収に負荷がかかりにくいんですね。例えば、大豆そのものと納豆があって、両方食べたときに、消化吸収しないと意味がないわけです。そのまま排せつしてしまったら、食べた意味がありません。そういうプロセスを考えたときに、納豆のような発酵食品は消化吸収にやさしい食品だと言えます。

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