『9月1日 母からのバトン』石井志昂さんインタビュー・後編

「学校に行かなくても人生はちゃんと続く」学校がしんどいあなたへ

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「学校に行きたくないあなたと、かつて子供だった私たちへ」
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「死なないで、ね……どうか、生きてください……」「今日は、学校に行けない子どもたちが大勢、自殺してしまう日なの」

亡くなる2週間前の2018年9月1日、窓の外に向かってそうつぶやいていたという樹木希林さん。そんな母の言葉をきっかけに娘の内田也哉子さんが、不登校について考え、対話し、その末に紡ぎ出した言葉をまとめた『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)が8月2日に発売され、一週間で7万部を突破。現在*、累計8万部と反響を呼んでいます。*8月22日現在。

同書は、生前の樹木さんのインタビューとトークセッションの第一部と、内田さんが不登校の関係者や当事者と対談した第二部で構成されています。

2014年に樹木さんに単独インタビューを行い、今回、内田さんとも対談した『不登校新聞』編集長の石井志昂(いしい・しこう)さんに話を聞きました。

【前編は…】僕が「不登校」というバトンを次の世代に渡したくない理由

『不登校新聞』編集長の石井志昂さん

『不登校新聞』編集長の石井志昂さん

「9月1日」に初めて言及した著名人が樹木希林さんだった

——不登校新聞は1998年5月1日に創刊して以来、20年間ずっと「9月1日」を主軸に置いて取材をしてきたそうですね。私の個人的な感覚で恐縮なのですが、「9月1日」が注目されるようになったのは最近ですよね?

石井志昂さん(以下、石井):そうですね、内閣府が18歳以下の自殺を日付別に集計したところ、9月1日が突出して多かったことがデータとして裏付けられたのが2015年だったんです。それについて初めてコメントした著名人が樹木さんなんです。本の第二部のトークセッションの内容で、これがおそらく著名人が9月1日について話す初の流れですね。

——そうだったのですね。

石井:正直、2015年にその流れができる直前はまでは僕自身、諦めていた感覚があるんですよね。9月1日の自殺は報道もたくさんあったのですが、裏付けもされてなかったし、8月末に中学生の自殺が多いことをデータで出したり、訴えたりしていたのですが、何一つ伝わらない。

「子どもが死ぬって世間的にショックなことじゃないの?」って思っていたので、内閣府の調査が出て樹木さんはじめ著名人や芸能人の方が発信することで、この問題が広がっていった。“バトン化した”ということですよね。メッセージがバトン化した瞬間っていうのは、決して喜ばしいことじゃないのですが、感慨深いものはありましたね。

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——当事者からの反響はありますか?

石井:9月1日に関しては、当事者の間では賛否両論ありますね。「よくこれをフィーチャーしてくれた」「すごく元気になった」という声がある一方で、今、本当に苦しくて死にたい人からは「もうそっと死なせてくれ」という声がある。

——不登校をめぐる報道を見ていると、「学校に行かなくていいなんていうのは無責任じゃないか」という声もありますね。

石井:「不登校」をテーマにしたテレビ番組の収録である有名人の方が言っていたことなのですが、その方のお子さんがイジメを受けていたそうで……。その方はママ友から、自分の子どもがいじめられていることを聞いたそうなのですが、そのときに「学校を休んでいいよ」って言えなかったらしいんです。その先がどうなるか分からないから責任が持てないって。

私はその話を聞いてこれが親としての本音なんだろうなと思ったんです。「死ぬくらいなら学校に行かなくていい」ということは伝わったけれど、「ただしうちの子は別だよね」って。

そういう意味では、私自身も『不登校新聞』もまだまだ当事者やその親御さんに届く“言葉”を持っていないんだなって思いました。だからもっと取材して当事者の声を出していかなければと思いました。

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学校に行かなくても人生はちゃんと続く

——内田さんとの対談はいかがでしたか?

石井:すごく緊張しましたね。私自身は中学2年生のときに不登校になったのですが、まさかそのときの不登校がどう転んだら、内田也哉子さんと対談することになるんだと。タイムマシンで当時の僕に伝えてあげたいです(笑)。

内田さんからは、樹木さんの子育て観やそれに対して内田さんがどう感じていたのかも聞けて、メディアを通してはなかなか見えてこない、人としての内田さんや樹木さんが見えたなあと思いました。

——今のお話って、14歳のときの石井さんだけではなくて、もしかしたらいま苦しい思いをしている子どもたちにも伝えたいことですよね。

石井:本当にそう思います。ほかの不登校の当事者も言っていましたが、「死にたい夜を越えて、何年かすると不思議なことが起きるな」って。生きてて良かったなということに出会える。想定外のことが起こるんだなって。

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——前編の記事で「不登校」というバトンは渡したくないとおっしゃっていました。

石井:学校に行くのが正常で、学校に行かないのが異常とみんなが思っているから「不登校」という言葉があるわけで。だから、別にもういらないですよね。学ぶ楽しさやみんなと何かをして楽しいというのは学校でなくてもできるわけで。

しかも、まったく学校に行かないことと絶対に学校に行くことの間にもっとグラデーションがあってもいいのかなと。週3は学校に通って、週2は家で学ぶとか、そういう幅さえ許さないというのはちょっと極端だよなって思いますね。

——この記事は8月の後半に掲載する予定です。新学期が憂鬱(ゆううつ)だったり、学校に行きたくないと思ったりしている人たちへのメッセージをお願いします。

石井:私が不登校になったときに悩んでいたのは、学校に行かなくなったらこの先の人生はないと思っていたんです。ところが、公立の小中学校は学校に1日も行かなくても卒業できることがあとから分かった。学校に行かなくてもちゃんと人生は続いていく、大人になっていくということをぜひ信じてもらいたいなと思っています。

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(聞き手:ウートピ編集部、堀池沙知子)

■番組出演情報

『不登校新聞』編集長の石井志昂さんが8月26日(月)午後10時から放送される「逆転人生」(NHK総合)に出演します!

【司会】山里亮太、杉浦友紀【ゲスト】不登校新聞 編集長…石井志昂【出演】中川翔子、北斗晶

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