「本当にこればかりやってていいの?」“氷結の母”が30代半ばで抱いた不安の正体

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「本当にこればかりやってていいの?」“氷結の母”が30代半ばで抱いた不安の正体

29歳のときに「氷結®」*の開発に関わって以来、8年間にわたって同商品の育成に関わったというキリンの佐野環さん(47)。
*「氷結®」はキリンの登録商標です。

“氷結の母”として充実した日々を送っていたものの、30代半ばで「このままではアウトプットの質が落ちるのではないか?」という危機感を抱き、38歳のときにマサチューセッツ工科大学(MIT)でMBAを取得するために渡米。その後、オーストラリアの会社で3年間働きキャリアを積みます。

「仕事はこなせるようになってきたけれど、このままでいいのだろうか?」「気がついたらインプットがなくアウトプットばかり」と焦ったり不安になったりする気持ちは“中堅”と呼ばれる世代には「あるある」なのではないでしょうか? 佐野さんに30代でぶつかった壁について伺いました。

【第1回】「働いている私」が飲んでも恥ずかしくないお酒を…

仕事の自分ルールは「とにかくポジティブであれ」

——前回は佐野さんの営業時代や「氷結」の開発担当になった頃のお話を伺いました。佐野さんが決めている自分ルールはありますか?

佐野:何でしょう? そうですね、とにかく楽観的なんです。営業時代も酒屋さんにキツイことを言われて一瞬へこむのですが、「直前に何か嫌なことがあったのかな?」って考えたりして。「ポジ転が早い」って言われます。すごく嫌なことがあっても、ポジ転させることが、おそらく自分のストレス回避方法だと思います。

——ポジティブに考えることがストレス回避になっているなんていいですね!

佐野:おそらくアメリカで育ったせいだと思います。小学生のときアメリカの学校で褒められて育ったんです。

例えば、背が小さくて自分がとてもいやでも「小さくて可愛いね」っておせじでもポジ転してくれるんです。天然パーマの髪も「クルクルしてて可愛いね。お人形さんみたいだね」って。アメリカだと下手なこととか、自分が嫌だなって思うことを、違う角度から「いいね!」と言ってくれる文化があるのだと思います。

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「ほかの誰が君の親友になるんだ?」ハッとした言葉

——それは見習いたい部分です。日本だと謙遜を美徳とする文化がまだまだ根強いので自己肯定感が育まれにくいのかなと感じることもあります。

佐野:それでもさすがの私もすごく落ち込んだときがあったんです。オーストラリアのLION社という会社に出向していたときなのですが、会議で「あなたなんでこの席に座ってるの?」と言われたりして、自分が思い通りのパフォーマンスをあげられず、「私は何やってるんだろう?」とどん底のときがあったんです。

そんなときにたまたま飛行機で有名企業のCTOをやっているインド人の男性と隣になって「私はできてないことばかり、こんなことがあって……」と愚痴をこぼしたら、「君が君の親友でなかったら、他の誰が親友になるんだ」ってピシャリと言われたんです。そのときにハッと気づきました。

確かに「私なんか」と言ってばかりいる人と友だちになりたいなんて思わないですよね。

要は、自分が自分を甘やかして心地良いように言い訳をしていて、本当は自分で自分を貶めているだけなんだと気づかされました。

——「自分なんて」というのはエクスキューズというか……。

佐野:そうそう。ただの言い訳なんですよね。どうせできないんだからって自分を低く見積もっているにすぎない。目標を下げて心地良くさせてるんだけど、結局は自分をすごく傷つけてるだけなんですよね。そう言ってくださった彼もすごく苦労して世界のトップレベルまで上り詰めた方だったので、「こんな話を聞けるなんてすごくラッキーだな」ってまた楽観的な自分に戻ったのですが(笑)。

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「こればかりやっていていいの?」30代半ばで抱いた不安

——佐野さんのキャリアのお話に戻るのですが、氷結の開発に8年間関わったあと、アメリカに渡ったのですね。それはどんな動機があったのですか?

