マンガ家の西原理恵子(さいばら・りえこ)さんが4月15日、「セシオン杉並」(東京都杉並区)で開催された「区民健康フォーラム2018」に登壇し、「自立した女子の生き方、育て方」をテーマに講演しました。
西原さんが去年6月に発売したエッセイ『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(角川書店)は累計27万部を突破。発売から約1年たった今も書店に平積みされ、売れ続けています。
講演は同書の制作に携わったフリーライターの瀧晴巳(たき・はるみ)さんが聞き手となり、西原さんとの対談形式で行われました。
講演の模様と西原さんのインタビューを全5回にわけてお届けします。
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子どもを怒らないので精一杯だった
瀧晴巳さん(以下、瀧):西原さんには上は男の子、下の女の子のお子さんがいらっしゃいますが、小さいころは男の子にはこういうふうに、女の子にはこういうふうに育てようとか考えていたんですか?
西原理恵子さん(以下、西原):そんな余裕なかったですね。(元夫の鴨志田穣さんが)アル中で暴れているときにそんな余裕ないですよ(笑)。それこそ食事はお総菜でした。仕事して子どもを育てているときに食育なんてできなかったですね。
子どもを怒らないので精一杯、八つ当たりしないので精一杯。手を抜くとこは抜く。一番抜いていいのは食事だった。子どもが事故に巻き込まれないように見ているので精一杯で手作りなんてできないですよ。
私が料理上手になったのは子どもが中学生になったときからです。子どもが自分のことを自分でできるようになってから、自分もちゃんと下ごしらえをするお料理を作るようになりました。子どもが小さいときはまずは生命とか健康を守らないといけない。で、仕事もしている。それなのに(世間では)どうして「食育、食育」言うのかなって。
世界中を旅してわかったのが、ほとんどのお母さんはお料理なんて作っていませんよ。手作りじゃないと子どもがグレるとかバカになるって言うけれど、韓国とか香港とかみんな外食で日本より学力高いです。ドイツなんて台所で火を使わないですからね。朝から晩までチーズとパン切るだけですから。ドイツのキッチンがキレイなはずだよって(笑)。
お母さんたちはがんばりすぎ
瀧:それでも「怒らない」というのは大事にされていたんですね。
西原:怒らないっていうのを決めたのは、この状況で怒ったら地獄になっちゃう。私が怒られて育ったから。父親と母親は仲が悪かった。母親が再婚した二番目の父親はギャンブル依存症で、最初の父親はアルコール依存症でした。それで母親が怒鳴り散らしながら子育てをしていたんです。
それでも私がここまで育ったのは、母親が何があっても仕事をして育ててくれたから。どんなクソみたいな男に引っかかっても仕事を辞めなかったから。
だったら、私はもう一つ上を目指そうと。「怒らない」っていう。まあアル中の夫と結婚したんだから、同じことになっているんだけれど(笑)
瀧:でもお子さんが何かしたときに「怒らない」というのは難しいのでは?
西原:怒る原因が見えるから怒るんですよね。怒るのって、一生懸命に作ったお料理を残されたりとか、キレイに掃除した家を汚されたりするからでしょ。だったら、怒る理由を排除しちゃえばいい。
私は「勉強しなさい」をやめました。朝に「早くしなさい」って怒るのであれば、遅刻していい。私は子どもを怒るために仕事をがんばってきたんじゃないから。
手作りのお料理が残されて怒るんだったら、お惣菜を買ってくればいいの。残ったものを自分が食べればいい。
そういう感じで怒らないで育ててきたつもり。成功したかどうかはわからないんですけれど。
瀧:「早くしなさい」って言っても子どもはモタモタするし、寄り道するし、だいたい同じことで怒っちゃうんでしょうね。
西原:同じ時間帯で喧嘩しているってことを発見したんです。夕飯前、お風呂に入る前、寝る前。一番喧嘩するのは月曜の朝。
でも「卒母」したときに朝起きないって決めた。(高校生の)娘には冷蔵庫に食べ物入っているんだから食べなさいって。お弁当はおばあちゃんが作ってくれているか、学食で食べるか。
更年期がきたので夜中に眠れなくて、朝のお弁当と朝食のために起きると6時起きになっちゃう。それをやめると仕事がちゃんと回るようになってきたので、これは受け入れてもらおうと。(娘は反抗期なので)お互いにWin−Winでいいかなと。これなら朝から顔も合わせないしって。
瀧:西原さんは「お母さんたちは十分がんばっているよ」って言ってくれたんですよね。
西原:そうです、お母さんはがんばりすぎです。がんばりすぎはやめましょう。
※次回は4月25日(水)更新です。
(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子)