年を重ねるにつれて、「ダイエットをしてもなかなか痩せない」「毎日1万歩歩いているのに体重が落ちない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか? 実は、ダイエットのポイントになるのは、私たちの体に備わっている“体内時計”。脂肪がたまりやすい時間、筋肉がつきやすい時間を知ることで、効果的に肥満を防ぐことができます。
また、食事においても、これまでは「何を」「どう」食べるか? が注目されていましたが、「いつ」食べるか? という視点がとっても大切。
そこで、『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)などの著書があり、現在は広島大学大学院医系科学研究科で特任教授を務める柴田重信(しばた・しげのぶ)さんに、時間栄養学を生かしたダイエットのポイントについて、お話を伺いました。
第2回のテーマは「朝が苦手な人が時間栄養学を取り入れるには?」です。

『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』の著者・柴田重信さん
朝食時間は決まっている? 起床から2時間以内に食べる
——前回、「起床後は朝日を浴びて、朝食をしっかり食べることが大事だ」というお話がありました。どうしても朝が苦手でギリギリまで寝ているため、自宅で朝食を食べる時間がありません。例えば、「起床後にバナナだけ食べて、勤務先の近くの喫茶店でモーニングを食べる」というルーティンは問題ないでしょうか? その場合、モーニングを食べるのは、起床してから2時間後ぐらいになるのですが。
柴田重信さん(以下、柴田):確かに人によって起きる時間が違うので、朝食の定義としては「何時」という言い方ではなく、「起床後」という言い方になるわけですが、前回もお伝えしたように、「朝食は起床後1時間以内を目標に、2時間以内に食べればいい」のではないかと考えています。ただ、朝食と昼食の間は5時間ほど開けると健康にいいとされているので、朝食があまり遅くならないようにしてください。
朝に時間がない人や食欲がない人は、今回の例のように、出社してから朝食をとることもあると思いますが、そういう人は、たんぱく質がすごく足りていません。朝食でたんぱく質を20gはとってほしいので、会社で牛乳を1本飲むとか、ゆで卵を1個食べるとか工夫してみてください。納豆はなかなか会社で食べられないと思いますが、出社してから朝食をとる場合は、たんぱく質を意識してほしいですね。
夜更かししても朝は一定の時間に起きる
——どちらかと言えば、夜型です。夜型の人のリスクは何でしょうか?
柴田:例えば、明らかな朝型の人と明らかな夜型の人で比べると、夜型の人のほうがCVD(心血管障害)になる確率が1.07倍です。精神疾患になると、約2倍と結構高くなる。死亡率を見てみると、1.06倍と多少リスクが高まるわけです。そして、CVDで亡くなる人も、夜型の人のほうが少しリスクが高いんですね。
だから、夜型の人はちょっとつらいんですよ。朝型、中間型、夜型の人、全部で約3,000人を調査したところ、朝型の人のほうが健康観や幸福度が高く、夜型の人は低いということも分かりました。加えて、性格も診断したところ、朝型の人は勤勉性が高く、夜型の人は解放性が高い。いわゆる、夜型の人は、心がおおらかだということですね。そのほか、情緒性や外向性などは、差が見られませんでした。
——朝型と夜型には、遺伝子が関係していると聞いたことがあるのですが。
柴田:もちろん関与はありますが、すべてが遺伝性ではありません。例えば、家族全員が朝型であるとか、家族全員が夜型であるとかであれば、それは家系ですよね。でも、自分だけ夜型で、ほかの家族はみんな朝型の場合は、生活習慣のせいかもしれない。夜遅くまでスマホを見たり、コーヒーを飲みながら映画やドラマを観たり、夜中にジムに行ったりしていると、どうしても夜型になってしまいますから。
——社会的な時間に合わせるためにも、朝型にしたほうがいいというのは分かってはいるのですが……。
柴田:人間は、夜型になりやすいんですよ。体内時計の周期は24時間より30分程度長いので、油断したら後ろに延びようとするんですね。そうすると、なかなか朝型になれない。だから、夜型というのは、ちゃんと意識していないと、普通に起こりやすいんです。ただ、夜型の人には利点もあります。体内時計が遅れやすいのでシフトワークに適応しやすく、また夜遅くまで遊べる。夜型の人は平日と週末で生活リズムが不安定であることも多いので海外旅行に行っても時差ボケを起こしにくいかもしれない。一方で、朝型の人は、生活リズムが安定しているので、海外旅行の時差でつらいことが多いかもしれません。
——では、夜更かしをしてしまった場合、普段と同じ時間に起床するほうがいいのでしょうか?
柴田:そうですね。いくら夜更かしをしようが、起床時間は一定にすることが大切です。そうすると当然、睡眠時間が足りていないので、昼間にボーっとしてしまったり、眠くなってしまったりします。でも、体内時計が狂いやすくなるので、睡眠時間がちょっと足りないほうがいいですね。基本的に、決まった生活リズムに合わせることが大切です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)