熱中症体験者に習う予防策/第2回

プール、テレワーク…仕事中に熱中症体験談から学ぶ予防法は?【専門医に聞く】

プール、テレワーク…仕事中に熱中症体験談から学ぶ予防法は?【専門医に聞く】

熱中症の体験談をもとに、適切な予防策について糖尿病専門医・臨床内科専門医の福田正博医師に連載でお話を聞いています。前回(第1回)は、日ごろから慣れ親しんでいる習慣や趣味の最中に発症したケースを紹介しました。今回は、仕事中に起こった例から予防法を教えてもらいましょう。

福田正博医師

スイミングスクール講師が帰り道で熱中症に…

水分補給にビールはNG

<42歳・女性>

「仕事帰りに飲み屋で冷たいビール」を毎日楽しみに働いています。仕事柄、プールでも熱中症の危険性があることは知っているので、生徒たちには注意し、20分ごとに水分補給をしてもらっています。でも自分はお酒が好きで、水やスポーツドリンクを飲むとお酒がまずくなるので昼食時以降はあまり飲みません。

少しきつめの水泳をした日、17時というのにまだ暑いなあ、疲れたなあと思いながら炎天下を15分ほど歩いて行きつけの居酒屋へ。いつものようにビールをジョッキで3杯ほど飲んだところで、なぜか「おいしくないなあ」と思いました。帰り道、めまいと頭痛と呼吸がつらい感覚があり、体中に熱気と湿気がこもったような暑苦しさ、視界は半分ぐらいに狭くなって駅のベンチに倒れ込みました。駅員さんが気づいてくれて、救急搬送されました。

とても怖くて、パニックです。意識はうっすらあり、病院では名前と住所を答えたそうです。苦しさが治まって我に返ったときには、病院の寝台で全身を大きな保冷剤のようなもので冷やされていました。寒く感じると体温が平熱に戻っていて、点滴をして翌朝には退院しました。

日中は連日プールで過ごしているので、涼しいからか、水分補給をしなくても平気だと思っていました。しかし、これからは生徒とともに水を飲みます。お酒も減らす決心をしました。

福田医師:プールで長く泳いだり遊んだりしているときは水分補給をしないのと、暑さを感じないのでのどの渇きに気づきにくくなります。「水分は、のどの渇きを感じる前に補給する」ことが熱中症予防のコツのひとつです。30分に1度は「計画的」に、水や低カロリーのスポーツドリンク、麦茶などで水分とミネラル補給をしてください。

また、お酒には利尿作用があり、飲めば飲むほどに尿となって水分排出量が増えます。さらに、体内ではアルコール分解のためにも水分が消費されています。ビールを水分補給だと思い込んでいる人も多いのですが、実は、「1リットルのお酒を飲むと、1~1.2リットルの水分が失われる」ことを覚えておいてください。

この方の場合、日中に水を飲まずに夜にビールをたくさん飲んだことで、体内で水分が不足して「脱水」が進んだと考えられます。夏だけではなく、「飲酒時はお酒の量より2割ほど多めに水分をとる」ことが、熱中症と生活習慣病を予防するコツです。

テレワーク中に扇風機使用で熱中症に…

<47歳・女性>

昨年の9月初旬、気温は30度を切っていましたが湿度は高く蒸し暑い日でした。テレワーク中で、節電のためにエアコンは使わずに、扇風機で仕事をしていました。

仕事が忙しく、ランチ抜きでパソコンに向かっていたところ、モニターの文字や画像がぼやけだして、疲れ目かなと思うも、頭痛がひどくて、頭や首、胸、脇から汗が吹き出す感じがします。更年期障害の症状かと思って椅子にもたれると、吐き気がしてトイレにかけこみました。おなかも痛みます。リモートで上司に伝えると、「熱中症では。経験があるので」と言われました。部屋の温湿計を見ると、気温32度、湿度80%を超えていました。

すぐにエアコンをつけて、隣室の息子に電話をして保冷剤やスポーツドリンクを持ってきてもらい、2時間ぐらいでけん怠感以外は治まりました。自宅での熱中症が多いと報道されていますが、自分がなるとは…。

福田医師:東京消防庁の報告では、救急搬送者の人数は高温の日のほか、「気温が高くなくても、湿度が高い日」にも多いことがわかっています。自治体などが高齢者に「自宅でもエアコンを使おう」と呼びかけていますが、高齢者でなくても、軽症の熱中症になる例は後を絶ちません。

日本の夏はすでに残暑という感覚はなくなり、都会では10月中旬まで猛暑や夏日が続きます。台風に伴うフェーン現象の高温高湿下のときもあります。部屋でデスクワークだと暑さを感じにくいかもしれませんが、テレワーカーの熱中症発症は増えています。夏の室温は25度前後に、湿度は50~70%に管理してください。ビジネスパーソン世代も、気温だけではなく湿度が高いときはエアコンを活用し、マメに水分補給をして熱中症を予防しましょう。

聞き手によるまとめ

プールなど一見涼しい場所にいるとのどの渇きに気づかないことはよくあります。その場合でも30分に1度は水分補給を、また、お酒を飲むときは必ず水分補給をして脱水を防ごうということです。さらに、気温が高くない室内であっても、湿度が高いと熱中症のリスクがあることも覚えておきたいものです。

(構成・文 藤井 空/ユンブル)

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