高齢者だけじゃない! ヒートショックが起こる理由と予防策【臨床内科専門医が教える】

高齢者だけじゃない! ヒートショックが起こる理由と予防策【臨床内科専門医が教える】

寒い季節になると、「ヒートショック」によるお風呂場での失神や急死といった健康被害のニュースを耳にするようになります。

臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「ヒートショックは高齢者に多いという報告がありますが、それは死亡者数のことです。実はどの世代でも寒暖差による体調の変化は起こっています。気温がぐっと下がる日は、入浴やトイレ、寒い場所への外出には誰しも注意が必要です」とのことです。

そこでヒートショックの実情や予防策など、詳しいお話しを聞いてみました。

入浴中、トイレ、旅先で失神や急死するケースも

はじめに正木医師は、「ヒートショック」の症状と事例についてこう説明をします。

ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移ったときに、気温の変化で血圧が大きく上下するために失神や意識混濁、不整脈、心臓発作、脳卒中など重篤な病気を発症する、また急死することを言います。

ひとりで入浴中に失神してお風呂でおぼれて死亡する、深夜のトイレで倒れるケースは後を絶たず、また、旅先の露天風呂で昏倒する例もあります」

東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、2011年の1年間に17,000人もの人がヒートショック関連で亡くなったと推計されています。同年の交通事故による死亡者数・4,600人の約3.6倍にのぼります。

血圧は寒い脱衣所で急上昇し、浴槽で急降下する

その数字について正木医師は、「医師の間でも、驚くべき数字だと話し合っています。ただ、死亡者数だけが注目されがちですが、重症、軽症の例ははかり知れないでしょう。日ごろ仕事で疲れている世代はとくに注意が必要と言えます」と話し、冬の寒暖差による健康への日常的な影響について、次のように伝えます。

「寒暖差が激しい日本の冬の生活では、若い世代でも、入浴中にめまいや立ちくらみの経験がある人は多いでしょう。ほかの病気でない場合、いわゆる『湯あたり』や『のぼせ』は、ヒートショックの軽症、あるいはサインの可能性があります。

暖房が効いた温かい部屋から寒い脱衣所に移動して服を脱いだとき、体の表面温度は急降下します。肌を触ると冷たくてぶるっと震えがくるでしょう。そのとき、血管はぎゅっと収縮して血圧は一気に上昇しています。

次に、熱いお湯をはった浴槽につかったときは、血管が拡張し、血圧は急に下がります。

この短時間での血圧の急上昇と急降下が原因で、めまいやふらつき、吐き気などで気分が悪くなる、また知らないうちに血栓(けっせん。血のかたまり)ができる、血管が詰まるなどするわけです。失神までいかずとも、頻発すると動脈硬化などの原因となって危険です。

ビジネスパーソンは、睡眠不足やストレスで疲れているときに、残業や飲み会後の寒い深夜の入浴はできるだけ避けてください」

自分でできるヒートショックの予防策15

「うちのバスルームも脱衣場も浴室も寒い。ひとり暮らしだし心配」という人も多いはずです。ここで正木医師に、自分でできるヒートショックの予防策について教えてもらいました。

(1)入浴は、食後1時間以上おいてから
食後1時間以内は血圧が下がっています。食後すぐの入浴は避けてください。

(2)入浴は夕食前、日没前に。深夜は避ける
冬は日が沈むと急に気温が下がり、とくに脱衣所や浴室はかなり冷えてきます。また、自律神経の作用で、ヒトの生理機能は14時~16時ごろが高いと考えられるため、休日など可能な限り、夜間よりも夕食前の寒暖差が少ないこの時間帯に入浴するほうが体は気温差に適応しやすいでしょう。もっとも気温が低い深夜の入浴は避けましょう。

(3)入浴前後には白湯を飲む
血管が収縮したときや発汗したときの血液ドロドロを少しでも抑えるために、また、入浴後は水分補給のために、いずれもコップ1・2杯の白湯を飲みましょう。

