『週刊文春WOMAN』編集長インタビュー 前編

『週刊文春WOMAN』編集長「女性誌では満たされなくなった女性に届けたい」

『週刊文春WOMAN』編集長「女性誌では満たされなくなった女性に届けたい」

昨年末に創刊号が発売され、『週刊文春』とは一味異なる大胆な企画の数々が話題となった『週刊文春WOMAN』。4月26日には、その第2号が発売された。第1号では、内田也哉子さんが亡き母・樹木希林さんについて書いた唯一のエッセイや、「女性の更年期治療が変わった!」「100歳まで生きる日本女性のための資産づくり『自分年表』」といった実用記事に日本全国の女性読者から強い共感の声が寄せられたという。

編集長の井崎彩(いざき・あや)さんに、なぜ今『週刊文春WOMAN』を作るのか? その理由を聞きました。

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『週刊文春』の読者、半分は女性

——『週刊文春WOMAN』を創刊した経緯を教えてください。

井崎彩さん(以下、井崎):実は『週刊文春』の読者って、約半分が女性なんです。私自身もそうでしたが、女性ファッション誌は年齢が上がるにしたがい自分に合うものがなくなってくる。節約主婦とかキャリアOLとかラグジュアリーなマダムとか、読者像が細かく規定されすぎていて、どれにもハマらないと感じる女性が増えていると思うんです。また、美容とファッションと占いといった女性誌の代表的テーマ以外の情報を知りたいと思ったときに、ちょうどいい雑誌がないんですね。

時事的なニュースを取り上げる雑誌としては女性週刊誌がありますが、専業主婦が大半だった時代の価値観で作られているというイメージがあって。とくに働く女性の場合は「自分とは違う」と感じてしまう。一方、働く女性に人気のある『AERA』だと、専業主婦の方はピンとこないかもしれない。

そうなったときに、立ち位置が比較的フラットで、一冊買えば世の中で起きていることが把握できる『週刊文春』を手に取る女性が多いのではないでしょうか。ヌードも載ってないですし(笑)。昔だったら清水ちなみさんやナンシー関さん、今ならば林真理子さんや阿川佐和子さん、益田ミリさんなど、女性目線の連載も充実しています。

——『週刊文春』は私も時々購入しては読んでいます。働く女性の中には世代を問わず読んで人が多い印象です。

井崎:こうやって話していると、じゃあ女性版をつくる必要はないじゃないかと言われてしまいそうですね(笑)。ただ私自身、2014~16年の2年間、『週刊文春』に特集班デスクとして関わっていて、健康やマネーなど実用的な記事をつくるときは「男性はこうです。ちなみに女性は〜」といった感じに、女性は付属的な説明になってしまうことが多いなと感じていました。

また、ニュースによっては、女性読者が主体だったらもう少し違う取り上げ方があるなと思うこともありました。それならば女性の悩み、女性が知りたいことを文春テイストで取り上げる雑誌を別に作ったら、読者がいるんじゃないかと思ったんです。

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10万部発行で完売、「これはいける」と思った

——たしかに、いくら女性読者が多いとはいえ、『週刊文春』で女性の更年期についての詳細記事を掲載するのはちょっと違和感がありますよね。

井崎:そうなんですよ。『週刊文春』は作り手にも読者にも男性が多いから、女性の下半身の悩みと深く関わる更年期症状の記事を、セクハラにも露悪的にもならずに作るのは難しい。一方、女性ファッション誌で更年期について取り上げるときは、エグくならないようにきれいに作ってしまう。『週刊文春』の女性版なら、突っ込んだ記事が書けると思いました。

『週刊文春WOMAN』は一言で言えば、女性誌だけではもの足りないと感じるようになった女性に向けて、世の中で起きているあらゆることを、今の時代の女性の価値観で取材し、発信する雑誌です。年齢ターゲットは設けていません。

——なるほど。そして、満を持して今年のお正月に創刊号が発売されたと。

井崎:実は2016年のお正月に一度パイロット版を出したことがあるんです。デザインは異なりますが、タイトルは同じ『週刊文春WOMAN(当時はWoman)』。セブンイレブン限定で10万部発行したのですが、83.2%という実売率で「完売」となりました。数字としては申し分なかったので、また出そうという話が持ち上がったり、出版不況ということもあって立ち消えになってしまったりを繰り返していたのですが、ようやく発行にこぎつけました。

年3回の発行で「長期休暇に読んでほしい」

——今後は年3回の定期刊行物として出版することになったそうですね。

井崎:はい。年3回というのはイレギュラーな形態ですが、『週刊文春』の特大号のタイミングに合わせているんです。週刊誌はGWとお盆とお正月の年3回、ページ数を増やして、2週間販売する特大号を発行します。この多くの人が長期休暇に入るタイミングで、発売日を少しずらして出すことで、『週刊文春』と『週刊文春WOMAN』の両方を買っていただけるといいなと。どちらもB5サイズで軽い紙を使っているので、帰省や旅行に持って行くのにぴったりなんです。

また、現代女性の日常は忙しいので、webでの情報チェックはできたとしても「家でゆっくり雑誌を読む時間がない」という声をよく耳にします。長い休暇のときは本や雑誌を読む時間ができるかもしれませんし、親や親戚と会うことで人生について考えるタイミングにもなるかもしれない。忙しい女性たちがそんなふうに1年の中でふと立ち止まるときに、寄り添える雑誌になれたらという思いも年3回の発行にした理由です。

——4月26日に2号目も発売されましたが、1号目の反響はいかがでしたか?

