2021年もあとわずか。コロナ禍での生活も2年が経とうとしています。コロナ禍で一変した私たちの生活。多くの人がライフスタイルや価値観の変化を感じているのではないでしょうか?
マッチングアプリ「Omiai」を運営する株式会社ネットマーケティングが今年2月に発表した調査結果によると6割以上の男女が「コロナ感染拡大前と比べてパートナーが欲しいと思うようになった」と回答しました。
「結婚」はあくまでもパートナーと一緒に生きていく手段の一つに過ぎませんが、コロナ禍で自粛生活や緊急事態宣言の発令で思うように人と会えなくなった分、人とのつながりやパートナーシップについて考えるようになった人も少なくないのでは?
そこで、婚活サイト「キャリ婚」を主宰する川崎貴子(かわさき・たかこ)さんと恋愛・婚活サイト「LoveBook」編集長の川口美樹(かわぐち・よしき)さんに「令和(コロナ禍)の婚活事情」をテーマに対談していただきました。全3回。
自分にとっての「普通」って難しい
川崎貴子さん(以下、川崎):今回、川口さんと対談したいと思ったのは、以前インタビューをしていただいてそのときは私が話すことが多かったのですが、その後川口さんのTwitterを見ていたら「私とまったく同じ立ち位置で発信されている!」と思ってぜひもっとお話したいと思いました。
川口美樹さん(以下、川口):ありがとうございます。光栄です。
川崎:早速なのですが、コロナ禍で多くの人が自粛生活やテレワークを経験して一人時間が多かったと思うんです。コロナの不安はもちろん世の中がどうなってしまうんだろうという不安もあるけれど、なかなかリアルで人に会わないから不安を吐き出せない。一人のほうが気楽という人もいるし、必ず私も結婚でなくていいと思うのですが、誰かと一緒に住んだり時間を共有したりことでその精神的不安は和らぐんじゃないかなと思っています。
川口:確かにコロナを機に結婚を考え始めた人も増えています。でも、人にリアルに会えない分、アプリや結婚相談所などサービスの展開が早過ぎて消費者がまったくついてこれていない。何から始めたらいいのかわからない。婚活の相談とか乗っていてよく思うのですが、男女のカップルで考えたときに、周りの男性が稼いでいる人が多いと婚活がすごく難航するんです。基準がそこになるから、世の中そんな男性ばかりじゃないというのを受け入れられないんですね。
川崎:自分にとっての「普通」って難しいですよね。前は“自分のお父さん問題”というのもあったんです。東京近郊に一戸建てを持ってマイカーを持ってローンで家を買って旅行も年に1回は必ずいくというのが「普通」だと思っているから「うちの普通のお父さんが何でいないの?」って。
川口:『サザエさん』どころか『クレヨンしんちゃん』もできない時代だってよく言われますよね。
そういう意味で、いきなり「キャリ婚」さんの宣伝みたいになっちゃうのですが、男女ともに共働き前提で、男性からは一切アプローチできないっていうのはいいなと思います。男性は年収や大黒柱を期待されるのはすごくプレッシャーだから。
川崎:今は男性も余計にプロポーズしないですよね。だって結婚しちゃったら「私、仕事辞めるわ」って突然言われる可能性もあるし、自分がフレキシブルに働きたいと思っても嫁ブロックがくる可能性がある。だからよりプロポーズしない男子たちが世の中にたまっている。
マッチングアプリは“美容液”
川口:川崎さんにお聞きしたかったのが、女性の相談に乗っていて自分が活動するべきフィールドを定められていない人が多くないですか? って。
川崎:すごく多いです。多いんだけれど、その前に「どんな結婚をしたいか?」が定まっていないから降りてこない。「私はこういう人、こういう生活をしたいからこういう人がいい」というのがないんですね。「こういう人」が分かっていれば、「だったら結婚相談所だね」とか「趣味のサークルで見つけたら?」とか分かるんですが、そもそも友達から何となく紹介されたサービスを使っている。それでうまくいかないと「私、婚活向いていない」ってすごく主語が大きくなっちゃうんです。
川口:主体的にアプローチできなかったり、良い男性の選び方がわからない人は結婚相談所が向いていますね。
川崎:結婚相談所は親の意見を大事にしている人が多い傾向にあるから、つりがき重視の人が多いですね。だから感性で「この人の雰囲気が好き」「見た目が好き」っていう人には向いていないんです。例えば、アートが好きな人を紹介してはくれてもアートの感性が合う人をコンシェルジュが紹介してくれるわけじゃないから。
