『万引き家族』リリー・フランキーさんインタビュー・最終回

リリー・フランキー「想像してなかった未来のほうが面白い」【万引き家族】

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る
リリー・フランキー「想像してなかった未来のほうが面白い」【万引き家族】

カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)に輝いた是枝裕和監督の最新作『万引き家族』。リリー・フランキーさんは万引きを繰り返す一家の父親・治を演じ、軽妙な中にも危うさをちらつかせる強烈な存在感で見る者の心をざわつかせます。

俳優として高い評価を得るリリーさんですが、そのプロフィールには、イラストレーター、小説家、写真家……といくつもの肩書きが並びます。「リリー・フランキーって何者?」 そんな会話を巷で何度耳にしたことか。そのとらえどころなさや飄飄(ひょうひょう)とした佇まいが「余裕のあるカッコいい大人」として若い女性からも人気です。

最終回は、「将来の不安」をテーマに話をうかがいました。

【第1回】リリーさん、“いい大人”ってどんな大人ですか?
【第2回】「ベテランよりルーキーのほうが楽しい」

昔より今のほうが将来が怖い

——「リリーさんみたいに自由でカッコいい大人に憧れる」という声も男女問わずよく聞きます。

リリー・フランキーさん(以下、リリー):ろくなことないですよ(笑)。

——いや、ホントにいるんです(笑)。けど、実際リリーさんのようにいろいろ挑戦して生きる人生って、怖いとも思うのです。それで食べていけるのかとか考えると、どうしても石橋を叩いてしまう。

リリー:食えるかどうか考えたらどんな仕事もどこかでそうだと思う。でも結局、ミュージシャンにしても、俺のまわりにいた役者さんでも、イラストレーターでも、やめなかった人はなんとか食えてましたよ。やめたら、食えなくなる。すごい才能がある人でもやめた人はいっぱいいるから、食えてる人=才能がある人じゃないと思う。

たとえば、美大に来てる人って、みんな高校のクラスでは一番絵の上手かった人たちなわけじゃないですか。だけど、美大に来てみたら、ほかに上手い人がいっぱいいる。

大学は興味のあるものを増やす場所だと思う。美大生から画家になる人のほうが、圧倒的に少ないんですよ。でも、それは当然だと思う。

——やめないのも、ある種の才能なのかなという気がします。若い頃のリリーさんも、食べていけるかどうかの不安は感じていましたか?

リリー:全然感じてなかったですね。

——それはすごいですね。

リリー:20代のときはホームレスみたいな生活していましたから(笑)、それより下は想像できない。だから将来は怖くなかった。今のほうが将来が怖いんじゃないですか。

——なぜ今のほうが怖いんですか?

リリー:今の生活を維持できなくなると自分が気分的に落ちるんじゃないか、みたいな。なんだか、恥をかくのが怖くなるんじゃないですかね、年をとると。

ある程度、歳を重ねた女の人が「結婚してないのが恥ずかしい」って言うのも、「結婚したい」「母親になりたい」ってことも当然の感情だと思う。

どんなアナーキーな生き方をしている人でも、そういう保守的なものを求めるところってあるでしょう? でも、相手の必要なことだから、物理的には話は進まない。

——そうですね。

リリー:なにかの戯曲で、「カネがなくなることばっかり考えてる人生は冬枯れだ」って言葉がありましたけど、もともと持ってない人のほうが希望はいっぱいある。

『万引き家族』の一家を見ても、貧乏くさいけど清潔感はあるんですよ。射倖心を持ってないし、身の丈で生きてる人たちだなっていう感じがします。

180426wotopi-0022

想像できなかった未来のほうが楽しい

——『万引き家族』の一家は刹那的ですけど、笑いが絶えない彼らの団らんの風景はちょっと羨ましくもあります。

リリー:先のことを考えると、みんな不安になるじゃないですか。大竹伸朗さんという画家の方が言ってたことがホントにその通りだなと思うんですけど、「先のことなんて考えない。みんな先のことをいろいろ考えてるけど、その通りになった人なんてひとりもいない」と。

確かにそうですよね。だから大竹さんは「ただ今日も絵を描く」って。先のことばっかり心配してると、この「ただ今日も絵を描く」の部分がなくなってしまうんでしょうね。

この話は、是枝さんの『そして父になる』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をいただいたときのスピーチでも思い出してしゃべったんですよ。

「20年前の自分に、『お前、20年後にアカデミー賞でスピーチしてるぞ』って言ったら『そんなわけないじゃん』って言うと思う」っていうこと。

自分の20年後だって、全然想像がつかないわけでしょ。

——行きつく先の想像がつかないほうが、働くのも面白そうですね。

リリー:でも、悪い方にも転ぶってことですから。何もしなきゃ何もない20年になりますからね。

「将来、わたしはどうなってるんだろう」って考えたって、3年後に死んでるなんてことは想像しないじゃないですか。

大竹さんが言う「ただ今日も絵を描く」っていうのは、その積み重ねが、全然自分も想像してなかった未来につながっていくってことじゃないですかね。考えてばっかりだと、手が動かなくなりますから。

180426wotopi-0018

(聞き手:新田理恵、写真:宇高尚弘/HEADS)

■映画情報
『万引き家族』
6月8日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。
配給:ギャガ
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

リリー・フランキー「想像してなかった未来のほうが面白い」【万引き家族】

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング