10月15日に公開された『劇場版 ルパンの娘』に出演する観月ありささん。本作は“Lの一族”として名を馳せる泥棒一家の悲喜こもごもをユーモラスに描いたTVドラマシリーズの続編で、とある架空の海外を舞台に王家の秘宝と一族の秘密にまつわる騒動が綴られます。
観月さんは、本作から登場する三雲玲としてキャスティング。「もう一人の“Lの一族”」として存在感を発揮しながら、深田恭子さん演じる主人公・三雲華と重要な関わりのあるキーマンを演じています。
観月さんに本作の舞台裏や、現在の仕事について思うことなどを語っていただきました。前後編の前編です。
ピッチピチの泥棒スーツを着たら世界観に入り込めた
──プロデューサーから直々にオファーされた、とお聞きしました。出演が決まったときのお気持ちを教えてください。
観月ありささん(以下、観月):私もいち視聴者としてテレビシリーズを楽しんでいたので、オファーを受けたときはうれしかったです。まさか、あのスーツを着ることになるとは思っていませんでしたが(笑)。
印象に残っているのは、玲が「60歳」と聞いた瞬間。「いよいよ私にも老け役が回ってきた!」とこれまでにない挑戦に、白髪にしたらいいかな、メイクを工夫すれば年齢を重ねたように見えるだろうか……とあれこれプランを練っていたのですが、撮影前に「年齢は意識しなくていい」ということになったんです。
——せっかく考えていたのに。
観月:よく考えたら、華の父を演じる渡部篤郎さんも、母親役の小沢真珠さんも、60代の設定ですが、わざと老けて見えるようなことはしていないんですよね。それで念のため「私も今の姿のままで大丈夫ですか?」と確認したところ、「はい、大丈夫です」と。でも安心できたのも一瞬。「玲も“Lの一族”なので、ボディスーツを着ていただきます」と言われてしまって。思わず「え、あのピッチピチですか!?」って(笑)。
──あのピッチピチ(笑)。“Lの一族”が泥棒として暗躍する時に着る例のスーツですね?
観月:そう、体のラインが出てしまうあの! でも、衣装をつくっていただき、恥ずかしながら泥棒スーツに身を包んだら自然と『ルパンの娘』の世界観に入れた気がしました。
──抜群のプロポーション、かっこいいなぁと思いながら拝見しました。泥棒スーツに袖を通すにあたって体づくりはされたのでしょうか?
観月:はい。日ごろのトレーニングに強化メニューを加えて、締めるところを締めました。撮影期間は、ご飯を食べていても「食べすぎたら入らなくなるかな……」と気になっちゃって。あのスーツが頭から離れないんですよ。(映画よりも撮影期間の長い)ドラマ版を四六時中あのスーツ姿で過ごした恭子ちゃんは本当に大変だったと思います。
“イッちゃってる”感じを出して欲しいと言われ…
──劇場版の台本を読んだご感想はいかがでしたか?
観月:コメディやミュージカルなど自由に楽しく表現されるドラマの魅力を反映しながら、劇場版だからできるスケール感もあって、映像化したらきっと面白いはずという直感がありました。今作では特に、ドラマのシーズン2最終回に残された「華は盗まれた娘」という謎に踏み込む展開もあって。
──その謎に深く関わっているのが、観月さん演じる三雲玲です。どういった役づくりをされたのでしょうか?
観月:ある事情から玲は自分の置かれた境遇に絶望し、人が変わったようになります。ようやく手にした小さな幸せを手放し、激しい気性にならざるを得なかった彼女の哀愁みたいなものを表に出したいと思って、現場の皆さんと一緒に試行錯誤しながら役をつくっていきました。とにかくインパクトが大切だよねって、キャラクターの打ち合わせをしっかりして。衣装合わせを含めたら、5〜6時間かかったと思います。イメージカラーがブルーなのですが、青を強くするか少し緑の要素を加えてみるか……どうしたらより映えるだろうかとスタッフのみなさんの細やかさが素晴らしくて。そのおかげで自然と「ルパンの娘」の世界観に入れた気がします。
──武内監督からはどのような演出を受けましたか?
観月:監督には「エキセントリックな役なので“イッちゃってる”感じを出して欲しい」とオーダーいただきました。登場シーンにインパクトを持たせたいから、と。作品を見ていただくと気付くと思うのですが、キャストの方々と視線を合わせてお芝居していないんですよね。役づくりのひとつとして、虚空を見つめて何かブツブツつぶやいていたり、会話の相手とも焦点を合わせないようにしているんです。
役が「定まった」と感じた瞬間
──三雲玲という女性を理解する上でヒントになった映画のシーンを挙げるとしたら?
観月:JOKERになるシーンですね。台本には玲が本当はどんな性格でなぜ変わってしまったのかが丁寧に描かれていたので、心情はもともと理解しやすかったのですが……実際に現場入りして変貌後のキャラクターが「定まった」瞬間でした。
──実際にご自身で演じたことでより深く理解した?
観月:はい。台本のト書きで「回想」としか書かれていなかった場面だったのですが、現場で殺陣の稽古を行ったんですよね。「ここまで激しくやるの?」と驚きながらも夢中で応じていたら、玲の狂気を体現できた気がして。それで、彼女の激しい一面を見せるときは「ここまで振り切ってしまっていいんだな」と実感することができました。ストンと腹に落ちた、といいますか。
──ダークサイドへ堕ちる前の穏やかさと狂気のギャップが大きければ大きいほど、玲の身に起きたことの悲しみが際立ちます。
観月:そうですね。玲には、穏やかな面と激しさが狂気に変わる瞬間があって、両極端な部分を演じ分ける必要がありました。演じるうえでは、穏やかな日々のほうに戸惑うことが多かったですね。「大丈夫かな?」と緊張もしつつ、求められているエキセントリックな役としてテンションMAXで飛び込みました。
*インタビュー後編は10月22日(木)公開予定です。
■映画情報
『劇場版 ルパンの娘』
©横関大/講談社 ©2021「劇場版 ルパンの娘」製作委員会
原作:横関 大『ルパンの娘』シリーズ(講談社文庫刊)
監督:武内英樹 脚本:徳永友一 音楽:Face 2 fAKE
製作:フジテレビジョン 制作プロダクション:シネバザール 配給:東映
(取材・文:岡山朋代、撮影:西田優太、編集:安次富陽子)