佐野:氷結を“20人以上”も産んでると、アウトプットばっかりになっちゃうなという意識があったんです。8年間、ずっとマーケティングで開発をして年間3~4品出し続けていると、だんだんアイディアが枯渇していく。

自分にインプットが足りなくて、アウトプットの質が下がっているんじゃないかとだんだん危機感を持ち始めたんです。しかも、発売当初からずっとやっているから、コツも分かってるので、当然仕事を一人で要領よくできるようになるんですけれど、そうすると、それだけをやるのが得意になってしまって、あまり他のことをできる人間になってないと思ったんです。

——ある程度、経験を積んできた“中堅”と呼ばれる世代にはすごく思い当たることだと思います。誰も何も言ってくれないし、孤独を感じることもあります。

佐野:私も35、36歳くらいからだんだん迷いだしましたね。「氷結」に関わるのは幸せだし、新入社員の子はキラキラした目で「商品開発やりたいです」って来るんだけれども、果たして本当にこのままでいいんだろうか? と思い始めました。

仕事をうまくこなせるようにはなったけれど、10年後、20年後を考えるとやっぱり社会に参画して、自分で稼いでいたい。それは少額であっても構わないけれど、社会の中で何か役に立つ人間でいたいと思ったときに、「本当にこればっかりやっていていいのかな?」と悩んだ末に改めて勉強したいと思ったんです。

「今しかない、ラストチャンスだ」と思って、結婚か勉強かとなったときに「結婚は後からでもできるけど勉強は今しかない」と思ったんです。

留学してMBAを習得したり、世界レベルの人たちと一緒に戦っていくためのスキルを身に付けるのであれば、40代を超えたら自分がしんどくなったり守りに入っちゃうかもしれない、と思ったので、最後、自分に挑戦を課せるのは30代後半のこの5年間だけだと思って鉄腕アトムのようにシュボーッと渡米しました。

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——MIT(マサチューセッツ工科大学)ではどんなことを勉強したのですか?

佐野:1年制のコースで経営学を学びました。とてもハードだったのですが、もともと楽観的なので、「重たいビールをこれだけ積んできたんだから」とよくわからない理由ですが自分を鼓舞して頑張りました。帰ってきてからは先ほど出てきたオーストラリアのLION社という会社に出向して商品開発に携わりました。

現地でも最初は「オーストラリア人の仕事を奪う人」「この人は英語も下手でオーストラリアでは仕事ができない」と思われて、落ち込んだ時期もあったのですが、3年たったときには「もうちょっといてくれ」とおっしゃっていただいてすごく嬉しかったですね。やっと認めてもらったって思いました。

——オーストラリアで働いてみて学んだことはどんなことでしたか?

佐野:働く上で、女性でも男性でも甘えがないというのが一番の収穫でしたね。結婚するのも、子どもをカップルで育てるのも当たり前だし、時短勤務もどうぞご自由にという感じなのですが、成果を上げないとクビだよってすごくわかりやすいんです。

オーストラリアで仕事をしていると、最初は厳しいんです。給料に見合ったアウトプットが出てないと、「この人は使えない」とすぐに言われるので厳しいのですが、ちゃんと結果さえ出せばどんな人でもウェルカムなんです。お母さんでも独身女性でも男性でも介護していても。

自分が働きたいポジションも手を挙げて、認められたらそのポジションに就けるので、基本的にあまり不満がないし、不満があればみんなさっさと辞めていくんです。日本だと不満があっても働き続けるけれど、それがないんです。

——それはキッパリしていていいですね。

佐野:オーストラリアはみんな自分で勝ち取った仕事という意識があるので絶対に手放さないんです。出産や子育てしていようと、その仕事のプロとして絶対に手放さない。何かをエクスキューズにしないスッキリとした気持ちの良い風土があったのが一番の発見でしたね。

※第3回は2月4日(月)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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