オンラインサロン「魔女のサバト」を主宰する、トイアンナさん、金澤悦子さん、川崎貴子さん「結婚しなくても幸せになれる時代」の恋愛や結婚について考える当連載。
第2回目のゲストは、恋愛カウンセラー・見知らぬミシルさん。「クズ男」という概念を作り、「フォローすれば自己肯定感が上がる」と人気急上昇。川崎さんは婚活のプロとして恋愛がうまくいかない女性に向き合ってきました。そんな2人が「恋愛と執着」をテーマに語りつくしました。全3回。

見知らぬミシルさん(左)と川崎貴子さん
恋愛がうまくいかないのは…相手への心配?
川崎貴子さん(以下、川崎):これまでのお話を通して、執着の呪縛から逃れるためには、自分の基準での幸せを知り、何らかの疑問が生じたら質問することだとわかりました。しかし、いずれも問題が連鎖しており、渦中にいる人は脱出しにくいようにも思いました。【2回目】の最後に、「不安や心配は相手との関係に悪い影響を及ぼす」とおっしゃっていましたね。
見知らぬミシルさん(以下、ミシル):恋愛において、すれ違いは心配や不安から起こることが多いんです。心配というのは、相手を信じていないことで生まれる。僕に相談する方でも、相手に対して不安を持っている人は女性が多いです。しかし、男性は女性からの心配を「信用されていない」と受け取ってしまう傾向が強い。恋愛において、男性が求めているのは信頼です。それなのに、彼女は心配をし続ける。信頼されたいのに、心配をされるのですから、どうしてもすれ違いは起こってしまいます。
川崎:ああ……わかります。LINEをしてもぜんぜん既読にならないからと、彼に嵐のように電話をかけてしまう。朝、彼は目覚めて3桁以上の着信履歴を見て戦慄する……という例はいくらでも出てきます。彼にしてみれば、ただ、酔っぱらって寝ていただけなのに、その着信に恐れをなして、距離を置かれ、別れてしまったという例はたくさんあります。
ミシル:考えすぎた結果、そうなってしまうんでしょうね。
川崎:いわば、この妄想ともいうべきものを、取り払うにはどうしたらいいのかなと思うんです。でもそういう行動をしてしまう人がすべてに依存傾向があるかというと、そうではないんです。彼女たちは、仕事においてはリアリストで、常に客観的かつ論理的。冷静に物事を分析できるのに、恋愛となると心配と妄想が優先されてしまう。
ミシル:キャリアも積んで、結果も残しているのに。仕事ができて恋愛が全然できない人は多いです。
川崎:そうなんです。仕事では聡明なのに、恋愛となると、恋人だったらこうしてくれる、結婚するならこれは絶対にやってくれるだろうという、謎のストーリーが優先されてしまうんです。例えば、「ここで私は泣いている。私のことを愛しているなら追いかけてくれるだろう……」という、少女マンガ的な展開を相手に期待してしまったり。。
ミシル:それは仕事で求められる思考回路と、恋愛に必要な頭の使い方が違うからだと思っています。やはり仕事は明確な目的があり、そこに向かって手段を考えて実行していきます。一方、恋愛は目的もかなりあいまいで、手段だって人によって違う。それを 2人で決めていくみたいな感じだから、わからなくなってしまうんでしょうね。
川崎:以前、結婚を希望する男性100人以上に、結婚相手に譲れない条件を聞くと、その9割が「何か問題が起こったときに話し合いができる女性」と異口同音に語られたことがあります。多くの男性がこれまで交際、もしくは結婚していた女性に、ある日突然いきなりキレられて、意味もわからず感情的になられて終わったという経験を持っているんです。
ま、女性側からすれば意味はあるんですけどね。いきなり、は合ってると思います。クレームをため込む人は多いから。
ミシル:問題があったら話し合って2人で解決したい。それなのに、感情的に当たられてしまう。
川崎:女性側からすればそれぐらい察してほしいと思うんですよ。でも「私のことを愛しているならわかるでしょ!」「彼氏なんだから当然でしょ」という思い込み……もしくは恋愛ファンタジーが優先されてしまう。アサーティブにその都度伝えなければ相手には伝わらないし、質問がなければ彼の行動の本当の理由は出てきません。結果、2人の問題も話し合わなければ解決に向かわない。そもそもまったくの他人同士ですから。「恋人(夫)なんだからわかってほしい」と思う意識はなんとか払拭していきたいとは思っています。
ミシル:相手と自分の価値観は同じととらえてしまうところはあるとは思います。それに、付き合う前、結婚前にコミュニケーションが圧倒的に不足してると感じてしまう。幻想を抱いたまま先に進めても、そこから先が難しくなる。彼氏になったらこうしてくれるとか、結婚したらこうしてくれるというような期待が実現するとは限らない。だからこそ、相手を知らなければならないのですが、それをしないまま、すぐに付き合ってしまうことも多いです。
川崎:あ~~~、とてもよくわかる。そもそも自分のことを知らないのに、相手を知るのは難しい。
処方箋は「意味がない趣味」を楽しむこと
ミシル:じゃあ、つい相手への心配や妄想で頭がいっぱいになってしまう人がどうすればいいかと言うと、僕は、意味がなさそうな趣味を楽しむといいと思うんですよ。
川崎:意味がなさそうな趣味というと?
