キャリア、資格、貯金、語学習得……これらは自分が努力をすれば、なんとか結果は出てくるもの。ノウハウも正解もあるので、途中で苦しくとも立ち上がりゴールに向かって歩く気力も湧いてくる。でも恋愛や結婚となると、どうしていいかわからない。セオリーどおりにするほど、自分の幸せが遠のいたり、自分の幸せを追求すると、迷宮に入り込んだり……気づけば「こんなはずじゃなかった」と不安と後悔に押しつぶされそうになる人も増加中。
ここでは、正解がない時代に、人生の迷路にハマっている人のために、東大卒の恋愛コラムニスト・ジェラシーくるみさんと、人生のプロ・川崎貴子さんが道案内していきます。苦しくて、悲しくて、不安で、どうにもならない人に効く“読む薬”。1回目は「いい子」の呪縛を説く方法を、そして、今回は「いい子の恋愛下手の解決方法」について詳述していきます。

ジェラシーくるみさん(左)と川崎貴子さん
先回りしちゃってない? 下手に出る恋愛がうまくいかない理由
川崎貴子さん(以下、川崎):20年ほど女性の人生相談を続けてきて感じるのは、「仕事ができる人ほど、恋愛が下手」問題。。やはり恋愛と結婚はどうしても地続きであり、結婚相談所で出会っても、アプリで出会っても、「恋愛」がうまくいかないと、結婚にはなりにくい。真面目な人の恋愛下手問題の原因は何だと思いますか?
ジェラシーくるみ(以下・ジェラシー):1回目の話とかぶってしまうのですが、「相手が恋人となると下手(したて)に出る」ことがベースにあると思います。相手を立てて、自分を下に置くから、いいように扱われてしまう。自分が下手(したて)に出たほうが、表面的なコミュニケーションはスムーズに運びますからね。
川崎:それはありますね。相手の意見を尊重し、自分の意見を言えない。行き過ぎるとファッションや行動も相手に合わせ、相手の意見に合わせて飲み会に行かないなど、自制と我慢を続けてしまう。
一を聞いて10も100もわかるからこそ、相手のささいな一言から相手の希望を察知して、先回りするのです。この不自然な状況は長く続かないから、あるとき怒りが爆発する。
ジェラシー:そのきっかけはささいなことなんですよね。LINEをしなかったとか、お礼を言わなかったとか。そのことで、深夜に長文のLINEを送ったり、鬼のように電話をかけてしまったり。
川崎:相手は「なんで、そんなに怒っているの?」と困惑します。それに対して「あなたはかつてこう言った。だから私は我慢した」とキレる。相手は言ったことなど覚えていませんから、ヒステリックに叫び続ける恋人を拒否する。
当然、気持ちが離れてしまい、別れに際して、「私ばかり頑張ってきたのに」「あなたは何もしないで、私ばかりが我慢してきた」と苦しむことに。このパターンの恋愛を繰り返す人は少なくありません。
ジェラシー:でも、そういう人は、友達同士だと対等な関係で、フラットに話せたりするんですよね。そうなってしまう原因は、社会のちょっとした歪(ゆが)みだと思うんです。だから、「女はこうあるべき」という正解に固執せず、自分の快・不快や幸せに正直でいるほうがいいと思うんですよね。
あらゆるところに「悪意のない罠」が潜んでいる
川崎:そうなんですよね。そもそも、アラサー期は、自分自身の軸がブレまくる時期。迷い、不安な時に、キャリア、結婚、出産などの人生の決断を迫られる酷な時期でもある。
自分の意見を言わない習慣がある人は、ますます迷い、その結果「社会の歪(ゆが)み側」に合わせてしまうのかもしれません。
ジェラシー:不安になりがちなアラサー期に選択や決断を求められるのは、女性ばかりというのも社会の歪み。ここは明らかに性差があると感じます。例えば、結婚するとき彼氏から「俺のほうが(少し)稼いでるから、家事はやってね」とか、「結婚したら転勤になるんだ。ついてきてくれるよね」というセリフが自然に出てきて困惑したという話を聞いたことがあります。
川崎:あ~わかる。既定路線とでも言わんばかりの口調。そんな物言いをされると、黙って従ってしまう人はいると思うわ。
「は? 何言ってるの?」反論できる人もいますが、自分の人生を軽んじる発言をされると、ヒステリックになってしまう。揺れ動いているときに、外からの力がかかるって、なんという不平等。
ジェラシー:この社会の歪(ゆが)みは、意外と多い。あらゆるところに「悪意ない罠」があると知っているだけでも、選択も対応も変わると思うんです。そのときに気をつけてほしいのは、感情的にならないということ。そのためのホルモンコントロールもアリだと思うんです。
だから、この記事を読んで「私は感情のアップダウンが激しい」と悩んでいる人に「あなたが不安なのはホルモンのせい」と言いたいです。体調が悪いのも、前向きになれないのもホルモンのせい。
川崎:生理周期を把握し、逆算して「この日は落ち込む」とか「この日はPMSがくる」とかデータを蓄積するのもいいですね。そもそも、子どもを何人も産んでいた昔の人に比べて、生理の回数は圧倒的に多いですし。
ジェラシー:婦人科系疾患も増えており、生理をコントロールする視点は持っておいたほうがいいと思います。まず、かかりつけ医をつくり、PMS対策をするだけで視界が晴れていくはず。
川崎:女性ホルモンには本当に振り回されましたよ。。嵐の海のようなアラサー期を乗り切って結婚する。すると待っているのは、猛獣が次々と襲来するジャングルのようなアラフォー期。そこで、子どもを抱えて突き進み、子どもも成長し、ホッとしたアラフィフ期に待っているのは、女性ホルモンがガーンとなくなる重く苦しい日々。そう、更年期がラスボスのようにやって来るんです。その破壊力と衝撃たるやすさまじいものがありますよ。
ジェラシー:そうなんですか!?
