解熱鎮痛薬や風邪薬などの市販薬を購入するとき、パッケージに「OTC医薬品」、「第2類医薬品」などの表記が目に入ります。「何のことだろう」と理解しないままに購入している人も多いのではないでしょうか。
そこで、大阪府薬剤師会理事で薬剤師の近藤直緒美さんに、表示の意味について詳しく教えてもらいました。
成分の薬効と副作用のリスクで分類されている
――市販の薬は多くの区分に分類されているようです。どういう基準なのでしょうか。
近藤さん 薬局やドラッグストアで買える市販の薬は、医師の処方箋(せん)が必要な「医療用医薬品」と区別して、「市販薬」や「大衆薬」と呼ばれていますが、法律上、2007年に「OTC医薬品」と呼称が統一されました。
OTCとは「Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター」の略で、薬局やドラッグストアなどカウンター越しに薬を販売する形式に由来します。市販の薬のパッケージに「OTC医薬品」というロゴマークを見かけることも多いでしょう。
その「OTC医薬品」はまず、「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分けられます。
さらに「一般用医薬品」は、「第一類医薬品」、「第二類医薬品」と「指定第二類医薬品」、「第三類医薬品」に分類されます。分類の基準は、成分の薬効と使用方法の難しさ、飲み合わせ、副作用のリスクなどによる評価です。
なお、法律上は漢数字を用いて分類しますが、製剤の外箱などへの表記は、「第1類医薬品」などと、算用数字を用いるように定められています。そのため、ここでは算用数字を使って説明します。
――そのように分類する目的はどういったことなのでしょうか。
近藤さん 社会的に医療費の削減のために、軽い不調なら自分でケアしましょうという「セルフメディケーション」が呼びかけられています。それにあたり、一般の方が「OTC医薬品」を安全に選び取りやすいように、業者は秩序を持って整理して販売しようという目的があります。
それぞれの区分の特徴と例を次に挙げておきましょう。
・要指導医薬品
もとは「医療用医薬品」ですが、一般用としても販売されるようになって期間が短く、副作用のリスクが不確定とされる薬です。インターネットや電話などでの通信販売は禁止で、店頭で薬剤師から対面にて用法や用量、副作用について指導や文書での情報提供を受けた上で購入します。そのため、薬局やドラッグストアでは自由に手に取ることができない場所に陳列、保管されています。
例……一部のアレルギー治療薬、外用鎮痛消炎剤、洗口液、PMS(月経前症候群)治療薬、むくみ改善薬、劇薬など
・第1類医薬品
「一般用医薬品」の中でも効き目が強く、副作用のリスクが比較的に高いものがこれに分類されます。店頭、またインターネットや電話などでの通信販売でも購入できますが、薬剤師による用法や用量、副作用について指導や文書での情報提供を受けた上で購入します。そのため、薬局やドラッグストアでは、自由に手に取ることができない場所に陳列、保管されています。
例……一部の発毛剤、胃腸剤(H2ブロッカー)、ニコチン貼付剤、解熱鎮痛薬、排卵日予測検査薬など
・第2類医薬品と指定第2類医薬品
第1類医薬品に比べると副作用のリスクが低い薬になります。店頭、またインターネットや電話などの通信販売でも購入ができて、薬剤師や登録販売者(都道府県実施の試験に合格して登録を受けた者)による情報提供は努力義務となっています。
また、第2類医薬品の中で、妊婦や子どもなどが服用してはいけない成分が含まれるなど注意が必要な薬は「指定第2類医薬品」に分類され、第2類の「2」の部分が〇や□で囲まれています。薬局やドラッグストアの自由に手に取れる場所に陳列されています。
例……主な風邪薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬,アレルギー治療薬など
・第3類医薬品
「一般用医薬品」の中で最も副作用のリスクが低いものです。店頭、またインターネットや電話などでの通信販売でも購入できて、薬剤師や登録販売者による情報提供は必要ではありません。薬局やドラッグストアでは、自由に手に取れる場所に陳列されています。
例……主な整腸剤、ビタミン剤、点眼薬など
――ドラッグストアでよく、「薬剤師が不在で販売できません」という札を見かけるのは、この分類に関わるのでしょうか。
近藤さん そうです。例えば、遅い時間まで営業しているドラッグストアに夜に「要指導医薬品」か「第1類医薬品」の薬を買いに出かけた場合、薬剤師が帰宅して不在だとお店が開いていても購入することができないわけです。ですから、自分や家族の常備薬を確認しておき、「要指導医薬品」と「第1類医薬品」があれば、緊急時に不足しないように注意しましょう。
――これから市販の医薬品を買うときにとても参考になりそうです。ありがとうございました。
熱が出るなどしてドラッグストアに駆け込んだとき、細かい分類を気にせず、手に取れる範囲の薬を選ぶ人は多いと思いますが、こういった情報を把握しておくと、選択肢の幅が広がりそうです。今後は積極的に薬剤師に相談して、適切なアドバイスを受けてから薬を購入するようにしたいものです。
※2017年10月現在の情報です。
(取材・文 小山田淳一郎/ユンブル)