新薬登場で治療しやすくなった! 耳鼻咽喉科専門医に聞く、花粉症のケア最前線

新薬登場で治療しやすくなった! 耳鼻咽喉科専門医に聞く、花粉症のケア最前線

花粉症を根治する健康保険適用の治療法があり、先ごろ新タイプの飲みやすい薬も登場したというニュースを耳にしました。

耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長によると、「『舌下(ぜっか)免疫療法』という治療法です。用いる内服薬は液体タイプでしたが、錠剤タイプの新薬が登場して服用しやすくなりました」と話します。

詳しく聞いてみました。

舌下免疫療法の薬に「錠剤タイプ」が登場

「花粉症を根治する方法」のニュースについて、遠山医師はこう説明をします。

「医療機関で花粉を治療する方法のひとつに舌下免疫療法があります。アレルギーの原因となる物質をアレルゲンと言いますが、舌下免疫療法とは、アレルギーの症状を改善、緩和するアレルゲン免疫療法であり、冒頭で話したように、花粉症の根治が期待できます。2014年秋に健康保険が適用になって以来、随分と普及してきています。

冒頭で話したように、2018年6月には、新薬として錠剤タイプが登場しました。舌下免疫療法ではでは、舌の裏から数分、薬を浸透させるのですが、これまで液体タイプのみだったところ、錠剤タイプとどちらかを選択できるようになったのです」

薬の選択肢が増えたとは、朗報です。具体的なケアについては順を追ってこのあと紹介しますが、遠山医師はまず、舌下免疫療法の仕組みを次のように解説します。

「舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎と診断された場合に受けることができます。

症状の根源である免疫に働きかけるわけですが、具体的には、アレルゲンであるスギ花粉やダニを薬で体内に少しずつ投与し、体をアレルゲンに慣らしていく方法です。そうすることで、花粉症のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、涙目などの症状を改善し、ほかのアレルギー治療薬の軽減に効能が認められています

もうひとつ、これも朗報ですが、スギ花粉症でこの治療を受けた患者さんの中には、ヒノキによる花粉症の症状も軽減したというケースがあります。スギとヒノキの花粉の免疫反応を起こす物質は似ているためです」

舌下免疫療法は、5~12月の間に開始する

スギ花粉に対する舌下免疫療法は、花粉が飛散している時期は開始できないと聞きました。いつどう始めるのが適切なのでしょうか。

「スギ花粉症の場合、スギ花粉エキスを体内に入れるため、花粉症が飛んでいる時期ではアレルギー反応が過剰になる可能性があります。そこでこの治療は、スギ花粉の飛散がおさまる5月以降で、本格的な飛散が始まる前の12月までに開始するのが望ましいわけです。スギ花粉の飛散時期を避けて舌下免疫療法を開始するということです。

それに、少しずつ花粉エキスに体を慣らすわけですから、鎮痛剤のような即効性はなく、少なくとも3年以上続けたあとでなければ効果は期待できません」

舌の下に薬を置いて1分放置するだけ

続いて、舌下免疫療法の手順について、遠山医師はこう説明します。

「アレルギーの原因であるスギ花粉の抽出物からできた薬を、液体は舌の裏に垂らして2分間放置したあとに飲み込みます。錠剤は、舌の裏に置いて1分間放置して溶けてから唾(だ)液で飲みこみます。

そうするとスギ花粉エキスが体内に吸収されていきます。服用後5分間はうがいや飲食をしないという手軽な方法です。

液体の場合は、服用し始めてから2週間は服用する薬の量を徐々に増やしていき、3週目から同じ量で毎日服用します。錠剤の場合は、はじめの1週間は少量を服用したのち2週目以降から増量をして、これを3~5年ほど継続していきます。

期間が長いと感じるかもしれませんが、毎年、鼻水、鼻づまりの花粉症対症療法の薬で一時しのぎをするよりも、舌下免疫療法なら医療機関で1カ月に1度程度、薬を受け取って自宅で自分で服用しながら根治が望めます。治療期間が長くなるほど効果が期待できるという報告もあり、おおよそ3年以上が推奨されています」

舌下免疫療法は8割の人に効果あり

花粉症といっても、軽症から重症まで、また罹患(りかん)する年齢の幅も広いようですが、舌下免疫療法では患者数ではどのぐらいの割合に改善が見られるのでしょうか。遠山医師は次のように答えます。

「健康保険が適用になってすぐにスギ花粉症で舌下免疫療法を開始した患者さんは、花粉症の時期を2シーズン過ごした翌年から症状が驚くほど軽減しています。そのため、こちらを選ぶ人は急増しています。ダニアレルギーに対する舌下免疫療法では、約3カ月で効果が出てくる場合が多いです。

また、医学研究では『2割弱は根治する可能性があり、かなり症状が抑えられる人・何らかの効果を感じる人は約6割、残りの2割前後は効果がみられない』という報告があります。個人の効果を見極めながら、治療を続けるかどうかを検討していきます」

錠剤も28日分の処方が可能に

続いて、舌下免疫療法の薬の液体タイプと錠剤タイプのメリットとデメリットについて、遠山医師に教えてもらいましょう。

「液体タイプは『シダトレン』、錠剤タイプは『シダキュア』という薬品名です。液体タイプは冷蔵保存が必要ですが、錠剤だと常温保存ができ、携行ができて外出先でも飲めるので利便性が高くなります。

舌下免疫療法は、毎日1回、その薬を服用します。どちらを選ぶかにあたっては、これまでは液体タイプは1度の診断で28日分を処方するのに対して、錠剤は14日分しか処方ができなかったのですが、2019年の5月から錠剤タイプも28日分の処方ができるようになりました。患者さんにとってはこれも朗報でしょう」

治療にかかる費用はどれぐらいなのでしょうか。
「健康保険適用で3割負担の場合、診療費と薬代の合計で1カ月あたり2,000~2,500円です。治療を始める前にはアレルゲンを確認する血液検査などが必要ですが、その費用は5,000円ほどです」と遠山医師。

軽症のうちに、年齢的に早い治療開始が望ましい

さらに遠山医師は、舌下免疫療法を開始する年齢について、こうアドバイスをします。

「アレルギーがあるかないか、また症状の度合いは、血液検査でわかります。スギ花粉症が『軽症』という結果が出た20~30代の患者さんに舌下免疫療法を紹介すると、『軽症だし、2年以上は面倒』と言われることがありますが、放置すると年齢とともに症状は悪化し、治療期間も長くなります。

数年後に症状が激しくなってから舌下免疫療法を始めるよりも、軽症のうちに早めに治癒をするほうが良いということを知っておいてください」

また、舌下免疫療法は特定の耳鼻咽喉科で行っていると聞きますが、遠山医師によると、
「舌下免疫療法は耳鼻咽喉科で行われていますが、どこの耳鼻咽喉科でも受けられるわけではありません。受診の前には必ず、電話やホームページ等で問い合わせてください」ということです。

舌下免疫療法では、毎年悩まされるスギ、ヒノキの花粉症の辛い症状の根治が期待できて、新薬や処方期間も患者にとって朗報が続いているということです。長い目で見ると、治療費も実質的に節約できるのではないでしょうか。今後ますますの効果や利便性に期待したいものです。

(取材・文 藤原 椋/ ユンブル)

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