『僕の人生には事件が起きない』インタビュー・前編

岩井勇気、競争させられるよりルールを作る側にいきたい

岩井勇気、競争させられるよりルールを作る側にいきたい

お笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気(いわい・ゆうき)さんによる初エッセイ『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)が9月に発売され、7刷で4万部を突破しました。

30歳で始めた初の一人暮らしや仕事の合間に足を運ぶ美術館、営業で訪れたショッピングモールで遭遇した出来事など自身の何気ない日常をつづった一冊。

「本当に事件なんて起こってないんです」という岩井さんにお話を伺いました。

9月に初エッセイ『僕の人生には事件が起きない』を上梓した岩井勇気さん

9月に初エッセイ『僕の人生には事件が起きない』を上梓した岩井勇気さん

新潮社には後悔してもらいたい

——『僕の人生には事件が起きない』がアマゾンで一時品切れになっていました。岩井さんの元にも反響は届きますか?

岩井勇気さん(以下、岩井):周りのスタッフさんや共演者の方が「読んだよ!」って言ってくれて「偉いなあ」と思いました。

——偉い?

岩井:ちゃんと共演した人の本を読むんだなあって。僕はあまり読まないので……。

——書店でやったサイン会もすごく人が来て、女性が多かったと伺いました。

岩井:新潮社の人に「チェキ会やります」と言われて、僕は別に了承してないんですけど、急にやることになったんです。「規模は80人くらいですかね?」と言われたときに「まあ見くびられているな」って思いました。

しかも先着だったんです。人気作家ならあり得ないじゃないですか? 抽選するなり整理券を配るなりすると思うのですが、先着順だったので、これは見くびられているなと……。「何も分かってねーな」って思いました。

——ふたを開けてみたらたくさんお客さんが来て……正直「ざまあみろ」って思いますか?

岩井:うん、少し。新潮社には、軽い気持ちでチェキ会に手を出したことに後悔してもらいたいです(笑)。

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観察者の視点は客の視点

——タイトルは『僕の人生には事件が起きない』ですが、本を読んで「岩井さんの人生には事件がたくさん起こっているじゃん」って思いました。

岩井:自分なりに面白く変換してるだけで別に事件は起こってないんですよ。だからそれをできるようになれば、日常も面白いですよっていうことだし、どんな日常でも楽しめる角度があると思うのでそれを伝えられればいいなあと思います。

——「楽しめる角度」っていいですね。岩井さんは第三者目線というか、観察しているんだなあと思ったのですが、昔からそうだったのですか?

岩井:それは、芸人を始めてからかもしれないです。芸人をやっているとイジられることが結構あるんですが、イジられるとつらいじゃないですか?

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——でも、芸人さんの中には「イジられるとおいしい」という人もいますよね。

岩井:そうそう、みんな「おいしい」と思わないといけないんですよね。そう思わされているというか。「芸人なんだから、イジられてもつらいって思うんじゃねーよ」という風潮があるし、それを乗り越えるために自分もイジる側に回ることがある。

つまり、イジっているヤツ、イジられているヤツで面白く見せるためにはどの視点が必要かと言ったら、客の視点なんですよね。だから、観察しているというのはお客さんの視点になっているからかもしれないです。

「この状況で自分がイジられていることは面白いかもしれない」と変換しないとつらいですからね。ちょっと考えたら、イジメですからね。だから、観察しているというのは自分が芸人をやっているからこそ獲得したことなのかもしれないです。

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競争するよりも自分でルールを作りたい

——相方の澤部さんについてつづった「澤部と僕と」は書き下ろしだそうですね。「腐り芸」「ひねくれた笑い」と評される岩井さんのお笑い感は澤部さんによって作らされた、澤部さんがやっている以外のことで笑いを取るようになったという部分が面白かったです。

岩井:何かで競争をすると「一番になりたい」という気持ちが出てきますよね。それで頑張って一番になるんだけど、競争させられている気になるんですよね。学校でもそうですけれど、なぜ競争しないといけないのか分からないのに競争させられている。

僕は「なぜ競争しないといけないの?」と思っちゃうタイプだったので、澤部と競争するのではなくて、違う方向で笑いを取るようになっていったし、そもそも競争そのものを作っちゃえばいいんじゃない? と思ったんです。

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——それは「自分でルールを作る」ということですか?

岩井:そうです。それは、ずっと意識しています。僕は、王道の漫才ではなくて、誰もやってなかったような漫才を作っていたけれど、今度は「そもそもそれも漫才じゃん」って思った瞬間があったんです。結局は誰かが作った漫才という枠の中で競争してるじゃんって。マイクの前で2人でしゃべっているけれど、なぜこれで競い合っているんだろう? みたいな。

漫才、コント、ギャグ、ピン芸、リズムネタとかいろいろありますが、できれば次は違うジャンルを作りたいなって思っています。やっぱり、誰かと競い合うところには行きたくない人間なんですよね。

——自分でルールを決められる新しい何かを作る。お笑いに限らず、仕事にも通じる話だと思います。

岩井:まあ、難しいとは思いますけれどね。特に日本は「うまいこと」が評価されるじゃないですか。何か新しいものを生み出すというよりも、枠や型があって、その中での細かさや繊細さが評価される。絵でもなんでも。

何かを生み出すヤツらばかりのほうに行ってやるほうが大変そうとは思うけれど、僕はそっちに行きたいですね。

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(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

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