内山聖子さんインタビュー 第2回

20代の失敗と30代の失敗は何が変わった?【私、失敗ばかりなので】

20代の失敗と30代の失敗は何が変わった?【私、失敗ばかりなので】

「失敗が怖い」っていうけど、よく考えてみれば失敗ってなんだろう。そんなに取り返しのつかないものなのでしょうか——。

10月に『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)を上梓した、テレビ朝日でドラマのプロデューサーを務める内山聖子(うちやま・さとこ)さんに、失敗について聞くこの連載。第2回は「大人になってからの失敗」について教えていただきました。

内山さんの新刊『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)

内山さんの新刊『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)

30代は「失敗の質」が変わる時期

——失敗について振り返ってみると、30代に入って他人の失敗に振り回されることが増えてきたような気がします。「これって私のせいじゃないのに……」と思ってしまうというか。若い頃と今では、受け止めるべき「失敗」も違ってくるんでしょうか?

内山聖子さん(以下、内山):20代は「わかりやすい失敗」が大半ですよね。聞き逃しや送付ミス、良かれと思ってやったことが裏目に出たり、Aのつもりで作ったものがBとして受け取られてしまったり。だから「違うよ」と言われたら自分でも間違いを認められるし、リカバリーもしやすい。誰に謝らないといけないのかもすぐわかる。

でも歳を重ねると、だんだん失敗の原因を見つけにくくなるんですよ。「絶対大丈夫」って思っているところで大きな失敗が起きるから。これはなかなかリカバリーできないし、私の場合、自分の根幹を見つめ直さないといけないくらいの大問題に発展したこともありました。

——いったい、どんな問題が起きたんですか?

内山:大きな組織をまとめるようになると、自分が謝って済む話ではなくなることが多々あるんですよ。自分はもちろん、部下や後輩のいろんなミスが複雑に絡み合っていくから。

そういうときは、できるだけみんなが幸せになるような埋め合わせ方法を考えますが、利害関係が必ずしも一致するわけではありません。Aさんを立てればBさんに嫌な思いをさせる可能性もあります。プロジェクトそのものに影響が及ぶとなれば、どちらかに煮え湯を飲んでもらうしかないケースもある。だから同じ轍を踏まないように、そもそものやり方を見直すことが多くなりました。そうなると自分ひとりのリカバリーではすまなくなるので、抱え込まずに、人を巻き込んで考えるようにしています。

夜中の3時に上司から電話…

——対組織だけでなく、上司との付き合いに悩まされることもありますよね。以前、夜中の3時に電話がかかってきたときは、本当に腹が立ちました。でも、緊急かもしれないと思って出てしまったんです……。こういう場合、内山さんはどうすればいいと思いますか?

内山:緊急事態ならともかく、夜中の電話は非常識ですよね。私も以前、朝の5時くらいに電話がかかってきて、出た瞬間に「もっと早く出なさいよ!」と怒られたことがありました。その瞬間にぷちっと切りましたけどね(笑)。部下としては、イヤなやつだったと思いますよ。

でも、こういう連鎖はどこかで誰かが絶ち切らないと永遠に続いてしまうんです。「上司の命令に従わないと、他の部署に飛ばされたり左遷されたりするかもしれない」と不安になる気持ちもわかりますが、私は「自分が電話に出なければいつか上司も諦めるだろう」と考えるようにしていました。

——理不尽な現実に立ち向かっていくと、周囲とぶつかりそうで……。書籍のなかで、内山さんは入社後5年間、秘書室に所属されていたと書いてありましたが、念願かなってドラマの制作部に移動されたときには、同僚の心無い悪口や噂話に悩まされたこともあるそうですね。

内山:そうですね。悪口を言われ、大人のいじめを受けて、テレビドラマの世界みたいだなって思ったことはありますよ。でも、反論したり転職したりしても、嫌味を言う人は必ずいるんです。対抗しても疲れるだけだと思ったので、しばらくは放っておいて、それでも言い続けてくる人のことは一生忘れないようにしようと思いました。

そして、『ドクターX』の企画にいかしたんです。舞台は医療の世界ですが、そこには一般企業と同じような理不尽な命令やゆがんだ人間関係がある。うっぷんを晴らしたいと思っている人も多々います。それを描いたからこそ、俳優さんたちはおもしろがって演技をしてくれて、世の会社員から共感を得られて、番組の人気にもつながったんじゃないかなと。今となっては、組織の長所と短所を感覚として覚えさせてもらえてよかったという思いのほうが強いですね。

最初は「待ち」の姿勢でもいい

——それほど強い思いとブレない芯があったら、『ドクターX』の大門未知子みたいに独立を考えたりしませんでしたか?

内山:自分が脚本家だったら、独立していたかもしれません。でも私の仕事はプロデューサー。才能のある人と資金を集めて初めてできる仕事なので、潤沢な資金があり、安心して仕事を進められる仲間がいる母体があったほうがいいと思ったんです。

——組織で働く特権を使うということですね。でも、どうやって組織を活用すれば、より楽しく仕事ができるのでしょうか? つい、組織が何かを与えてくれるのを待ってしまう人は多いと思います。

内山:最初はどうしても、「待ち」の姿勢になってしまうと思います。私もドラマの現場に入ったばかりの頃は、ひたすら先輩の姿を追いかけていました。そうして少しずつ組織の活用法を覚えていったんです。その間に何十本もの企画を出しては捨てられ、出しては捨てられて……。でもたった一つ、先輩の目にとまった企画がありました。

大勢のバッターがいるなかで、「こいつにバットを振らせてみよう」と思ってもらうには、自分で「やりたい」とアピールすることが大切です。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)を企画した後輩プロデューサーも積極的に企画書を出し、自己アピールをしていました。まずは、自力でチャンスを掴みに行くこと。そして、小さい芽を見逃さないこと。これが、組織のなかで大きく成長していく秘訣だと思います。

最終回は11月29日(金)公開予定です。
(構成:華井由利奈、撮影:大澤妹、聞き手・編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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