「毎晩の寝つきが悪い」「夜中に目が覚めてしまう」「目覚めがスッキリしない」など、睡眠の悩みはつきもの……。特に、暑い夏の夜は、「蒸し暑くて寝苦しい」といった悩みもプラスされ、睡眠不足に陥っている方も多いのではないでしょうか。
医学博士で内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医の山下あきこ医師による著書『こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる―医師が教える、薬に頼らない3つの方法』(共栄書房)が7月11日に発売されました。同書では、不眠で悩む人に向けて、ぐっすり眠るためのコツや睡眠のしくみなどを紹介しています。
そこで今回は、山下医師に、執筆のきっかけや良い睡眠をとるコツ、睡眠とホルモンの関係などについてお話を伺いました。

山下あきこ医師
“眠れる習慣”を身につけよう
——本を読んで、“眠れる習慣”をつけることが大事だと感じました。まずは、本を書いたきっかけを教えていただけますか?
山下あきこ医師(以下、山下):これまで23年間外来診療を行ってきたのですが、「眠れないんです」と眠りに関する困りごとを聞かない日はありませんでした。しかも、みなさん、解決策を知らないし、知ろうともしてない感じがありました。
年齢が上がれば上がるほど、「私は薬がないと絶対に眠れないんです」と薬依存になってしまい、80歳とか90歳になっても、若いころと同じ薬を何十年も飲み続けてる人もいらっしゃいます。年齢が上がるにつれて体の代謝も落ちてくるし、本当に危ないことなのですが、少しずつ薬を減らそうと思っても、すでに遅しなんです。「薬がなくて、眠れなかったらどうするんですか!?」とお怒りモードになっちゃうくらい、薬に依存しちゃっている。
そうなる前に、早いうちから“眠れる習慣”をつけることが大切です。完全にはうまくいかなくても、「生活習慣で整えることができる」「努力するだけの価値がある」ということを、多くの人に知っていただきたいと思って、この本を書きました。
「長袖の麻のパジャマがおすすめ」夏の快眠習慣
——早速、お話を伺っていきたいのですが、連日暑い日が続いています。普段はぐっすり眠れているという人も熱帯夜で寝苦しい思いをしている人も多いと思うので、夏の睡眠のポイントについて教えてください。
山下:まず明日からできることとして、夏のパジャマの素材は麻素材の長袖がおすすめです。麻は吸水性が高く、汗を吸い取ってくれます。麻の吸水性は、綿の4倍、絹の10倍も高いと言われています。繊維も細く硬さがあるので、肌に貼りつかずサラッとした感覚があります。さらに、吸った汗を発散する性質、放湿性にも優れています。
——長袖というのは?
山下:肌が露出している部分は、汗が皮膚に残ってベタつきの原因になります。ベタつきの不快感や夜中の眠りを浅くしてしまいます。化学繊維や綿の長袖は暑く感じるかも知れませんが、麻のパジャマなら長袖でも快適に眠ることができるはずです。
湿度も下げることを意識して
——ほかに良い睡眠のためのポイントはありますか?
山下:湿度を下げることですね。冬は加湿をして湿度を上げたほうがいいのですが、夏は除湿をして湿度を下げたほうが涼しく感じます。冷房が苦手な方は、寝る前にしっかり除湿をしておくといいですね。あとは通気を良くすることもおすすめです。
——扇風機を使うのも効果的ですか?
山下:冷房で冷えすぎることもないですし、効果的だと思います。ただし、あまり近過ぎないところに置きましょう。
——夏でも布団やタオルケットなどを、体にかけて寝たほうがいいのでしょうか?
山下:そうですね。通気性が良いものを選んで、あまり湿気がこもらないようにしてください。もし、寝具が暑く感じる場合は、おなかだけにかけて、足だけ出してみるとか。おなかを冷やしてしまって循環が悪くなると、体に熱がこもってしまう原因にもなります。おなかの部分を温めて血の巡りを良くすることで、手足の先の広がった血管から、熱を逃がしてあげましょう。
——マットレスの選び方も大事ですか?
山下:大事です。寝ている間は、どうしても寝返りを打つので。横向きになったときに下側のほうが圧迫を受けるので、その負担が軽くなるようなマットレスを選ぶのが良いと思います。自分に合ったマットレスを使うことで、寝つきが浅くなるのを防ぐことができます。
——ちなみに、冷房を使う場合は、何度ぐらいがおすすめですか?
山下:何度というのが難しく……。エアコンの効き具合だったり、その日の外気温だったり、部屋の広さだったり、気密性だったり、何人で寝ているかにもよって、温度や湿度が変わってきます。自分が心地いいと思う設定でいいと思いますよ。