免疫って何? 高めるにはどうする? 第15回

ウイルスはのどで撃退! 保湿と保温のケアがカギ【専門医に聞くやさしい免疫学】

ウイルスはのどで撃退! 保湿と保温のケアがカギ【専門医に聞くやさしい免疫学】

「免疫って何? 高めるにはどうする?」と題して連載する本シリーズ、前回・第14回の「のどの炎症はウイルスと闘うサイン…扁桃腺の正体は?」では、「のどには4つの扁桃の輪があり、ウイルスや細菌が侵入するのを防いでいる」ことを伝えました。

今回は、のどの免疫を高めるセルフケア法について、ひき続き、『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)という著書がある耳鼻咽喉科・気管食道科専門医の遠山祐司医師に尋ねます。これまでの回は文末のリンク先を参照してください。

のどからウイルスが侵入すると気管支炎、肺炎になることも

——前回、のどには「扁桃(へんとう)」というリンパ組織が輪をつくって集まっていて、そこでは複数の免疫細胞が結託してウイルスや細菌を撃退しているとのことでした。すると、のどで風邪やインフルエンザ、新型コロナのウイルスが体内に侵入するのを防御できると、各病気を発症することはないのでしょうか。

遠山医師:健康で免疫が働いているときは、ウイルスや細菌が鼻や口から侵入してきても、鼻や口、のどなどの粘膜の自然免疫(第2回参照)の機能で打破できることがあります。

そのとき、4種の扁桃の輪(ワルダイエル扁桃輪・第14回参照)を舞台として免疫細胞がウイルスや細菌と激しい闘いをくり広げるため、炎症を起こしやすくなります。空気が乾燥しているときや気温が低いとき、また体力の低下で免疫の働きが低下しているときにはそうなりやすく、のどが痛くなったり、鼻水や咳(せき)が出たりします。風邪などの初期症状です。

ウイルスとの格闘で免疫細胞が勝ると、痛みは徐々に軽減し、ウイルスや細菌はそれ以上、のどを越えて体内に侵入することはありません。

一方で、免疫の機能が低下していて、のどでの格闘にウイルスや細菌が勝ってのどを通り越し、気管支や肺(下気道・かきどう)にまで及ぶと気管支炎や肺炎になる場合があります。

これは「風邪などをこじらせた状態」で、自分の免疫細胞がウイルスや細菌と闘う舞台が気管支や肺に及ぶため、咳や発熱などつらい症状が現れてきます。気管支炎や肺炎になると、治療や治癒に時間がかかります。

ウイルスをのどで撃退するセルフケア法

——では、自分で免疫の機能を向上させてのどから先へのウイルスの侵入を防ぐコツはありますか。

遠山医師:のどに関わらず、全身のどの部位でも免疫の反応は体力や環境によって左右されます。

風邪やインフルエンザ、新型コロナのウイルスの場合は、乾燥と低温を好みます。口、鼻、のどは常に空気と接触しているので、空気が乾燥しているときはどの器官の粘膜もカラカラに乾燥していると強く意識をしてください。

これらの粘膜では常に自然免疫が働いていますが、粘膜が乾燥して低温になっている場合はウイルスや細菌が付着しやすくなり、付着するとそこで活性化して増殖します。

それを防ぐには、空気が乾燥する秋、冬、春の間はとくに、全身の乾燥も防いで常にのどを潤しておきましょう。例えば、手足が冷たい、顔や手が乾燥しているなと思うときは、のどや鼻も乾燥して全身が低温になっているサインです。できるだけ、そう感じる前に次のことを実践してください。

・マスクを装着すると、自分の呼気でのどを潤すことができて乾燥や冷えからのどを守ります。屋内にいるときや就寝時でも装着すると、のどの保湿に有用です。

・屋外ではもちろん、屋内でもマフラーやタートルネックの衣服、タオルやハンカチでもいいので、それらを活用してのどを冷やさないようにしましょう。

・白湯や水をこまめに飲みましょう。のどの奥まで潤し、水分補給にもなります。

・晩秋から冬は、室内の気温は18~22度、湿度は50~60%をキープしてください。そのために暖房と加湿器を活用しましょう。ただし、温風エアコンの風が顔や体にあたると口、鼻、のど、皮膚が乾燥するので、温風に直接にはあたらないようにしてください。

・デスクワーカーは、デスク上に置ける自分用の小さな加湿器を活用しましょう。無理な場合は、デスク上に湯を入れたコップを置いておく、濡れタオルやハンカチをかけておくなどして乾燥を防いでください。

・歯周病があるとインフルエンザウイルスが口腔の粘膜などで増殖すること、またインフルエンザの薬の効果を低下させることが報告されています。食後はもちろん、とくに起床時と寝る前は歯磨きをし、歯周病の治療をしましょう。

・うがいは、先に口の中をクチュクチュと2・3回ゆすいでから、次に「のどうがい」をのどの真ん中→首を少し右に傾けてのどの右側→首を少し左に傾けてのどの左側を、各15秒~20秒ほど行います。

口の中に病原体や異物がいるかもしれず、のどうがいをする前に、まずはそれらを吐き出すために先に口の中からゆすぎます。また、うがい薬はのどの粘膜に刺激が強いことがあるので、普段は水で充分です。

・「体温が下がると免疫力は低下する」ことが知られています。体がぽかぽかとする足湯を5~10分すると、足だけでなく全身の血流が促進されます。

・不規則な生活習慣やストレスは免疫の機能を低下させます。日ごろから睡眠を十分にとり、栄養バランスの良い食事、軽い運動を実践し、ストレスがたまらない生活を送りましょう。

聞き手によるまとめ

ウイルスや細菌の侵入を防ぐには、のど、口、鼻の保湿と保温が有用だということです。冬はもちろん、一年中、これらのセルフケアを実践したいものです。

次回・第16回は、「腸管免疫」についてお尋ねします。

(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル

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