映画『ずっと独身でいるつもり?』インタビュー 前編

松村沙友理「ふくだ監督が求めるのは『パパ活女子』ではなく『美穂』でした」

松村沙友理「ふくだ監督が求めるのは『パパ活女子』ではなく『美穂』でした」

2021年7月に、乃木坂46を卒業したばかりの松村沙友理さん。11月19日には、出演する映画『ずっと独身でいるつもり?』(ふくだももこ監督)が全国公開されます。

田中みな実さんが主演を務める本作で、松村さんが演じるのはギャラ飲みやパパ活をする20代の女性・美穂。“華やかな生活”を脅かされる不安や、自分なりの「幸せ」を探しもがく姿を体当たりで演じています。

インタビュー前編では、どのように美穂という役をつくっていったか。ふくだ監督や主演の田中みな実さんとのやり取りで、役を深めていった日々のことを伺います。

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追い込まれながらも「ただの美穂」を生きた

——松村さんが今回演じた美穂は、ギャラ飲みやパパ活などにふけりながら、若さを失うことにおびえる女性です。オファーを受けて、どのような印象を持ちましたか?

松村沙友理さん(以下、松村):最初にお話をいただいたときは、まだ脚本のない段階でした。でも、原作のおかざき真里さんのことが以前から好きなので、単純にうれしく思いました。おかざきさんの作品はすべての心情を描ききらず、ヒントだけ見せて読者に考えさせてくれるから、物語により深みを感じるんですよね。美穂は原作には登場しない、映画版オリジナルのキャラクターですが、いまっぽさが散りばめられていて、面白そうな役だなと感じました。

——原作にいないキャラクターだと、演じるにも自由度が高そうです。

松村:私自身は、ふくだ監督が求める「美穂」をつくるのに必死で、自由な感覚はあんまりなかったかもしれません。自分が追い込まれていくうちに出来上がったのがこの美穂、という感じがしています。ただ、そのおかげで映像にもリアルに追い込まれていく感じが出ているし、結果的によかったのかもしれないです。

——追い込まれたのは、演じるうえで何か不安なことがあったからですか?

松村:最初の本読みの段階までは、「パパ活をしている女の子」という役に対して、ちょっとコミカルなイメージでわかりやすく演じようと思っていたんです。でも、監督が求めているのは「パパ活をやっている面白い女の子」じゃなくて「ただの美穂」で。ふつうに存在しているリアルな美穂が、生きていくうえでたまたまパパ活をやっているだけなんですよね。

そういう話を聞いて監督が撮りたい「美穂」ってどんな子だろう、自分の捉え方とのギャップが大きいのでは?と、本読みから実際に撮り始めるまではずっと不安でした。

——「ただの美穂」を演じるために、どんな工夫をしたんでしょうか。

松村:監督からは「美穂という一人の女性を生きてほしい」と言われたので、美穂がいままでどんな人生を歩んできたのか、作品では描かれていない部分をたくさん妄想しました。カメラに映る部分だけを見ていれば、美穂の人生は途切れ途切れです。でも、その途切れ途切れのシーンが本当はちゃんとつながっている人生なんだってことを、できるだけ意識して演じるようにしていましたね。

作中より

作中より

六本木を、駆け抜けて

——印象に残っているシーンはありますか?

松村:六本木の街を走るシーンは、いま思えば楽しかったですね。撮影中はとにかくがむしゃらに走っただけなんですが、あんな大都会を裸足で走ることなんて人生でそうそうないことですし。ロケをした日はたまたま人が少なく、気温もほどよくて、本当に万全のロケーションで走らせていただきました。駅伝のゴールテープを切る直前くらい、清々しかったです(笑)。

——ふくだ監督は、松村さんの走り方がかっこいいとおっしゃっていました。

松村:本当ですか? じつは運動が一切できなくて、素の走り方はめっちゃダサいしタイムも遅いんです。だからその真実は絶対に悟られたくないなと思って、一生懸命かっこよく走りました。そう見えたならうれしいです!

周りを受け止められる強い女性に憧れる

——完成した作品を観た感想は?

松村:演じることを不安に感じたときもありましたが、その不安も忘れるくらい、素晴らしい作品だと思いました。田中みな実さんや市川実和子さん、徳永えりさんとは同じシーンになることがほぼなかったので、みなさんがどんなふうに演じていらっしゃったのか知らなかったんですよ。だから「こんなシーンになってたんだ!」「こうやってつながるんだ」と、たくさん発見がありました。

——それぞれに葛藤しながら強くなっていく女性の姿が描かれていましたね。

松村:4人も女性キャラがいれば存在感に多少の強弱がつきそうなものですよね。でも、この作品は4人がそれぞれにリアルな葛藤をもっていて、強くなっていく。どの人物も丁寧に描かれているし、環境も悩みも違う4人がいるから「私たちの」物語になるのだなと思いました。

——最後に、松村さんが思う「強い女性」について聞いてみたいです。

松村:周りの人や状況をまっすぐ受け止められる女性は、すごく強いなと思います。それこそ主演の田中みな実さんは、そんな方でした。私が美穂をどうやって演じていいかわからず戸惑っていた本読みのとき、みな実さんが「一緒に考えよう」と隣に来てくださったんです。私の台詞を読みながら「意地悪に演じたいならこう、強い女性にしたいならこういう感じでやってみたらどう?」と、具体的にアドバイスまでしてくれました。

できない人を放っておくのではなく、そういう人がいることを受け止めて自分にできることを差し出してくれる。先輩であるみな実さんが声をかけてくださっただけでもうれしかったのに、的確なコメントをいただいて、本当にありがたかったです。あのフォローがなかったら、美穂になれなかったかもしれません。

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インタビュー後編は11月20日(土)公開予定です。
(構成:菅原さくら、撮影:宇高尚弘、編集:安次富陽子)

■映画情報

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『ずっと独身でいるつもり?』
2021年11月19日(金)全国ロードショー
(C)2021日活

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