『レタスクラブ』松田紀子編集長インタビュー第3回

私、一見キラキラの女性誌編集長ですが…「輝こうが輝くまいが自分の人生は楽しい」

私、一見キラキラの女性誌編集長ですが…「輝こうが輝くまいが自分の人生は楽しい」

料理のレシピといえば、最近は「クックパッド」などのレシピ検索サイトで手軽にレシピをチャチャッと調べて……という人も少なくなくでしょう。

わざわざ雑誌や本を買わなくてもレシピが簡単に調べられる現代。しかし、今年で創刊30周年を迎える料理雑誌『レタスクラブ』(KADOKAWA)は出版不況と言われている時代に、3月25日発売のプレ月刊号(4月号)から3号連続で完売と、読者の支持を集めています。

一時期は「瀕死の状態だった」という同誌が“再生”した理由は? 1回目は、松田紀子編集長に編集部のチーム改革、2回目は、雑誌コンテンツをどう見直していったかについて聞きました。3回目は『レタスクラブ』が目指すことについて聞きます。

【1回目】“瀕死状態”だった雑誌、再生のキッカケは?
【2回目】「正しさ」だけでは辛い。読者の“共感”を大事にする理由

松田紀子編集長

松田紀子編集長

女に生まれるだけで「〜べき」が襲ってくる

——ウートピの読者層は「都会で働く女性」です。『レタスクラブ』の読者層とはかぶらないかもしれないですが、「毎日へとへとで大変だよね」というのは共通しているのかなと思っています。

最近は「女性活躍」が叫ばれていて、女性が働きやすくなるのはすごくいいことだと思うんですが、世間や周りから「輝け」とか「活躍しろ」って言われる。なんだか疲れちゃうというか、「もう頑張っているよ」って言い返したくなっちゃうんですよね。

松田:輝かなくていいよって言いたくなる気持ちはわかります。私も「べき論」が嫌いで、なるべく楽に暮らしたほうが幸せ率は上がると思っています。

女に生まれてくるだけで「べき論」が襲ってくる。「もういいよ」「飽きました」って感じですよね。私も一児の母なので、結婚したらなおさら、子ども生まれたらもっと「〜すべき」が迫ってきて、知らないところから野次が飛んでくる“痛み”は非常によくわかるんです。

だから『レタスクラブ』でもできるだけ「〜べき」から解放させてあげたいなと思い、「なんとなく避けられがちな冷凍食品だけど、実はこんなに使えるんだよ」とか「もっとキッチングッズに頼ろう」とか「これがあると段違いにはかどるよ」というような、読者が少しでも楽になる企画を考えるようにしています。

キラキラしたいからやっているわけではない

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——皆さん悩んでいるんですね。前回のお話を聞いていても思ったのは、今の女性ってすごく真面目なんだなってこと。だから「輝け」とか言われると輝かないといけないような気になってしまって苦しくなっちゃうのかなって。

松田:そう、皆さん真面目ですよね。私は全力で抵抗しますが(笑)。

——でも松田さんもキラキラして見えます。だから、「輝け」っていうのがうるさいとは言いながらも、松田さんみたいなデキる女性や先輩を見ると「私もこんなふうに輝きたい」って思うんです。

松田:それはとんだカン違いですよ(笑)。もしかしたら、私は働いているし子どももいて、雑誌の編集長で、って外からはキラキラ見えるかもしれません。でも、私はただ仕事したいからそうやっているだけ。

——はい。

松田:誰になんと言われようと子どもは産みたかったし、仕事は絶対に続けるって思ってましたし、経済的にも自立したいと思っていました。ただそれらを「やる」と決めてこうなっただけなんです。

——「やる」と決めただけ。すごく力強い言葉ですね。

松田:皆さんだってそうだと思うんです。やりたいことってひとつやふたつある。誰になんと言われようとやっていれば輝くことにつながるものだし、それでいいんじゃないかなって思うんです。

生真面目な人ほど全方向に向けて頑張りすぎて破綻しまう。そして、破綻やほころびが気になって「私はダメだ」「何一つ満足にできていない」ってあらゆることがマイナスに思っちゃう。

そうならないためには、まずは自分で決めること。「やる」ことはもちろん「やらない」ということも。自分で決めればモヤモヤしないし、他人から見て輝こうが輝くまいが、自分の人生は楽しい、と思えるようになると思います。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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