はらだ有彩・大木亜希子対談 第1回

「元アイドル」が成仏させたかったもの【大木亜希子・はらだ有彩】

「元アイドル」が成仏させたかったもの【大木亜希子・はらだ有彩】

昔話に登場する女の子とガールズトークをしているかのような読後感が気持ちいいと話題の『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』(柏書房、以下静かなる抵抗)。その著者であるはらだ有彩さんと、『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)が注目を集める大木亜希子さん。

昔話に登場する女の子と、現代を生きる女の子。さまざまな女の子に寄り添ってきたふたりの、初対面とは思えないほど盛り上がった対談を全5回にわたってお届けします。

いつまでも「その他大勢」の自分

——おふたりは今回が初対面ですね。はらださんは大木さんの本を読んで、どんな感想を持ちましたか?

はらだ:大木さんの『アイドル、やめました。』は、現代の説話集ですよね。厳密に、温かく、やさしく採集された説話集。

大木:ありがとうございます。

はらだ:収録されている8人の取材対象者や読者を救いつつ、大木さん自身も救われているという優しい構図は胸にくるものがありました。「成仏」という言葉が多く使われていたので、大木さんのその思いが成仏できたらいいなと思うとともに、今日は、何を成仏させるのかを聞きたいなと思っているんです。

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大木:うれしい。ありがとうございます。何を成仏させるのか……。私自身は、アイドルという枠組みの中にいましたが、前田敦子さんや大島優子さんのような立ち位置には到底なれないなと、活動する中で気づきました。きっと、いつまでも「その他大勢」なんだろうな、と。

けれど、アイドルとしてそこに存在する限りは、その務めを果たさなければいけませんよね。握手会では——ファンの人が少なくても——笑顔でいなきゃならないわけで。

——「選ばれし者」と「そうではない者」の区別がはっきりついていると。

大木:そうです。その現実に気づいていても、なんとか自分の個性を出していかなきゃいけない。わかっているけど、やっぱり相当キツくて。あの環境の中にいれば誰もがそう感じると思うのですが、なかなか周囲には理解してもらえない感情なんですよね。

その感情のやり場を見つけられないまま、アイドルを辞めて、会社員になりました。でも今度は“キラキラ女子”に見られたいとか、“ハイスペ男子”とお食事にいかねばならぬ……みたいな思いにとらわれてしまって(苦笑)

はらだ:それってどういうことですか?

大木:アイドル時代に経験した理不尽が原動力というか……。たとえば、紅白歌合戦には出たけれど、私は「がんばろう日本!」のビックリマークの点のところでほとんど見切れていたんですよ。

「紅白出場歌手って言うてもな……(汗)」「でも私の切り札って他にある?」という自信のなさと「いや、私には、それに相応しい環境があるっしょ」というプライドの狭間で揺れていて。そんな醜い気持ちを成仏させたいってライターになってはっきりと自覚したんです。

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アイドルは好き。でも構造には疑問がある

はらだ:私がルームシェアをしている友人が“ややドルオタ”なんですけど……。

大木:やや?

はらだ:本気でオタクをしている人に申し訳ないから“やや”って言うように念を押されていまして。

大木:ああ! 「本当の人」に申し訳ないってよく聞きます(笑)。

はらだ:そんな彼女の影響で私もアイドルをよく応援していた時期があるんです。けれど、知れば知るほどいいなと思う反面、なんだか許せない部分もあって。

大木:許せない?

はらだ:グループの存在や、アイドルの女の子たちに対してではなく、構造に対して。たとえば、(元AKB48で現在は声優の)佐藤亜美菜さんが、選抜総選挙で8位にランクインしたにもかかわらず、『言い訳Maybe』のPVではわずか数秒しか写っていなくて泣いた、と話しているのを見て、「いや、そこは全員の秒数を確保しておけよ!」と思って。そこから、選ぶ仕組みが作られた功罪について考えてしまって。

大木:功罪?

はらだ:秋元康さんの……。大木さんも「自分が選ばれることはないだろう」と思っていたわけですよね。そういう話を聞くと中にいた方の気持ちを察するにあまりあるものを感じてしまうんです。でも、私がアイドルのことを考えるときの立ち位置は消費者で、選ぶ側に立っているわけじゃないですか。そこでぐるぐると葛藤していましたね。

大木:慮ってくれている……(感動)。

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選ぶ側なら何をしてもいいってわけじゃない

——その話を聞いて、『静かなる抵抗』2章の<許さない女の子たち>の「運命とヤバい女の子」で紹介されている『累ヶ淵(かさねがふち)』がぼんやり浮かんできました。

はらだ:『累ヶ淵』って、連れ子だった助(すけ)という女の子の顔が気に入らないと義父が殺してしまうんです。そのうち母と義父の間に子どもが産まれて「可愛い子が生まれてよかったね」と言っていたら、その子に助の霊が乗り移って……という話。助の扱いが軽いのは、義父に「選んでいい」という感覚があるからですよね。それがすごくイヤで。

——「選んでいい」とか「軽く扱っていい」なんて傲慢ですよね。でも、つい優位なつもりで無自覚に傲慢に振る舞ってしまうことって、誰にでもあるかもしれません。それこそ大木さんは「元アイドル」として見られることが多いと思いますが、そこに対して抵抗や葛藤はありますか?

大木:それはずっとありますね。自意識にも刷り込まれていたので、会社員時代は元アイドルの屋号を活かして、頑張って営業をして成果を出そうと武器として扱っていました。それはある意味、正解だと思うんです。努力して掴んだ屋号ですし。でも、それは本来の自分ではないので……。

私たち、元アイドルの行く末は2パターンに分かれているんです。ひとつは芸能界に残り続けて、元アイドルという背景を背負いながら、舞台やお芝居をやらせてもらうこと。もうひとつはスパッと諦めて一般企業に勤めたり、芸能界とは関係のない仕事をしたりするケースです。

私としてはどちらも尊いと思っているんですよね。(アイドル、やめました。の)取材を通して、一度アイドルという経験をした子が、飄々としていたり、今の仕事で輝いていたり、結婚したり、今でも当時の傷を抱えながら生きていたりといろいろなケースがあると知ることができて、ようやく私もラベルが気にならなくなったというか、気持ちを昇華できているのかなと思えるようになったので。

第2回は2月12日(水)公開予定です。
(構成:安次富陽子、撮影:面川雄大)

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