内山聖子さんインタビュー 第1回

病気は自慢にならない『ドクターX』内山聖子Pに聞く【私、失敗ばかりなので】

病気は自慢にならない『ドクターX』内山聖子Pに聞く【私、失敗ばかりなので】

「失敗が怖い」っていうけど、よく考えてみれば失敗ってなんだろう。そんなに取り返しのつかないものなのでしょうか——。

そんな私たちの胸にスカッと響く「私、失敗しないので」という決め台詞で有名なドラマが『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)です。現在放送中の第6シリーズも視聴率18%をキープするなど好調です。

第1シーズンからプロデューサーを務めるのはテレビ朝日の社員内山聖子(うちやま・さとこ)さん。きっと「失敗しない人」なのだろうと思いきや、「数えきれない失敗と遠回りをして現在がある」と言います。10月には『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)を上梓した内山さん。

社会人生活をスタートして30年、「失敗するほど楽になると思えるようになった」と言う内山さんに、「失敗って一体なんなの?」「失敗しても終わりじゃないってどういうこと?」と、疑問をぶつけてみました。全3回にわけてお届けします。

内山さんの新刊『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)

内山さんの新刊『私、失敗ばかりなので―へこたれない仕事術―』(新潮社)

初プロデュース作品がまさかの打ち切りに

——『ドクターX』シリーズは、平均視聴率が18%をキープしています。でも『私、失敗ばかりなので』を読むと、初めて担当したドラマでは大コケし、打ち切りだったとか……。

内山聖子さん(以下、内山):はい。初めて担当した連続ドラマは『Missダイヤモンド』(テレビ朝日系)という作品でした。豪華な出演者をキャスティングしていましたし、脚本もいい。私としては手応えを感じていたのですが、2桁を期待していた第1話の視聴率が、たったの8%。当時ドラマ制作は一度失敗すると地獄が数ヶ月続くんですよ。

——地獄……。

内山:どんなに視聴率が低くても撮影は毎日あって、スタッフや出演者と顔を合わせないといけないので。打ち切りになったとき、私は出演者が所属する事務所をまわって、謝り続けました。

みんな、「絶対おもしろい作品になる」という私の言葉を信じて頑張ってくれていたので、裏切られた気分だったのではないかと思います。

——もし私が内山さんの立場だったら、立ち直れなさそうです。あまりにも視聴率が悪いと、家に引きこもってしまうプロデューサーもいると聞いたことがありますが、内山さんは逃げ出したいと思いませんでしたか?

内山:もちろん思いましたよ。私が心からおもしろいと思って考えた企画が、視聴者には全く刺さらなかったので、自分の感性に対する自信が一気になくなりました。当時を振り返ると正直、「立ち直って前に進んだ」わけではないですね。

ドラマの制作以外に居場所がなかったんです。異動願を書くにしても、他に行きたい部署がなかった。その後しっかり叱られて、AP(アシスタントプロデューサー)に降格されたときは、「そりゃそうだな」とむしろホッとしたことを今でもよく覚えています。

「怒られたくない」「失敗したくない」そんなときは

——内山さんはホッとしたかもしれませんが、やっぱりどうしても「怒られたくない」と思ってしまいます。一度ミスをすると次のチャンスはなさそうで、失敗するのが怖いんです。

内山:時代もあるかもしれませんね。私が若い頃——30年、20年前——はまだ、女性が少なくて、自分で道を切り拓いていくしかありませんでした。失敗を覚悟で前進する以外に方法がなかったので、真正面からぶつかっていけたのかもしれません。

でも、今は違いますよね。職場には大勢の女性がいて、情報も多くたくさんの道がある。でも同時にまた違う職場での悩みや、生きづらさがありますよね。どんな人生を選べばいいのか、悩む人も多いと思います。

——そうなんですよ。選択肢が多すぎて……。とりあえずこれかなって思っても「本当にこれでいいのかな?」と不安で自信が持てなくて。

内山:以前、「自分には他にやるべき仕事がある」と言って転職した女性がいたんですが、1年後、また同じような仕事をしているのを見かけたんですよ。彼女はどうしてやめたんだろう、何を求めたかったんだろうと気にしていたら、また別の会社に転職したみたいで……。切ない気持ちになりました。

もし選んだ先で嫌なことがあったら、心が壊れるまで耐える必要はないと思います。でも、「あっちのほうがいいかも」「こっちのほうがいいかも」と選べる時代だからこそ、何か不自由なことがあったとき、逃げるのではなく、ケリをつける時間も必要なのかもしれません。そうしないと、自分がないまま年をとってしまう可能性もありますからね。

病気は自慢にも勲章にもならない

——できれば、転んでも起き上がりやすいよう上手に失敗したいんですが、なにかいい方法はありますか?

内山:話は少しずれてしまうかもしれませんが、体調を過信しないことでしょうか。私は周りから「メンタルが強いよね」と言われることが多くて、プレッシャーに負けない性格だと思っていました。ところが、41歳のある朝、鏡を見たら顔の右半分が動かなくなっていて。慌てて病院に行くと「顔面神経麻痺」と診断され、即入院。見舞いに駆けつけてくれた後輩プロデューサーが「大丈夫ですか?」と言いながら泣き出してしまい、本当に申し訳なく思いました。

そこで学べればよかったのですが、さらに5年後、今度は円形脱毛症になってしまって……。病気は自慢にも勲章にもならないので、ストレスには敏感になったほうがいいと思いますよ。

——そのストレスを周りには相談できなかったのでしょうか?

内山:恥ずかしながら、20代、30代の頃は一人でなんとかできると思っていたんです。でも体調を崩してからは、悩んだときに相談できる相手を探すようになりました。たとえ直属の上司とウマが合わなくても、大きな組織のなかには自分と近い考えの人や、味方になってくれる人が何人かいますから。

それに、社内に味方がいなかったら、利害関係のない社外の人に吐き出すのも一つの手だと思います。狭い世界で毎日同じ人と顔を合わせて仕事をしていたら、しんどくもなりますよね。働くというのは、楽しい半面、怖さもある。だから、ただグチを聞いてくれる人や、「このままだと病気になるから早く逃げなさい」と言ってくれる人を見つけておくと、後々心がラクになると思いますよ。

第2回は11月27日(水)公開予定です。
(構成:華井由利奈、撮影:大澤妹、聞き手・編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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