井崎:思っていた以上の反響でした。ふだん『週刊文春』を買ってくださっている層を想定していましたが、「文春と名のつく雑誌を久しぶりに読みました」という読者が多いことに驚きました。昔は愛読していたけれど、結婚して仕事をやめたり子育てに忙しかったりで『週刊文春』を読む習慣からは離れてしまった方が「女性版が出るなら買ってみよう」「年3回なら続けていける」と。ハガキ、ウェブで寄せられた感想の文面が皆さん熱いんです。「この記事とこの記事はすごく良かったけれど、この記事は男性目線じゃないか」とお叱りをいただいたり、非常に勉強になりました。

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「見る女性誌」から「読む女性誌」へ

井崎:それと、おもしろいなと思ったのが、「このスタイルの雑誌だと文字を読むのが苦じゃないから不思議」という感想です。ツイートでもいくつか見ましたし、編集部に届いた感想にもありました。私は長年、女性誌『CREA』の編集部にもいたんですが、女性誌業界では「最近の読者は文字を読まない」と言われているんですね。20年くらい前の女性誌と比べていただくと一目瞭然ですが、どこも文字量を少なくして、見出しと写真だけでページの趣旨がわかるつくりにしている。

一方、週刊誌スタイルのレイアウトで文字・文字・文字で押していく『週刊文春WOMAN』は、それとは逆行するスタイルです。でも「雑誌は買わなくなったけど、こういう雑誌なら読みたいと思った」という感想を見ると、やはりまだ「読みたい女性」が大勢いたんだと実感しました。

——たしかに、週刊誌だと文字を読むモードに入りますよね。

井崎:そうそう。モードに入るんですよね。読者のツイートを見て本当にそうだなと思いました。「もっといい紙、いい印刷にして、きれいな写真を見せてほしい」という声もあるんです。でも、そうすると既存の女性誌と似てきてしまうだろうし、私は「読む女性誌」というのを突き詰めてみたいなと。

そう考えるきっかけになったのが、広告主の方のお言葉でした。パイロット版、創刊号とタイアップ広告を出してくださったアルビオンという化粧品会社があるんですが、どちらもザラ紙ページで「読むタイアップ広告」にしているんです。もともと私がお薦めしたのは、カラー写真を使ったイメージ寄りの広告だったんですが、PRマネージャーの女性が「文春は読んで面白い雑誌だから、ザラ紙ページの読ませるページにしたい」とおっしゃって。アルビオン史上初めてのことだと思います。でも、その方は『週刊文春』の長年の愛読者だったので、「読むモード」効果をすでに理解されていたんです。

創刊号では、ザラ紙だけで11ページもの広告を出してくださいました。創業時から経営に関わっている小林英夫会長にインタビューを行ったのですが、現在80代で日本の化粧品業界の成長をずっと見てきた方。アルビオンは1956年という日本がまだ貧しかった時代に「間もなく高級品の時代がやってくる。だから日本一、いや世界一の高級品メーカーを作らなければ。人々が憧れてやまない高級品を作らなければ」という理念で創業したそうです。そこからどんな戦略でいまの地位を築いたのか。他の女性誌ではなかなか説明しきれないブランドの背景を読者に伝えられたと思います。

——あれは広告だったんですね。記事のひとつとして読んでいました。

井崎:そうですよね。PR表示を入れていたのですが、広告と気づかずに読んでいた読者が多かったようです。40、50代の読者が多いので、少なくとも一度はアルビオンを使ったことがある世代なんですが、「こんなにいいブランドだったんだ。知らなかった」とか「アルビオンの記事面白かった」とツイートしている読者がいました。普通はタイアップの記事の感想をツイートする人はあまりいませんよね。

創刊号は26万部という大部数の発行となったんですが、専任の編集部員がまだ私ひとりということもあって、一からのものづくりを楽しんでいます。ツイッターなどで「こんなに端から端まで読んだ雑誌はひさしぶり」といった感想を読むと、本当にうれしいですね。

(塚本佳子)

4月26日に発売された『週刊文春WOMAN』第2号は、書店、コンビニ、Amazonなどで購入できます。パイロット版、創刊号同様、早々の完売が予想されるのでお早めに!
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『週刊文春WOMAN』第1号で大反響があった更年期特集。編集長の井崎さん自らスタジオ出演し更年期について語ったAbemaTV「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」の「#70 20代から知っておきたい更年期」も現在配信中。
視聴はこちらから

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