ジェラシーくるみ×川崎貴子対談①

親や周りからの呪いを解く方法は? 期待をかけられ続けた「いい子」の末路【ジェラシーくるみ×川崎貴子】

親や周りからの呪いを解く方法は? 期待をかけられ続けた「いい子」の末路【ジェラシーくるみ×川崎貴子】

キャリア、資格、貯金、語学習得……これらは自分が努力をすれば、なんとか結果は出てくるもの。ノウハウも「正解」もあるので、途中で苦しくとも立ち上がりゴールに向かって歩く気力も湧いてくる。でも恋愛や結婚となると、どうしていいかわからない。セオリーどおりにするほど、自分の幸せが遠のいたり、自分の幸せを追求すると、迷宮に入り込んだり……気づけば「こんなはずじゃなかった」と不安と後悔に押しつぶされそうになる人も増加中。

ここでは、正解がない時代に、人生の迷路にハマっている人のために、東大卒の恋愛コラムニスト・ジェラシーくるみさんと、人生のプロ・川崎貴子さんが道案内していきます。苦しくて、悲しくて、不安で、どうにもならない人に効く“読む薬”です。

ジェラシーくるみさん(左)と川崎貴子さん

正解がないからこそ、迷いが増えている

川崎貴子さん(以下、川崎):ジェラシーくるみさんのツイートやコラム、書籍『恋愛の方程式って東大入試よりムズい』(主婦の友社)、『そろそろいい歳というけれど』(同)を拝読しました。どれも現代女性が抱える苦しさを鋭く指摘し、原因を分析して、相手を肯定している。「わかる、そうだよね」と共感の嵐でした。

ジェラシーくるみ(以下・ジェラシー):ありがとうございます。同世代の女性たちと話していると、選択肢が多いからこその苦しみに気づくことも多いです。

川崎:個人より世間体が優先されていた時代は、結婚して子どもがいればOKでしたが、今は働き方、生き方が選べるように。世間体から解放されたのはいいですが、世の中の根底の部分は変わっていないと感じます。
かつてのように「30歳までに結婚しなさいよ」「35歳までに産んどきなさい」とは、親戚はもちろん親ぐらいしか言わない時代。正解がないからこそ、迷いが増えてきます。

ジェラシー:選択肢は増えたとはいえ、それほど人の価値観が変わっているとも思えないんです。やはり、異性同士の結婚を求める人が圧倒的マジョリティーですし。

川崎:そうなんですよね。世間が変わっても個の価値観はあまり変わっていない。20年近く婚活相談を続けているのですが、結婚相手に望む条件をストレートに口に出す人は少なくなったようにも感じます。かつて女性は「高学歴・高収入・安定した企業に勤めている男性がいいです」と言い、男性は「若くてかわいい女性がいい」と言っていました。でも、実はその価値観もあまり変わっていないんじゃないかと思うんです。

ジェラシー:それはありますね。元カレよりも、友達の結婚相手よりも好条件の相手と結婚したい。でも、表に出したらダメなことはみんながわかっている。

川崎:結局それを隠したまま婚活を続け、半年後にやっと「やっぱり違う」と気づくんです。これを繰り返していると時間のロスも多いし、不安も募りますよね。

ジェラシー:モヤモヤの正体がなんだかわからないまま、不安の日々を過ごす。

川崎:ジェラシーさんの最新刊のキャッチコピー「人生の進捗がないのは私だけ? 25歳を過ぎたあたりから言葉にできない不安や焦りに悩まされ、年中無休でモヤモヤするアレ」という一文は、まさに20代後半の女性の状態を明確に言い当てていると感じました。全員がそうではないことはわかりますが、男性の中にそういう人は少ない。やはりそこには性差があると感じます。

ジェラシー:そうですね、男性よりも女性のほうが周りとの差を感じとりやすい気がします。親しい友達が結婚し、子どもが産まれるなど、ライフステージが変わるたびに、「こちら側」と「あちら側」という境界線ができ、住む世界が変わってしまうようにも感じてしまい、モヤモヤや焦燥感はますます色濃くなっていく。

川崎:苦しさが伝わってきますね。相談者さんの中には、仕事ができて、人間関係も趣味も充実している人も多いです。そういう女性が「将来への漠然とした不安があり、自信がない」と言う理由が改めてわかりました。

自分の意見が言えないのはなぜ?「いい子」の末路

川崎:加えて、結婚をするべきか、仕事を頑張るべきか、「自分が何をすればいいのか、何をしたいのかわからない」という人も多いんですよ。こういう状況に置かれる人の共通点はとっても「いい子」なんです。親や社会の期待に応えて、結果や正解を出し続けてきた人たちです。こういう人が、やりたいことや願望に気づくにはどうすればいいですか?