ミシル:例えば散歩とか温泉に入るとか……もちろんそれらは、突き詰めていけば、意味もメリットもたくさんあるんですけれど。なんというか……その恋愛に悩んじゃう人の共通点は、いろんなことに対する、メリットや目的を見いだして、白黒はっきりつけるような思考をしてしまいがちなんです。この思考から解放されるには、意味がない趣味をすることが大切だと思っています。
川崎:なるほど、【1回目】で、SNSから解放されるために、何もしない静寂の時間が必要だとお話しされていましたが、意味のない趣味はそこにもつながっていますね。
ミシル:そうなんです。他にもウオーキングとかランニングとか、頭を使わない有酸素運動的なことがいいと思います。何も考えずに単純な動きをしていると、自分のことを見つめ直せる機会にもつながっていると感じます。
川崎:たくさんの酸素を取り込み、脳もスッキリしますしね。それに、履歴が数値で残るのもいい。メリットを考えてはいけないのですが、実績を積み上げることは、自己肯定感を上げることにも役立ちます。ダイエットをして、自分の幸せに気付いた人も多いです。
ミシル:日々、変化がわかれば、毎日楽しいという気持ちにもなりますしね。
川崎:幸せそうに生きていればおのずと、「この人と一緒に生きたら幸せになれそう」と相手にも思われますから。
ミシル:そうなんですよね。執着ではなく、健全な愛着心がある人を持ってる人たちは、似た者同士で結びつきやすく、健全に好きな状態を維持できる傾向にあります。
川崎:こういう趣味のつながりはいいですよね。やはり、共通の体験をすると、質問をする機会も多くなり、絆だって強くなりますから。また、趣味を通じて、その人の優しさ、寄り添い方とか見えてきますし。雨が降ってくる、忘れ物をするなど予期せぬアクシデントがあったときに、どういう対応をするかだってわかります。行動に宿る真理のようなものも伝わってきます。それは言葉以上に多くを語る。ほかに、人見知りの人、体を動かすことが苦手な人のためにおすすめの行動はありますか?
ミシル:僕もいろいろ考えてるんですけど。なんか自分を表現することはいいかなって思いますね。映画やドラマを観るなど、受動的なことではなく、自分で自分を表現する。文章、絵、ダンス……自分の表現をすれば、見せ方もだんだんわかってきますし、個性みたいのもつかめてきます。アピールもしやすくなるでしょう。今は発信の場も多いから、自分なりの表現を見つけてもいい。
「私はこうしてほしい」健全な関係を築くために必要なこと
川崎:女性たちと接してきて、本当に彼女たちは、自分のことを知らなすぎるんです。それがいつもとてももったいないと思うことです。
ミシル:自分を知ることは、自分が何を求めてるのかを知ることにもつながります。これがコミュニケーションの根っこの部分だと思うのです。だって、「自分がしてほしいこと」「してほしくないこと」は、それがわかっていないと相手に伝えられません。終わった後に、「ホントはこうしてほしかった」と言ったら、衝突になってしまう。自分のことがわかっていれば、「こういうときは、こうしてほしい」と伝えられると思うんです。
川崎:自分のことがわからないから相手主導になる。だから、相手が嫌なことをしたら、そのことを我慢して飲み込む。ずーっと我慢して、我慢して(と、10回くらい繰り返す)、「もう限界」となったところで爆発するんです。そのきっかけが、コップを洗っていなかった程度で大爆発。男性は何が起きたかわからず、ポカーンとしてしまう。
ミシル:「使ったコップは洗ってね」と言えばいいのに、言わないんですよね。
川崎:はい。それに加えて、空気を読みすぎるところもあると思うんです。「今、リラックスしてるのに、コップを洗ってとはいえない」とかね。これは、両親の夫婦関係が影響していることが多々あります。「俺に家事をさせるのか!」「働いて帰ってきて、野球を見ているんだぞ!」と怒鳴る父親を見て育つと、男はそういうものだと思い込んでしまっている。
ミシル:ありますね。ちょっと主語が「日本の男性」と大きいのですが、あえて言わせていただくと、日本の男性は意見されることをとても嫌う。
