「ソーシャル・ジェットラグ」とは? 岡島義さんインタビュー 第1回

しっかり寝たはずなのに、月曜の朝からダルいのはなぜ? 睡眠の専門家に聞いてみた

しっかり寝たはずなのに、月曜の朝からダルいのはなぜ? 睡眠の専門家に聞いてみた

睡眠不足で体調不良になるのはわかるけど、休日に十分睡眠をとったにもかかわらず、なぜか月曜日の朝から体がだるい……、そんな悩みを抱えている人は少なくありません。その原因のひとつとして、知っておきたいのが「ソーシャル・ジェットラグ」です。

ソーシャル・ジェットラグ とは、“平日と休日の就寝・起床リズムのずれ”を、学術的に呼んだもののこと。

ソーシャル・ジェットラグの基本について、睡眠行動科学研究の第一人者・岡島義(おかじま・いさ)さんにお話を伺いました。

okajima1-3

その症状、ソーシャル・ジェットラグかも

——基本的な質問なのですが、ソーシャル・ジェットラグとはなんですか?

岡島義さん(以後、岡島):「ソーシャル」は「社会的」、「ジェットラグ」は「時差ボケ」、文字通り、ソーシャル・ジェットラグとは「社会的時差ボケ」のことです。

本来の時差ボケは、時差がある国に行った際、到着後しばらくの間、現地の時間に体のリズムが合わずに、夜眠れなかったり、日中頭がぼんやりしたりする症状のことですが、ソーシャル・ジェットラグは、日常生活を送っているにもかかわらず、社会の時間に体内時計が合わなくなり、時差ボケと同じような症状を引き起こします。

——どういう生活をしていると、ソーシャル・ジェットラグになってしまうのでしょう。

岡島:大きな原因は、平日と休日の就寝時間と起床時間のずれにあります。また、平日と休日の睡眠時間の差によっても起こります。

多くの人は、休日前になると夜更かしをしてしまい、寝る時間がいつもより後ろにずれがちです。寝る時間がずれれば、起きる時間もずれてしまいます。しかも、目覚まし時計をかけずに寝坊できる休日は、睡眠時間も長くなりがち。

このずれが2日以上続くと、体内時計が平日のリズムから休日のリズムに切り変わってしまうと言われています。

——自分の部屋にいながら、海外旅行をしている感じというわけですね。

岡島:まさにその通りです。睡眠不足による体への影響はよく知られていますが、体のリズムが崩れることでも、心身に影響を及ぼすことがわかってきました。

十分に睡眠をとったにもかかわらず、月曜日の朝、起きたら体がだるかったり、「会社に行きたくない」と憂うつになったりすることが続くと、「もしかして、うつ病かも……」と考えてしまいがちですが、その前に睡眠時間のずれからくるソーシャル・ジェットラグを疑ってみましょう。

okajima1-2

リズムを取り戻すのは、木曜日の朝?

——平日の睡眠不足を土日で取り戻そうとする人は多いと思いますが、それはやめたほうがいいということでしょうか? 

岡島:その通りですが、もっとも体によくないのが寝不足です。「寝溜め」や「睡眠貯金」はできないという話を聞いたことがありますか? いつもよりも多く寝たからといって、次の日は睡眠時間が少なくても大丈夫というわけにはいきません。

もし週末の「寝溜め」ができている、週末にたくさん寝れば月曜日に元気になると思い込んでいる人は、単純に平日が寝不足ということであり、それは「寝溜め」ではなく、寝不足を解消しているだけのことです。

——貯めているのではなく、補っているというイメージですね。

岡島:はい。どうしても平日は自分の体に必要な睡眠がとれないから、休日に長く寝てしまう。そのような人は、単純に普段の睡眠時間が足りていない証拠です。

ただ、平日と休日の睡眠パターンのずれ、すなわちソーシャル・ジェットラグによって、週末にどんなに睡眠をとっても結果的には本調子にはいたりません。

——睡眠のずれが2日続くと体のリズムが崩れるというお話でしたが、1日なら大丈夫なのですか?

岡島:絶対に大丈夫、というよりは「まだまし」ということです。また、2日続いても、時間のずれが1時間程度ならば、大きく体のリズムが崩れることはありません。

しかし、2時間以上のずれが生じ、かつそれが2日続くと、それまで安定していた体内時計が乱れてしまうのです。例えば、平日の就寝が12時で起床が6時、休日の就寝が2時で起床が8時だと、2時間のずれが生じます。さらに、起床時間が9時や10時になり、いつより2〜3時間多く寝ていれば、もっとずれは大きくなります。

そうして、週末にずれてしまった体内時計を、日曜日の夜に戻そうと試みるけれど、一度ずれてしまった体内時計は、簡単には戻りません。ソーシャル・ジェットラグの解消は、木曜日の朝までかかります。

——そんなにかかるんですか! となると、1週間のうち土曜日〜水曜日までの5日間が時差ボケ状態ということになりますが。

岡島:はい、1週間の大半が時差ボケ状態ですね。調子がいいなと思えるパフォーマンスが発揮できるのは木曜日の朝から。そして、調子が戻ってきたなと思ったら、金曜日の夜に再び寝る時間がずれて体内時計が崩れ、日曜日までに修正できずに、またずるずると水曜日まで時差ボケ状態が続き、木曜日の朝に調子が戻ってきたと思ったら、金曜日の夜にまた崩すということの繰り返しです。

——なるほど。いつも調子が悪いなと感じている人が多い理由がわかった気がします。

岡島:ずれてしまったリズムを立て直すのにかなり時間がかかるため、平日も休日も関係なく、規則正しい生活を心がけることが大切です。

okajima1-1

第2回は9月16日(月)公開予定です。
(取材、文:塚本佳子、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

しっかり寝たはずなのに、月曜の朝からダルいのはなぜ? 睡眠の専門家に聞いてみた

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング