新年あけましておめでとうございます。2023年が皆さまにとって健やかな1年になることを願うとともに、この連載では「美食を手軽に楽しもう」をテーマに、“ちょっと気になるあの食べ物”をご紹介してまいりたいと思います。新年第一回目は、新年に味わうおめでたい食べ物として日本でもじわじわ人気が出てきている「ガレット・デ・ロワ」の魅力をご案内したいと思います。
ガレット・デ・ロワは新年を祝うフランスの伝統菓子
日本でも年末から年始にかけて見かける機会が増えてきたガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)は、新年を祝うフランスの伝統菓子。「galette」とは円形のケーキ、「roi」とは王様を意味しています。つまり、「王様のケーキ」ということ。もともと古代ローマで太陽の再来を象徴したガレットが、キリスト教によってイエスを祝福するお菓子になったという非常に歴史深い食べ物なのです。
厳密には、1月6日の公現祭(元旦後最初の日曜日。イエス・キリストの顕現を祝って東方の三博士・Rois magesが来訪したことを祝う日。)を祝う菓子。フランスやベルギー、オランダなどでは家族や友人が新年に集まって、ガレット・デ・ロワを囲んで楽しいひとときを過ごす習慣が定着しています。フランスではパリのエリゼ宮(Elysee Palace、大統領府)で毎年行われるイベントが有名で、毎年1月5日に、直径1.2メートル、150人分の巨大ガレット・デ・ロワが登場。今年はマクロン大統領が切り分けたことで話題になりました。
厳密に言えば、ガレット・デ・ロワは2種類あり、フランス北部ではパイ生地にフランジパーヌクリームが詰まったガレットを、南部から南東部にかけてのプロヴァンス地方では、砂糖漬けのフルーツが入ったブリオッシュ風ガレットを食べます。日本で多く出回っているのは、前者が主流。フランジパーヌとは、アーモンド、バター、卵、砂糖を使ったクリームで、カスタードとアーモンドクリームが融合したシンプルながらもふくよかな味わいが特徴です。
※最近では伝統的なフランジパーヌの他、チョコレートやフルーツ、栗などの新しい味覚を融合したガレット・デ・ロワも登場しています。
それでは次に、食べ方について。楽しみ方のゲームルールのお話に移りましょう。
「王様を引き当てる」ためのお菓子を楽しもう

さまざまなフェーブがあり、毎年集めるのが楽しい。
ガレット・デ・ロワの大きな魅力は、おいしさだけではありません。フランスでは家族や友人が新年に集まって、ガレット・デ・ロワを囲んで楽しいひとときを過ごす習慣があります。そしてその時にポイントになるのが、「フェーブ」という飾り物。18世紀はキリスト生誕群像を表した磁器人形でしたが、最近では動物、お菓子、雑貨などに変化。色とりどりのかわいい存在感は集めるのが楽しくなり、フェーブコレクターも多く存在しているようです。
食べ方のルールは、その場にいる一番年下の人がテーブルの下にもぐり、見えない状態で一切れずつ誰に配分するかを決めます。フェーブが当たった人がガレットと一緒についてくる紙製の王冠をかぶり、その日一日の王様もしくは女王様になれるのです。また、フェーヴが当たるとそれから1年間は幸福が訪れるとされています。

切り分けたガレットの中にフェーブが入っていたらアタリです!
年々日本でも盛り上がりを見せているガレット・デ・ロワ。1月いっぱいは購入可能ですから、気になる方は来年からとは言わず、今年から楽しんでみてはいかがでしょうか? 主な購入先はホテル、パティスリー、ベーカリーなど。中にはすでに予約で完売のお店も出ています。最後に私がこれまで食べたガレット・デ・ロワの中で心に残ったオススメ品を3つご紹介したいと思います。
心からオススメしたいガレット・デ・ロワ3選
1 帝国ホテル エピスリー ガルガンチュワ

ため息が出てしまうほど仕上がりが美しい。
まず一つ目は、毎年フェーブが変わり、予約完売が続出することで有名なのが帝国ホテルです。パイとクリームの風味や食感すべてにおいて完璧な仕上がりは食べればすぐに納得することでしょう。最高級のガレット・デ・ロワを探している方に自信を持ってオススメしたい極上品です。
【販売期間】12月27日(火)~2023年1月22日(日)
【価格】4,630円(税込)
※店頭・お電話・インターネットにて予約可能。3日前までに要予約。
2 Picard(ピカール)

冷凍タイプ。オーブン180度で45分焼く。
気軽に試したい方には、フランスの冷凍食品専門店Picard(ピカール)のガレット・デ・ロワがオススメです。1000円台という価格からは想像できない本格的な味わいで、アーモンドの香りが特徴的。フェーブは6種(兵隊、バレリーナが各3色)から自由に選べるようになっています。
【価格】1,399円(直径18cm)(税込)
3 ゴンドラ(東京・九段)

パウンドケーキが名物の超老舗洋菓子店ゴンドラのガレット・デ・ロワ。
最後にオススメするのは、お店に足を運ぶたびに魔法のような幸福感に包まれる、東京の老舗洋菓子店「ゴンドラ」です。昭和初期から100年続く名店で、飲み物がなくても食べられるパウンドケーキが看板商品。素材や製法にこだわり続けるお店が焼き上げるガレット・デ・ロワは格別の味。フェーブを選ばせてもらえる楽しみも魅力で、毎年通い続けています。
【価格】3,000円(税込)
本日の美食・成り言葉
おめでたい焼き菓子を楽しみながら、1年の幸福を願いましょう。