ジェラシー:まずは、自分の「ほしいもの」を知り、認め、正直に意見を言うことが大切だと思います。多くのいい子は察しがよく、発言した先の3手先が読めてしまう。だから「私が我慢すればこの場は丸く収まる」と何も言わずに状況を受け入れてしまうんです。

川崎:そうですよね。本来ならば怒らなくてはいけないところを、グッと我慢してしまったり、空気を読んでしまったり。それを繰り返すうちに、自分の進む方向性がわからなくなってしまう。パワハラ被害にあったり、モラハラな恋人遭遇率もおのずと高くなりますよね。

ジェラシー:本当は怒りたいのに、それができない。「怒りのスイッチ」の場所がわからなくなってしまうんです。

川崎:「怒る」ってとても大切なことですよね。『魔女のサバト』でも受講生の方に、かつて怒る練習をしてもらっていました。営業のロープレのように、「ハア?」とか「今なんて言ったの?」など、声に出してもらうんです。

ジェラシー:それは私も相談者さんに伝えています。「あなたの友達や妹が、今のあなたと同じ状況になっていたら、どうする?」と想像してもらうのです。すると「怒る」「やめなさいと言う」と返事がくる。そこで、自分が置かれている状況に初めて気づくのです。どんな人に対しても、「私のことをナメてるんじゃねーぞ」という気持ちを持っていないと、自分の道を見失う。

川崎:それはありますね。結婚にリーチがかかっているときに彼の言いなりになっていたら、肝心の彼が別の女性と結婚してしまったりとか。「言いたいことを我慢する」という病巣は、学校や家庭での教育の影響、育った家庭での立場も大きいと思います。例えば長男・長女のように「きょうだいの中でいちばん大きいんだから我慢しなさい」と言われ続けて育った人の多くに、怒りのスイッチは消えており、怒りの導火線も長かったりします。特に長女はその傾向がありますね。幼いころから“第二の母”のような扱いを受け、親から我慢させられ、自分の夢をつぶされ、親の夢を背負わされ……。

ジェラシー:自分の幸せを他人に譲ったり、世間体を優先させたり、身を引いてしまったり。

川崎:親との仲が密接ゆえに、遠慮がない親からの言葉に傷ついている人も多いです。ある人は、とてもスタイルがいいのに、「私は太っているからみっともない」と言い続けるんです。理由を聞いたら、幼いころに母親から肥満をくりかえし心配されたからだとか。他にも、「私はかわいくない」「ワガママだから結婚は無理」「理系の勉強は向いていない」など、自分にバイアスをかけてしまう。加えて、親から「親のいうことは聞きなさい」「親の面倒をみなさい」「女の子なんだから家事をしなさい」などと言われ、大人になってからも親にいいように使われてしまっているケースもあります。

ジェラシー:自分が何をしたいかわからなくなってしまう呪いですね。

自分にかけられた呪いを解く方法は?

川崎:その呪いはどのように解けばいいのでしょうか。

ジェラシー:私は「その年齢だった親」のことを考えます。私が幼いころの親の年齢は20代後半~30代前半です。その世代の人って、整理されてないものがごちゃごちゃに詰め込まれてるような状態だと推測できます。そこに初めての子育ての戸惑いが加わり、仕事も駆け出し状態で、余裕がないままタスクに追われていた。だからこそ、子どもに強く当たってしまったのではないかと想像するのです。

川崎:なるほど! 親も子育て期はキャパシティーを超えている。だから、子どもが親の言いなりであることを求めてしまう……現在の自分から当時の親を観察するとわかることは多々ありますね。親もひとりの揺れ動く未熟な人間であるという……。許す許さないは別で、ね。

ジェラシー:子ども時代は、親は圧倒的な存在で、万能とも思っていたから、発言の影響力は大きかった。しかしそうではなく、親も一人の人間で、今の自分と同じように幼く、頼りない人だったのだと思うと、呪いも徐々に溶けていくと思うんです。

川崎:親との関係も、自分の状態もフラットにしていくきっかけが見えますね。長年、重ねてきた感情が、一気に消えることはありませんが、こじれた感情をほどく方法はわかってきます。フラットに見るという行動は、「親と葛藤がなく、親離れができない子」にも有効かも。最近、良い意味でも悪い意味でも親と親密な人が増えているようにも感じます。

ジェラシー:かつては「マザコン」と揶揄(やゆ)されていた密接な関係……今、それを指摘するのはクールではないという流れはあります。家族や親子で旅行をしたり、子どもの恋人を交えてバーベキューをしたり、買い物をしたり。 親子が仲が良いのはいいことじゃないかと。

川崎:仲が良ければそれだけ、子どもに対する親の影響力は大きくなりますから。想像している以上に支配力も発揮できますから。また、子どもは親の潜在的な望みを察知して、そのどおりに行動してしまうところがあります。その状態のまま恋愛をしてしまうと、なかなかうまくいきません。だって親は自分を集中的に見てくれるわけですから。。

ジェラシー:独立することは大切です。そこに自分で気づかなくてはなりません。親は親、私は私と線引きをして「いい子」を脱出しないと。

川崎:いい子の多くは恋愛が下手。次回はそういう人のための体質改善方法を話していきたいと思います。

(構成・執筆:前川亜紀)

★お知らせ

魔女のサバトによるイベント「結婚のプロが教える『結婚までの最短ルート』」が開催されます。
詳しくはHPをご覧ください。
8/19(土) 18:00〜20:00 都内開催
8/20(日) 14:00〜16:00 オンライン開催

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