川口:ちゃんと実績を出している結婚相談所は自己分析から入るところもありますね。初回のカウンセリングで6時間かけて自己分析シートを何枚も書かせる。何がOKで何がダメかをちゃんと言語化するところからスタートするんですよね。
川崎:それはすごく大事ですね。キャリ婚でも価値観シートというのを書くのですが、それを真剣に考えるだけでも自分の棚卸しにはなると思います。あとうちの場合は女性が自分で見極めないといけないので、真剣になりますよね。「いいね」をたくさんもらってもしょうがない。いろんな人にモテるために登録しているわけではなくて、たった一人のパートナーを見つけにきている人が多いですね。
川口:「いいね」をたくさんもらって満足してしまうのがマッチングアプリのデメリットでもありますよね。どうしても数を意識してしまうから。
川崎:友達はそれを美容液って呼んでました(笑)。ガチ婚活に疲れると出会い系マッチングアプリに行って「いいね」をもらって承認欲求を満たす。
川口:マッチングアプリを使うならそのくらいのノリがいいのかもしれないですね。やっぱり、マッチングアプリで婚活して結婚までいける人って相当主体性がないといけないというか、ある種自分の人生をちゃんとケツ持ってふけるくらいの意思決定力がないと難しいと思います。
川崎:出会い系マッチングアプリで出会いから結婚まで持っていくのは熟練の技、匠の技です。
厄介な“悪気がない真剣じゃない人たち”の存在
川口:マッチングアプリって遊び目的の人たちもいるんだけれど、「悪気がない真剣じゃない人たち」の存在も厄介だなって思っていて。さっき川崎さんがおっしゃった、どんな未来を作りたいかが明確になくて男女ともに「結婚だけしたい人」が多いんですよね。周りの評価が気になるし、世間体を気にしている人たちが大半なので、別に悪いことではないと思いますけど、そういう人たちって婚活させられてる。周りはみんな結婚してるし、親からも何となく期待されるし、職場の目もあるし、そろそろ婚活しておかないとなっていうので、スタートが外からなんです。内からじゃないんです。
川崎:でもそれって、なぜか相手にバレるんですよね。デートしてても、「この人って外圧で結婚しなくちゃと思ってライセンスが欲しくて婚活してるんだろうな」っていうのはバレてる。自分を見てないというか。目の前に相手がいるのに、その人に興味がない感じ。
川口:自分も真面目にやっていると思っているし、結婚したいと思ってるんだけど、「何で結婚したいの?」って聞かれるとわからない。「悪気はないけど真剣じゃない」っていうのはそういう理由で。内的な動機で主体的に選んでいるか、世間から受動的に選ばされているのか、プロフィール上からはわからないから、お互い向き合ってパートナーを真剣に探していきたいという人にとっては厄介ですよね。
川崎:私が婚活の個人カウンセリングをやっていて思うのが、婚活しながらも本当は男性が嫌いな女性が結構いるということ。だから無理に結婚しなくてもいいのに、就活や受験勉強のように周りがしているからやらなきゃって思っている。「男性ってこうだから」「一緒に住んだらこうなるじゃないですか」とい決めつけて「男性」というのを一括りにしちゃっているケースもありますね。
川口:“目の前のあなた”を見ていないのはもったいないというか、「男性は〜」「女性は〜」とひとくくりにしちゃうのは失礼ですよね。
川崎:多分怖いんだと思います。ずっと女子校だったから男性との距離感がわからないとか、実はうっすら嫌悪感がある人も多い。であれば無理に結婚しなくてもいいのですよ。女友達と2人で暮らしたってシェアハウスで暮らしてもいい。落ち着かない幸せを取りに行ってもしょうがないし、結婚は絶対にしなければいけないというのではなくて、自分にとって幸せだと思うから(結婚を)するっていうだけなので、いろいろな形があっていいと思いますけどね。
川口:手段と目的が入れ替わっているのかもしれないですね。目的は幸せになることだし、パートナーと信頼関係を気づいて人生の充実度を上げることが本来の目的で、その一つに結婚という手段があるだけなのですが。誰かとパートナーシップを築くのは必ずしも男女のセットではないし、一対一の関係でもないので、自分は何が欲しくて何がいらないのかをはっきりさせると、じゃあどの手段を使うのがいいの? が分かると思うんですよね。
※第2回は12月27日公開です。