はらだ有彩・大木亜希子対談 第2回

『日本のヤバい女の子』1冊目と2冊目の違いとは?

『日本のヤバい女の子』1冊目と2冊目の違いとは?

昔話に登場する女の子とガールズトークをしているかのような読後感が気持ちいいと話題の『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』(柏書房、以下静かなる抵抗)。その著者であるはらだ有彩さんと、『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)が注目を集める大木亜希子さん。

昔話に登場する女の子と、現代を生きる女の子。さまざまな女の子に寄り添ってきたふたりの、初対面とは思えないほど盛り上がった対談を全5回にわたってお届けします。

大木さん(左)と、はらださん(右)

大木さん(左)と、はらださん(右)

「人と出会ってわかり合うことは快楽の本質である」

——大木さんは、はらださんの本を読んでいかがでしたか?

大木:ちょっと話が逸れてしまうのですが……。以前、作家の羽田圭介さんがご自身のユーチューブで『アイドル、やめました』のことを取り上げてくださいまして。「この本の面白いところは、元アイドルの行く末ではなくて元アイドルだった大木さんが8人の共通項のある女の子と出会い、自分の気持ちを昇華させて行くその出会いにある。なぜなら、人と出会ってわかり合うというのは快楽の本質だからである」とおっしゃっていて。

はらだ:真理のほうへ……!

大木:そうそう! 羽田さんとはお会いしたこともなかったし、自分自身では「快楽の本質」までは着いていなかったのですが、私の成仏させたい気持ちはわかってしまうものなのだなと思いましたね。

はらださんの本にもそれを感じたんです。神話や遠い時代の日本の昔話に出てくる女の子たちの理不尽な扱われ方に、優しい視点で思いを馳せることで、はらださんもご自身の気持ちを成仏させたかったのかなって。

はらだ:『静かなる抵抗』は2冊目になるのですが、1冊目を出したときは、生きづらいなと思っている女の子たちを景気付けしたいなと思ったんです。

大木:景気付け! いい言葉ですね!

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はらだ:ありがとうございます。勢いが大事だなと思ったこともあり、前作では、自分にできないことを軸に章立てしていきました。「人間をやめる」とか、「消える」とか、「この世界を飛び越えてどこかに行ってしまう」とか。景気が良くていいなと思えるような人たちをベースに20本まとめたんですけど、刊行イベントでのある質問に考えさせられて……。

大木:どんな質問だったんですか?

はらだ:怒ってもいいということはわかったし、勇気ももらえたけれど、私は結局明日からもセクハラオヤジのいるオフィスに行かないといけないんです。どうしたらいいでしょうか?」と。

大木:ああ……。

はらだ:私も、確かになと思ったんです。そういう環境だと、私の本ができることって、本の角でセクハラオヤジを殴るくらいしかできないなって。それにしてはソフトカバーで柔らかめなのですけれど……。

大木:ハードカバーにしないと!

——同意です。

はらだ:結局、怒ったりどこかに行けたりできる人はいいけれど、できない人もいるんですよね。最高にロックな感じの一発をお見舞いできて「はい、終わり」とできればいいのですが、その後も生活は続くわけですし。じゃあ、怒りの感情を持った次に何ができるかという視点で2冊目はまとめました。

大木:怒りからの静かなる抵抗!

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誰かが作ったシナリオには乗らないという道もある

はらだ:はい。カウンターパンチ後をメインに編集しました。最初は、怒鳴るとか泣きわめく人を選ぼうとしていたのですが、よくよく探してみると、一見静かに暮らしているけれど、すごい抵抗になっている人もいるんじゃないかと気づいたんです。

たとえば、13章の<意思とヤバい女の子>に登場する松浦佐用姫。地元である現在の佐賀県で暮らしていたら、新羅に出征に行くという男の子と出会って恋仲になるんですけど、出発の日は来てしまう。ずっと手を振って見送り続けるうちに、佐用姫は石になってしまうんです。

大木:石に……。

はらだ:最初に読んだとき、船に乗り込んで壊すとか、出港を邪魔するとか、もう少し何か行動できたのではないかと思い、佐用姫はずいぶん受け身だなと感じました。けれど、考えるうちに受け身に見えてすごい抵抗なのかもしれないと思ったんですよね。

というのも、今も佐賀県には石になった佐用姫だと伝えられる「元佐用姫の石」があるんです。実際に佐用姫なのかは「と、言われている」ものなので真偽は不明なのですが。でももし、本当にそれが佐用姫だとすると、現代もそこに「いる」んですよ。消えて無くなったりしないで、今もそこに存在し続けて、普通に日々を過ごしている。一見受け身なのだけれども、自分を理不尽な目にあわせた世界から消えてやらない。それはそれで抵抗の一つのパターンかもしれないと思ったんですよね。

——抵抗していますね。

はらだ:大木さんの本にも似たような「抵抗」を感じました。たとえば、元アイドルでメディアに出るのはすごく成功している人かどん底の生活をしている人。見る人は両極端なその後を期待しがちですよね。そこで大木さんの本を読むと「いや、私たち普通に暮らしていますけど?」って。

大木:あなたたちがお望みするシナリオには乗りませんけど? みたいな。

はらだ:そう。それがすごくいいなと思うんです。生きているし、ハレとケの概念が存在していて。たとえば、ステージでパフォーマンスをするのはまさに特別な晴れ舞台ですが、ステージを下りればケ(日常)がある。ただそれだけなのに、アイドルやスポットライトを浴びた人って「日常」の露出が増えるほどに「脱落」というレッテルを貼られがちだと思うんです。

——「消えた天才」とか、「あの人は、普通の人になっていた!」とか失礼ですよね。

はらだ:まず消えたという言い方が失礼だと思うし、「消えた」と「天才」という組み合わせもよくないですよね。ひとつのチャレンジで大成功しなければその他は落伍者という感じがすごくイヤなんです。私が暮らす関西では、元よしもと芸人だった営業さんがめちゃめちゃいるんですよ。彼/彼女たちは、やたらトーク力が高くて面白くて、売れっ子営業としてガンガン活躍しているんです。

大木:スキルを活かした、新しいかけざんですね。

はらだ:そう。芸人にはなれなかった/ならなかったけれど、社会に出てめっちゃ活躍していますよという人も大勢います。「活躍」しなくても自分の生活に満足していますよという人だってごまんといるはずです。そういう選択ももっと普通に語られるようになるといいですよね。

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第3回は2月14日(金)公開予定です。
(構成:安次富陽子、撮影:面川雄大)

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