川崎:わかります。あと、はっきり言われることが嫌い。周囲に欧米の女性と結婚した人が何人かいるのですが、彼らは「はっきり言われるのも、けっこうきついわ」とも言うんですよ。
ミシル:もっと察してほしい……的な。
川崎:そう。今度は「察してほしいんかい!」的な(笑)。欧米の女性たちは、愛しているから、ルールを守ろうということではっきり言うのだと思うのですが。そういうことを伝えないと、健全な関係は築けないと思うんです。
恋愛でも親子関係でも大事なこと
ウートピ編集部:ちょっといいでしょうか? それでも、執着から逃れられない恋愛に陥ってしまう人は多いです。なかなか簡単に執着は手放せないとも思うんです。
川崎:相手が自分に執着していることを心地よいと感じる「回避型」という男性のタイプがいます。この人たちは、恋愛関係になるまでは、相手のことをとても好きになり、アプローチも熱心にするんですが、関係が深まるにつれ、冷めていくんです。また、この回避型の男性は、不安になりやすい女性を見つけるのがうまい。不安はやがて執着になりますから、女性はとても苦しむことになります。なのでまずはこの「回避型」に捕まらないこと。
ミシル:このタイプの男性は多いですね。マッチングアプリにもたくさんいると思います。
川崎:そうなんですよね。彼らは数年単位の長期の恋愛ができないから3、4カ月くらいで市場に戻ってくるんですよ。2人の関係がもう少しで親密になるというタイミングで逃げる。だから、女性は病むんです。もともと、不安も執着もそれほど感じない人でも、そういう男性にとらわれてしまう。そういう男性の見極め方はあり、それは質問することなんです。
ミシル:そうなんですよね。回避型の男性は、自分のことがよく理解できていない。だから、深い質問をされると答えられないんですよ。その時の気分や感情の揺らぎで行動していることが多いですから。一貫性がなかったり、矛盾が出てきたりするんです。
川崎:やっぱり質問力って大事ですよね。でも、なんでミシルさんはこんなに女性たちの落ちる闇がわかるんですか?
ミシル:なんででしょうね……別に恋愛経験がすごいとか、例えばホストをやっててすごく女性の方と触れ合っているなどの経験はまったくないんです。基本的には教育の考え方がベースにあり、それを理論的に組み上げているようなところはあります。そして、わからないからこそ知りたいという欲求はあります。気付けば探究と思索を続けているという感じでしょうか。
川崎:今回は、親子の愛着と執着もひとつのテーマでした。これは個人的な質問なんですが、親はどのあたりから、手を離し、どういうスタンスで見守ればいいのでしょうか。
ミシル:うーん、それについては、僕は最初からそれなりに子供に任せていいと思っています。小学1年生ぐらいから、自分で選んで、行動することです。恋愛に苦しむ人の特徴は、自己決定力がない傾向があります。幼少期から何事も親や周囲の人が決め、そのレールにずっと乗っていると、決めることができなくなってしまうんですよ。ある程度、親が決めなくてはならないことも多いのですが、その子にとって大事なことはその子に決めさせることが大切だとは感じています。
川崎:自分で決めないから、自己肯定感が低いまま、でも結果を出してきたからプライドだけが高くなる、というねじれのような状態になってしまう。これが、恋愛に限らず、多くの人間関係の足を引っ張る。
ミシル:テストの点数でほめられるとか、いい学校に入って肯定されるとかそうじゃなくて、もっと無条件に、「あなたはあなたのままでいいんだよ」という環境が大切なんですよ。
川崎:そうですよね。その気持ちがあれば、恋愛で相手に献身したり、がんばって我慢をしたりもしなくなる。それに、学歴や年収などの条件で相手を判断しなくなることにもつながっていますね。今日は恋愛の話から教育まで話が広がり、襟を正したような気持ちになりました。ありがとうございました。今度は別のテーマでもお話しをしたいです。
ミシル:ぜひ! 僕も楽しかったです。ありがとうございました。
(構成・執筆:前川亜紀)