(4)飲酒後は入浴しない
飲酒をすると血圧が下がります。そのうえ、入浴すると血液循環が激しくなってさらに酔いがまわります。またアルコールによる体温上昇と入浴の相乗で体温の調節がきかなくなること、アルコールと発汗の相乗で脱水症状が起こること、酔いがまわって体の異変を自覚しにくいことなどで、失神して危険が高まる人は多いのです。「新年会後に酔いをさまそうと、サウナや日帰り湯に寄って倒れた」という例もあります。「風呂は飲んだら入るな。入るなら飲むな」を実践しましょう。

(5)部屋と脱衣所、浴室、トイレの温度差を少なくする
冷えやすい脱衣所、浴室、トイレ、廊下などを暖房で温めておきましょう。窓が近くてすきま風が入るなら、補修をする、内窓を設置するなどしましょう。

(6)入浴前に足湯をする
洋服を着たまま5・6分前後の足湯をすると全身がゆっくりと温まります。その後に入浴すると、体温や血圧の急な変動を避けることができるでしょう。

(7)浴槽にはるお湯の温度設定は41度までに
高温のお湯につかると血圧が急降下し、お湯から出ると急上昇します。40度前後でつかりはじめ、ぬるい場合は追い炊きやお湯を足して徐々に上げていきましょう。顔が赤くなる、熱いなと思ったときは、心臓や血管に負担がかかっているので、そうならないようにお湯の温度を調整してください。また、床がタイルの場合は、マットやスノコを敷きましょう。

(8)シャワーでお湯をはる
浴槽にお湯をはるとき、最後の数分でも、シャワーで高い位置からお湯を出してはると、浴室全体が温まり、また湿度も高まります。もし忘れた場合は、入浴前に衣服を着たままでまず、浴室全体にシャワーをかけて温めましょう。

(9)衣服を脱ぐ・着るは、浴室内で行う
寒い脱衣所で服を脱ぐ、また湯上りに濡れた体のまま脱衣所に出ると気化熱で一気に体温が急降下、血圧が上がって危険です。衣服は、(7)の方法で暖めた浴室で脱いでから、さっと外へ放り出しましょう。また、バスタオルや下着は浴室の扉のすぐそばに置いておき、湯上り時はそのバスタオルをぱっと取って浴室内で全身を拭き、下着を着てから脱衣所へ出ましょう。こうしたちょっとした工夫で、血圧の急な変動を防ぐことができます。

(10)足先からかけ湯をしてから浴槽へ
いきなり浴槽にどぼんとつからずに、心臓から遠い足先、手、おなか、肩、背中へとかけ湯をしてお湯の温度に徐々に体をならしましょう。血圧の急な変動を防ぐためです。

(11)長湯をしない
熱いお湯に肩まで5分以上長くつかると、血圧が下がって心臓に負担がかかります。

(12)トイレでのいきみに注意
いきみが強いと血管がぎゅっと収縮して血圧が上がり、心臓に負担がかかります。また、排便後は血圧が下がります。可能なら暖房をつけたうえで、便座も暖房型にしましょう。

(13)寝るときはスリッパとはおる服を手元に置いておく 
夜中のトイレに裸足やパジャマだけで起きないようにしましょう。一気に体温が下がって血圧が上がるので危険です。必ず厚めのカーデガンなどをはおり、スリッパを履きましょう。

(14)廊下、玄関、ベランダに注意 
夜間から朝方の廊下、新聞を取りに行く玄関、洗濯物を干すベランダなども、思いのほか冷えています。ひと晩中、暖房を安全に設置して温めておきましょう。

(15)息を吐く
寒い場所に出る前や、頭がくらっとしたときなどは、腹式呼吸で、まず口や鼻からおなかをへこませながら息を吐きましょう。吸うときはさほど意識しなくても自然呼吸でいいでしょう。血圧の急な変化や気分を落ち着かせることに有用だと考えられます。

すべての指摘にハッとしました。入浴やトイレは日常なのでついこれらの注意を怠りがちです。ヒートショックの予防には、無意識のうちに起こっているこうした体の異変と、対策の情報を知っておくことがもっとも重要でしょう。さっそく職場や家族、親、祖父母らにも伝え、今日からすぐに実践したいものです。

(取材・文 品川緑 /ユンブル)

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