川崎:私は「命の母」で乗り切りました(笑)。でも、だからこそ、アラサー期に、ホルモンをコントロールする選択肢を知ることは、強い武器になります。加齢による自分の変化がわかり、いつ何をすべきか、どこに進路を取ればいいかもわかってくると思うんです。女性の揺らぎの正体を知るだけで、恋愛や結婚までのプロセスが少しは楽になる。
元カレはお忘れなさい マッチングアプリの罠
編集部:相手選びはどうすればいいでしょうか?
ジェラシー:まず、「元カレは忘れなさい」と言いたいです。恋愛がうまくいかない人の多くは、元カレを評価基準にしており、元カレ以下の人を足切りしてしまう。
川崎:わかるわー。元カレはこのスペックで、あれもこれもやってくれた……というように。元カレ以上のスペックを求めていると、相手が限られてしまう。自分のコミュニティーに近い人、会社、趣味の仲間などにいい人がいるのに、元カレの呪縛からその相手のことが見えなくなってしまっているんです。
ジェラシー:条件を取り払って、純粋に恋愛を楽しんだほうが、相手の本質が見えてくると思うんです。例えば、この人と家族になり、生活を営んでいけるかという人間的条件で見たり、それとは逆に動物的な直感で「外見がタイプだから1回この人にアタックしてみよう」など。
川崎:恋愛もある程度経験を積まないと、合う・合わないはわかりにくいですから。いろいろな人と会うと、「譲れない」と思っていた条件が、意外とどうでもいいと気づいたり、その逆もあったり。
条件と聞いて想起するのはマッチングアプリですが、これもスタンダードになりましたが、リスクもありますよね。
ジェラシー:アラサーの女性たちは、かなりのリスクヘッジをしていますよ。性暴力は論外として、明らかに体が目的の人のところには行かない、個室では会わない、人の気配のないところには行かないなどは当たり前。わかりにくいリスクは既婚者。
川崎:好きになって「実は既婚者」と告白され、泥沼にはまる人もいます。妻から慰謝料を請求されても、文句は言えないのに、そこにハマってしまう。
ジェラシー:だからこそ、初期のうちに見極めを。連絡がくるのは平日だけ、土日や連休に連絡が取れない人はほぼ既婚者。クリスマスや年末年始に会えない人、すぐに電話できる状況にない人は、家族がいることが多いです。家に行ったからといって安心できず、単身赴任中だったり、同居している彼女がたまたまいないタイミングがあったり。
川崎:ウソを見破るのは難しくスパイ並みに証拠を集めなくてはならない。
ジェラシー:会話の内容をメモっておくのもおすすめ。「バツイチだというけれど、恋愛遍歴の中のこの空白の3年はなんだろう」とか、ウソをついている人は、辻褄(つじつま)が合わないことが絶対に出てきます。
女性の多くは、年齢を若く設定したり、清楚ぶったり、料理上手をアピールするなどの“盛る”程度にとどめているのに……まあ、この“盛り”にも、社会の歪(ゆが)みが現れていますが。
川崎:とはいえ、最初は興味を持ってもらわないと何も始まらないから、許容範囲ですよ。出会ってから、自分のことを開示していけばいいんです。
まずは、どうしたいのかざっくりとした指針を決め、ターゲットのニーズに合わせてプロフィールをつくる。出会った後に、修正すればいいんです。ところで、ジェラシーさんの周囲で、専業主婦志向と、キャリア志向はどのくらいの割合なんですか?
ジェラシー:共働きがスタンダードなので、「働きたい」と言う人は多いです。でも、子育てしながら総合職でバリバリ働きたいという人は少ないかもしれませんね。
確かに、「結婚しても仕事がしたい」という女性はいます。でも、詳しく内容を聞くと、趣味の延長でお小遣いを得る程度と答える人は意外と多い。
川崎:20代後半から事務職を希望する女性が激増する理由も腑(ふ)に落ちます。やはり、女性の家事・育児の負担が大きい社会であることも大きいから。
ジェラシー:そうなんですよ。もちろん、「家事や育児をしないのは、クールではない」とは皆が思っている。でも、仕組みを整え、アウトソーシングも含めて家事・育児を分担するように仕向けるのは女性が主導になるケースが目立ちます。
川崎:どこまでを仕事とするか……それも考えたほうがいいかもしれません。結婚の先には生活があり、それは死ぬまで続いていくのだから。
(構成・執筆:前川亜紀)
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