「あの子が難なくこなせることも、自分は努力しないとできない」。そんな劣等感から、自分を責めたり、相手に嫉妬してしまったりした経験はありませんか?
6月下旬に東京・南青山で開催されたイベント「渡辺直美の専属スタイリスト&摂食障害経験者と考える、女性を悩ます『かわいくなりたい!』と向き合う方法」に、スタイリストの大瀧彩乃さんと、摂食障害経験者であるハフポストブロガーの野邉まほろさんが登壇。
イベント後半の質問タイムでは、参加者から大瀧さんと野邉さんの2人に向けて、さまざまな質問が投げかけられました。人と比べることをやめるのは難しいけど、その劣等感を利用することはできるのかも? 質問に対する2人のお話のなかに、劣等感をプラスに変えるカギが見えました。

大瀧彩乃さん(左)、野邉まほろさん(右)/写真提供:ハフポスト日本版、撮影:関根和弘
レポート第1弾:自分を好きになるために実践したこと
レポート第2弾:今疑うべき「痩せなきゃ信仰」
何を食べるかよりも、どう食べるか
参加者:食べることと体型を維持することは、切っても切れない関係にあると思います。お2人にとって「食べる」とはどういうことですか?
大瀧彩乃さん(以下、大瀧):私にとっては、「食べる」ことがいま一番の幸せです。体を健康な状態にすることが、心も健康にすると思っているので、仕事をしっかりこなす上でも食べることを大事にしたいです。
野邉まほろさん(以下、野邉):私も食べることがすごく好きです。ただ、イライラしたときや元気がないときに「食べる」ことで発散していたために、本当にしんどいときも「食べる」ことを解決手段にしてしまったんですね。それが、摂食障害の発端だと思っています。食べた物が自分をつくるとよく言われますが、何を食べるかよりもどう食べるかの方が大事。食べるという行為が、私をつくるのだと思います。
体型に悩む友人には突っ込まない
参加者:私は小食で痩せ型なのですが、ダイエット中の友だちに「そのままでいいと思うよ」と言うと「皮肉でしょ?」と言われてしまいます。体型で悩んでいる人には、どういう言葉をかければいいでしょうか。
野邉:体型のことで悩んでいるときに「ありのままでいいよ」と言われても「あなたは痩せているからでしょ!」とイライラすると思うんですよ。どれだけ言い方に気を遣っても、受け入れられないときがあるんです。
だから、体型のことは言わなくていいんじゃないかと思いますね。「今度オシャレなランチに行こうよ」とか、「ネイルやってみない?」とか、楽しいことを提案してあげるのはどうでしょう。
オシャレなものを食べると気持ちが上がる
参加者:野邉さんの自己紹介の中で、オシャレについて投稿したり、イベントを開催したりしたことで、Twitterのフォロワーが変わっていったというお話がありました。ご自身の投稿の何が、摂食障害の子たちを動かしたと思いますか?
野邉:摂食障害の人は、自分の見た目に自信がない人が多いんです。裏を返せば、「もっとかわいくなりたい」とか「キレイになりたい」という思いがとても強いんですね。でも方法が分からないから、「キレイになる=痩せる」という方程式を勝手に描いてしまっている。
彼女たちの本当の欲望は、「キレイになりたい」「かわいくなりたい」なのだから、治るためにはそこに焦点を合わせることが必要なんだと思います。
かわいくなったり、キレイになったりするには、痩せる以外にもたくさんの方法がある。それをツイッターで提案してあげたのが良かったのだと、今は思いますね。
気分を上げて食事を楽しむ
参加者:摂食障がいの人にとって、食事はとても苦しいものだと思います。野邉さんは、食事といつから向き合えるようになりましたか?
野邉:私の場合は、キレイになりたい、オシャレな人になりたいという延長線上で、「食べるものもオシャレにしよう」と思ったことがきっかけです。食事と向き合うというよりも、食事の見た目を気にするようになってから、食べることが楽しくなったという順番です。
雑誌を見ると、モデルさんがオシャレなランチを食べているシーンが写っているじゃないですか。でも、雑誌に載っているような高い食材は買えない。どこから始めよう?と思ったときに、「食べ方はマネできるかも」と気づいて。見た目だけでもオシャレな人と似たものを食べようと思って、盛り付けを工夫するようにしました。
オシャレなものを食べたときって、ちょっと気持ちが上がる。ちょっとイケてる自分になった気がする。それが、「食べること」を楽しめている、今の自分につながっています。
太い/細いという切り口がなくなればいい
参加者:体型コンプレックスなどのメディアでの扱われ方について、お2人の意見を教えてください。
大瀧:世の中にはまだ、男性目線で作られているものが多い気がしています。十分細い女優さんやアイドルに対して、男性が「ぽっちゃり」という格付けをすると、それと比較して「自分は太っているのかも」という間違った基準がどんどん広がってしまいますよね。
私が、海外に買い付けに行く頻度が増えてから気づいたのは、他の国だとぽっちゃりしている女性とかグラマラスな女性の方が人気だということです。もしもこの先、女性優位の社会になった場合、痩せている女性が一番いいといわれるかというと、そうではない気がします。
野邉:私は過食や過激なダイエットを経験してきて、体重だけで見ると、増えている期間と減っている期間の両方がありました。じゃあ、体重が少ないときの自分の方が生き生きしていたか、自分のことが好きだったかというと、全然そうではないんですよね。
太っているか痩せているかというのは、その人の表面的な特徴であって、その人自身を表すものではない。だから、そういう切り口自体がなくなっていったらいいなと思いますね。
劣等感の取り扱い方を覚える
参加者:どうすれば、他人と比較する自分をふっきれるようになるでしょうか。
大瀧:私はもともと周りの目を気にしない性格で、小さい頃から人と違っていてもいいやと思っていました。小学校の卒業式でも、皆はピンクのワンピースを着ていたけど、私は親の趣味で白いジャケットに黄色いシャツという格好。でも、それが私の家のやり方だからいいや、という感じでした。
野邉:大瀧さん、めちゃくちゃいい性格ですね! 私は劣等感でできているような人間なので(笑)。だからこそ、いかに比較し続けて、その劣等感を行動に移すかだと思っています。あの子は努力しなくても痩せているのに、私は3食抜いて運動もしないと痩せられない。そこで「なんで私は……」と考えていても痩せないんですよ。
「悔しい。だから明日はちょっと1駅分歩いてみよう」というふうに切り替えて、無理やり行動に移していました。私の場合は5年くらいかかりましたが、無理やりにでも続けることで、劣等感を前向きな行動に変えられたという成功体験が得られます。
比較すること自体が悪いんじゃない。比較して感じた劣等感をどう使うかが、ふっきれるカギなのだと思います。

(登壇者・左から)井土亜梨沙さん、生田綾さん、大瀧彩乃さん、野邉まほろさん /写真提供:ハフポスト日本版、撮影:関根和弘
今回のイベントは、ハフポスト日本版が立ち上げた『Ladies Be Open』というプロジェクトの一環として開催されたもの。プロジェクトの根幹には、「女性のカラダについてもっとオープンに話せる社会になって欲しい」という思いがあるそうです。好きなスイーツや音楽についておしゃべりするのと同じように、カラダの悩みを話し合える機会を持ってみてはいかがでしょうか。
(東谷好依)