『私がオバさんになったよ』インタビュー第3回・止

“オバさんになる前”にやったほうがいいのは「コンプレックスのお焚き上げ」【ジェーン・スー】

“オバさんになる前”にやったほうがいいのは「コンプレックスのお焚き上げ」【ジェーン・スー】

コラムニストのジェーン・スーさんが、光浦靖子さんをはじめ、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さんら8人と、テーマは設定せずに語り尽くした対談集『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)が3月に発売されました。

「女はキャリアが得にならない」「えん罪お局」「若くもきれいでもない女たちが東京では楽しそうに生きてる」「役に立つことのために生きてるわけではない」「極悪人に石を投げない」など、片っ端からマーカーを引きたい言葉ばかり。

「『私がオバさんになったよ』と言われると、少しだけ心がざわつく人に届いてほしい」とつづるジェーンさんに3回にわたってお話を伺いました。

【第1回は…】他人の期待に応えすぎず、自分を裏切らないで生きていく
【第2回】怒られなくなる30代、成長しないことより怖いのは…

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コンプレックスのお焚き上げはやったほうがいい

——山内マリコさんとの対談での「特に若くも、特にきれいでもない女たちが東京では楽しそうに生きてるってことぐらいしか、私には見せられないかもしれないけど」という部分にグッときました。

そこで、お聞きしたいのが、特に若い頃は自分の足りていない部分やコンプレックスにばかり目がいってしまってなかなか抜け出せないことがあると思うのですが、自分を受け入れることについてアドバイスをいただきたいです。

ジェーン:自分のコンプレックスですか? 1回、徹底的に向き合うことじゃないですかね。ウジウジしているだけじゃ、絶対に解決しないから。

例えば、容姿のコンプレックスならば、徹底的に容姿を改善することをしてみる。メイクに、洋服にこだわるとか、徹底的に1回やってみる。それで「やった! ハッピー」になるのか、「めっちゃ疲れる。これもう嫌だ」になるのか、とにかく1回やりきることだと思います。

私も、“普通の女の子”といわれる像に自分が当てはまらないことにずっとコンプレックスがあったんです。今ももちろんありますけれど、30代前半で“普通のアラサー”に完全擬態したら、半年くらいで飽きちゃいましたね。着る服だったり、髪型だったり、ヘアメイクだったり、付き合う相手だったりというのをそっちに寄せてみたけど疲れちゃった。

その当時の写真を見ると怖いんですよ。全然自分じゃないみたいで。顔つきも違うし、「うわ、キモッ」って感じです。

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——1回やってみるんですね。

ジェーン:そうです。コンプレックスがあるってことは、つまり「私がこうだったらな」という理想があるってことじゃないですか。「親が金持ちだったら」を今からかなえるのは難しいけれど、「もう少し頭が良かったら」「もう少し痩せてたら」と自分に関することであれば、全部トライしてみればいいと思いますよ。

それまでの私は、集中して突き詰めてこなかったから、いつまでもウジウジ言ってたんだと思います。擬態してみて「これツラいわ」と思ってやめました。

——徹底的に向き合えば気も済みますよね。

ジェーン:気が済みます。コンプレックスのお焚き上げはやったほうがいいと思います。

食わず嫌いはやめる

——山内さんとの対談で「女の生きざまの可能性を見せることが自分の仕事」とおっしゃっていましたが、楽しく生きていくためのコツってありますか?

ジェーン:私の場合は、一生懸命やる以外のコツは見つけられなかったですね。人によって違うと思うんですけれど。私の場合は、とにかく一生懸命やることで楽しくなってきましたね。仕事でもなんでも。

——苦手なことでもとりあえずやってみるってことでしょうか?

ジェーン:食わず嫌いをやめるっていうのは、30代で絶対やったほうがいいですよ。それは『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)にも書いたんですけれど、「あんなのバカみたい」とか言ってるのは、だいたいコンプレックスの裏返しなので、さっき言ったように、1回徹底的に突き詰めてやってみるっていうのも手だと思います。

私の場合は、そういう30代を経て、いろいろやってみて、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)にも書いたけれど、「オーガニック食品はイデオロギーより普通に味が美味しいから好き」って軟着地をしました。まずいオーガニックもあるだろうけど、試したことで、うまいオーガニックは本当にうまいと気付けました。

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要領の良しあしは「能力」

——40代で大事なことは?

ジェーン:どっちかというと40代はクオリティかな。自分ができる限界のところまでちゃんと準備をするとか、そっちかな。書く仕事に関してはそうですね。

私の場合、効率がすごく悪いんですよ。頭のいい人って最短距離で目的地まで行けるし、優先順位がきちんとついてるので、優先順位が低いもののクオリティがそんなに高くなくても、大勢に影響がないってわかってるんですね。細かいところにこだわろうとそうでなかろうと、この範囲内だったら世間の評価は変わらないと知っている。

——“いい加減”みたいな……。

ジェーン:そうそう。ただ、仕事に関して私はそれができないし、やりたくないんですよね。ベッタリ隅から隅まで納得できる準備をしたり、確認をしたり、何度も直したりしたほうが、たとえそんなに評価に差がなかったとしても、自分が気持ち悪くないんですよ。

おかげさまで他の人より馬力はあるほうなので、たとえそれで一日つぶれたとしても、睡眠時間が短くなったとしても、私はそうしたい。そこは人それぞれで、そうしないといい結果が出ないわよ、とは言わないし思わない。要領の良しあしって、能力のあるなしというより能力の違いですよね。

——素質ってことですか?

ジェーン:いや、素質っていうより能力。性格とも言えるかな。要領の良い人の方が能力が高いように見えがちだけど、そうじゃなくて単に性格の違いだと思う。要領が悪い人って、要領の良いことをやると不安になるでしょう。何か見落としてるんじゃないかとか、手を抜いてるんじゃないかとか。

——「自分はラクしちゃったんじゃないか?」みたいな感じですか?

ジェーン:うーん、楽はいいんですけどね。楽はいいんですけど、楽したはずなのに「何か足りないんじゃないか?」と不安になる。結局、その不安を埋めるには、要領が悪いことをやるしかないんで、諦めたほうがいいなって私は思っています。

——インタビューも今回で最終回です。元号も代わり、新しい時代が来たという空気に満ちていますが、令和はどんな時代になってほしいですか? また、ウートピを読んでいる読者にメッセージをお願いしたいです。

ジェーン:時の流れを元号で考えてないのであんまりピンとこないのですが、個人的には自分にリミットをかけないようにしたいです。やりたいことをてらいなくやれる状態でいたい。

読者の皆さんには……何か言うのもおこがましいので、特にありません!!! フフフ。

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(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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