いつの頃からか「痩せている方がいい」という価値観のもと努力してきた私たち。でも、それが本当に正しいか、考えたことはありますか? 私たちは何のために「痩せ」を目指してしまうのでしょう?
6月下旬に東京・南青山で開催されたイベント「渡辺直美の専属スタイリスト&摂食障害経験者と考える、女性を悩ます『かわいくなりたい!』と向き合う方法」は、私たちが信じてきた価値観を疑ってみようという示唆を与えてくれるものでした。
前回のレポートに引き続き、今回は、スタイリストの大瀧彩乃さんと、摂食障害経験者であるハフポストブロガーの野邉まほろさんの2人によるトークショーの様子をお伝えします。
レポート第1弾:自分を好きになるために実践したこと

(左から)井土亜梨沙さん、生田綾さん、大瀧彩乃さん、野邉まほろさん/写真提供:ハフポスト日本版、撮影:関根和弘
「痩せていること=モテる理由」ではない
——ぽっちゃり女子向けの雑誌『la farfa』が創刊されたり、渡辺直美さんのインスタグラムが注目されたりという動きがあるなかで、ファッション業界は変わってきているのでしょうか。
大瀧彩乃さん(以下、大瀧):10年くらい前は、ぽっちゃりさんの服であまりかわいいものがありませんでした。柳原可奈子さんがブレイクし始めた時期は、かわいい服がなかったので、サイズの合いそうなものをメジャーで測って探していましたね。その頃と比べると、日本のブランドでも大きいサイズの服が作られるようになったし、海外からも大きくてかわいい服がたくさん入ってくるようになったと感じます。

大瀧さん/写真提供:ハフポスト日本版、撮影:関根和弘
——多くの女性が、痩せたい、キレイになりたいという願望を持っていますよね。そもそも、なぜそういう願望が湧くのだと思いますか?
野邉まほろさん(以下、野邉):私の場合、中学生くらいのときには「痩せている方がいい」という固定概念みたいなものが既にありました。なぜかと考えると、モテる同級生は大体痩せていたからかもしれません。本当は「痩せていること=モテる理由」ではないと思うんですけれどね。痩せていることが皆から愛される条件という考えを、気づいたら自分の中に持っていた感じです。
「痩せたい」は「頭が良くなりたい」と願うようなもの
——野邉さんは「摂食障害が完治したあともダイエットをしています」とブログに書いていましたね。今もダイエットを続けているのでしょうか?
野邉:夜は食事の量を減らしたり、運動を続けたりするなど、ダイエットは今でも続けていますよ。痩せたい気持ちをなくすのは、無理だと思うんです。たとえば「頭が良くなりたい」とか「可愛くなりたい」という願望を持っている人は多いですよね。私の場合は、それが「痩せたい」という願望だったのかなと、今は考えています。自分を傷つけながら痩せるのではなく、前向きに、楽しみながら痩せるのは問題ないんじゃないかと思います。

野邉さん/写真提供:ハフポスト日本版、撮影:関根和弘
——ファッション雑誌やテレビなどのメディアは、女性の美に対する価値観にすごく影響を与えていると思いますが、大瀧さんはそのような業界にいる立場として、どのような実感を持たれていますか?
大瀧:ダイエットのビフォー/アフターのビフォーが……あまりにもネガティブなイメージですよね。不健康なほど太ってしまうのは別ですが、私はぽっちゃりが悪いとは全く思っていません。やっぱり、自分の心が健康でいられることが一番だと思うんですよね。
先ほどまほろさんがおっしゃっていたように、前向きに痩せて、自分の心が健康になるならそれが一番いいと思います。また、(渡辺)直美ちゃんみたいに、食べることで元気が出るならそれもいいと思います。ファッションも同じで、黒を着ている自分が好きなら黒い服ばかりでもいいんじゃないでしょうか。もっと自分が好きなスタイルを表に出してもいいのではと、モデルさんなどを見ていても思います。
ありのままの自分はハードルが高い
——イベント前に控え室でお話ししていたときに、渡辺直美さんは、自分のポリシーに沿った見せ方を実行している方だというお話も出ました。
大瀧:芸人さんが集まるテレビ番組で、全員タキシードを着て出るときは、女性も黒スーツを着るんですね。けれども直美ちゃんは、女性は女性らしさを出してもいいという意見を持っていて。なので、直美ちゃんの衣装はいつも黒のドレスなんです。そういう見せ方でもいいというふうに、テレビ業界でも流れが変わってきているような気がします。
——野邉さんは、ファッション雑誌やテレビ番組に対して、もの申したいことはありますか?
野邉:外向きの自分をつくって頑張るよりも「ありのままの自分を愛そう」「加工なしの自分をオープンにしよう」という方向に、発信の仕方がシフトしていますよね。長期的に見ればそういう視点が必要だし、私もそうなりたいですが、ハードルが高いと思うんです。やっぱり悩んでいる人は今が苦しいわけじゃないですか。だからメディアでも、今の自分とどう向き合うかとか、ネイルやアクセサリーをプラスしながら今の自分をどう生きていくか、みたいな発信の仕方をしてほしいと思います。
体重より先に考えることがあるだろ、って
ハフポスト日本版が立ち上げた『Ladies Be Open』というプロジェクトの一環として開催された今回のイベント。定員50人の予定で参加者を募集したところ、70人を超える申し込みがあり、あっという間に予約が埋まってしまったそう。当日は、約70名の参加者が、大瀧さんと野邉さんのトークに熱心に耳を傾けていました。トークの最後には、野邉さんに向けてこんな質問を投げかける人も。
——野邉さんはすごくポジティブで、自分に自信を持っている印象を受けます。どうすれば野邉さんのようにポジティブな気持ちでいられるのでしょうか?
野邉:自分に自信があるとは決して言い切れないですけど、でも、自信がないわけではないんです(笑)。以前は、私=体型という考えがあったので、「体型に自信がない=自分に自信がない、私は生きる価値がない」という感じでした。でも、今は何か1個自信がなくても、他に自信を持てる要素があればいい。そうすれば自分自身のことが嫌いじゃないという状態になれると思っています。
それを最初からできていたかというと、全然そうじゃなくて。摂食障害を治そうと決心した大学4年生頃から、自分を色々な要素で彩っていくように意識しました。まずは体重よりも髪の毛のボサボサ具合とか、爪を噛んでいたので爪の短さとか、中学生から着ている下着を買い替えるところからだろ、みたいな(笑)。そういう考え方に変わったのはすごく大きかったと思います。
次回は、参加者から多くの質問が飛び交ったイベント後半の様子をレポートします。
(東谷好依)