坂井真紀さんインタビュー前編

想定外の妊娠・出産が気づかせてくれたこと。坂井真紀『駅までの道をおしえて』に出演

想定外の妊娠・出産が気づかせてくれたこと。坂井真紀『駅までの道をおしえて』に出演

芸能生活27年、女優やモデルとして活躍を続ける坂井真紀さん。プライベートでは2009年に結婚し、41歳で娘を出産しています。

今年は、10月18日に公開の映画『駅までの道をおしえて』にも出演。愛犬の帰りを待ち続ける少女サヤカと、若くして別れた息子との再会を願うフセ老人。お互いのさみしさに寄り添う二人は、小さな奇跡とめぐりあう……そんな物語で、サヤカの母親役を演じました。

長くひとつの仕事を続けてきて見えた景色、プライベートとの距離感。私たちのすこし先をゆく先輩・坂井真紀さんに、ご自身のキャリアや“35歳からの歩き方”を伺いました。前後編でお届けします。

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子どもは親の鏡。ゆったり見守って、素直に向き合う

——今作で坂井さんが演じられた「お母さん」は、幼い娘に干渉しすぎず、その意思を尊重する姿がとても印象的でしたね。

坂井真紀(以下、坂井):私も演じながら「すごく勇気のある母親だなぁ」と思いました。私にも8歳の娘がいるので、やたらと先取りせずに、娘のことを信じ、じっくり見守ることは、日々のテーマ。だからこそ、演じた母子の“距離感”を素直に尊敬しました。

——坂井さんご自身は、どんなふうに娘さんと接しているんでしょう。

坂井:彼女が自由に過ごす時間を、できるだけつくってあげたいと思っています。いまの子どもって、習いごとで忙しかったり、外で遊ぶ場所が少なかったりするじゃないですか。そんななかでも、好きなことに接する機会を見つけてあげたい。たとえば我が家はベランダで亀を飼っているのですが、娘は亀の甲羅をなでたり、水槽を洗ったり、やり始めたらずーっとやっているんです。でも、彼女がそれに集中しているなら、止めない。気が済むまでやらせるようにしています。

——子どもが心ゆくまでやらせてあげる、って難しいですよね。坂井さんが子育てとゆったり向き合っているのが伝わってきます。

坂井:いやいや、そんなことないですよ(笑)。それは本当に、理想の話。現実ではやっぱり「早くしなさい」って言わなきゃいけないときもあるし、毎日テンパってます。でも、子どもは親の鏡だから、いやな言い方をしてしまったなと思えば素直に謝るとか、そういう小さな積み重ねを大切にするようにはしていますね。

劇中より

劇中より

想定外の妊娠・出産で、未来に思いを馳せるようになった

——若いころからずっと第一線で活躍してこられた坂井さん。そもそも、結婚や出産などについては、どのように考えていらっしゃったんでしょうか。

坂井:じつは、想定外だったんです。結婚したのは39歳で、子どもを産んだのは41歳。女優という仕事が好きで、この仕事は一生ものだなと思えてきたころだったので子育てをする自分を思い描く機会は少なかったような気がします。でも、想定外だったとはいえ、ご縁があって家族ができたことは本当によかったです。それは心底思いますね。なんだろう……産んではじめて気づけたことがたくさんあります。

——たとえば?

坂井:なんというか、人生をもう一度やり直せているような感覚があるんですよね。子どもがなにかを拾いたくて、地面ばっかり見ながら歩いているとするでしょう。そうすると、私も普段は前だけ見てスタスタ歩いてるのに、子どもに付き合ってゆっくりと、地面を見ながら歩くわけです。そういう時間の流れが、過ぎ去った人生ともう一度向き合わせてくれる気がしたり、とか。

——童心を思い出す、に近い感覚ですかね。

坂井:そうかもしれません。あとは「自分が社会の役に立てることってなんだろう?」みたいなことを、まじめに考えるようになりました。それまではのほほんと生きていたけれど、守るべき命が目の前に現れたことで、すごく先の未来に思いを馳せたりして。そういうことも考えられるようになったのは、私の人生の中で本当に幸せなことだと思っています。

——「想定外」からいろいろな思考の変化を経て「心底よかった」と思えているのは、とても素敵ですね。でも、仕事に支障が出るかもしれないとか、葛藤はありませんでしたか?

坂井:それは全然なかったです。たぶん「女優はこうでなければならない」みたいな固定観念がなかったからかもしれません。ただ「自分ひとりが生きていくだけでも大変なのに、この世の中に新しい命を産み落として、その人生を預かるなんてできない……!」という思いはありましたね。でも、いまはその気持ちも和らいでいます。

——まずは「案ずるよりも産むが易し」だったんですかね。

坂井:そうですね。そして「私に授かった命を大切に育てることが、私たちの地球のいい未来を作ることだ」と考えるようになりました。そう思ったとき、なんかちょっと、自分自身が生きている意味みたいなものをもらえた気がしたんですよね。昔はわりとシニカルなタイプだったのに、私がこの世に生まれたことまで、素直に感謝できるようになりました。

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役の引き出しと人生の引き出しはつながっている

——プライベートの大きな変化を経て、お仕事にも影響はありましたか? 20代のころは主役やそのお友達役だったのに、30代以降は母親やおばちゃんの役も増えてきている。そういったオファーの変遷は、どんなふうにとらえていらっしゃるんでしょう。

坂井:30代のころはいまよりもうちょっとギラギラしてたから(笑)「そっか、主演じゃないのかぁ」とか、そういう負けん気みたいなものが強かったと思います。でも、40代に入ってからは思わなくなりましたし、もしかするといまが一番楽しいかもしれない。自分がこれまで積み重ねてきたことに対して「坂井さんにこの役をやってもらいたい」と思っていただけることが、本当に“作品とひとつになれること”だなぁと思うようになってきたんです。私の生きてきた人生の引き出しが……いや、そんなに数はないんですよ?(笑)でもそのいくつかが作品に役立てるなら、すごくうれしいんですよね。

——今回のように自分で演じた母親役が、今度は坂井さんご自身の引き出しになる、みたいなこともありそうです。

坂井:そうですね。今年もいろんなパターンで、すごい数のお母さん役をやりました。いろいろな母親を演じること自体とても楽しいですし、そういう体験をするなかで「この作品の家族は、ここが素敵だな」「でも、うちの家族はこうなんだ。これはこれで、いいところがいっぱいある」みたいに思える瞬間もまた楽しかったり。思春期の子供を持つ母親役のときは、いつかの自分を想像したり。役柄を通して、理想の母親像を学んだり、いい時間を過ごせているなと思います。

『駅までの道をおしえて』

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10月18 日(金)より全国公開
企画・製作:GUM、ウィルコ
配給・宣伝:キュー・テック
©2019 映画「駅までの道をおしえて」production committee

後編は10月18日公開予定です。
(スタイリスト:伊藤信子、ヘアメイク:ナライユミ、取材・文:菅原さくら、撮影:宇高尚弘、編集:安次富陽子)

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