仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。理想の自分になるためにがんばってはいるけれど、時々しんどくなってしまうことも。
今回、ウートピでは、そんな悩ましい両立について、改めて問い直してみるキャンペーンを始めました。その両立は貴女の人生に本当に必要なものなの? 貴女が幸せになれる両立ってどんなカタチ? 一度、一緒に考えてみませんか?
「働く女性」と言うと、すぐに「輝け」だの「仕事と家事の両立ができる女性が素晴らしい」と言われることが多い昨今。
「働くキラキラ女子」がメディアで取り上げられるたびに「私はできていない」「仕事と家事の両立なんて無理!」と自己嫌悪に陥ったり、不安に思ったりする人も多いのではないでしょうか?
大手化粧品メーカー「エイボン」のマーケティング本部で看板ブランド「ミッション」の商品開発を手がける関本由紀子さん(43)。31年目を迎える同社の基幹スキンケアブランド「ミッション Y」の開発責任者で、プライベートでは8歳と5歳の2児の母です。
……と、ここまで聞くと「ああ、やっぱりメディアで取り上げられるようなスーパーウーマンなのね」と思ってしまいますが、当の関本さんは「両立なんてできていませんし、子育ても人の手を借りてなんとか回している状態です」とキッパリ言います。
ウートピ世代の“先輩”にあたる関本さんに、ウートピ世代が不安や疑問に思っていることや日々抱えているモヤモヤをぶつけてきました。
人の手を借りて子育て
——このたびはインタビューを引き受けてくださり、ありがとうございます。正直言うと、関本さんのプロフィールを見たときに経歴がキラキラしてて「う、ちょっと遠いな」って思ってしまったんです。
関本:ありがとうございます。でも30代は独りよがりな失敗をたくさんしていましたよ。40代になってみて30代の頃よりはうまくやれているなって思いますけど(笑)
——そうなんですね! ちょっと安心しました。仕事のことも聞きたいんですが、まず関本さんがユニークな制度を利用して子育てをしていると伺っておりまして、そのあたりからお話をお聞きできればと思います。
関本:オペアのことかな? 私は今、8歳と5歳の子どもがいて夫はフランス人なんですが、オペアという留学プログラムを利用してフランス人の若い女性に子育てや家事を手伝ってもらっているんです。
——オペアって何ですか? 初めて聞きました。
関本:もともとはフランス発祥の留学プログラムで、海外に行きたいけれどお金がない若い人たちが、ホストファミリーの子どもの世話をすることで無料でホームステイできるという制度なんです。
——日本ではあまり知られていないですよね? 欧米では一般的なオペアを利用しようと思ったきっかけは?
関本:夫がフランス人なんですが、オペアを利用しようというのは夫の発案なんです。私もそれまで知りませんでした。
——利用してみていかがですか?
関本:猫の手も借りたいほど忙しい乳幼児を育てているお母さんにとってありがたい制度だなと。もちろんベビーシッターを雇ってもいいんですが、高額になってしまいますし。
我が家は、子どもに生きたフランス語や文化を学んでほしいという意向でほぼ毎回フランス人の若者を受け入れているんですが、とても助かっています。
朝に掃除機をかけておいてもらったり、子どもの世話をお願いしたり……。それだけで時間の節約にもなるし、余裕が生まれる。子どもも自然にフランス語を覚えられるので夫と「家庭内留学だね」って言っています。
他人を家庭に入れるのってどうなの? という意見もあると思うんですが、もちろん受け入れる前に審査はしていますし、変に線引きされない人間関係を築くのも子どもにとって大事かなと。
——つい一人で全部抱え込んじゃう人も多いと思うんですが、仕事も子育ても人の手を借りるって大事ですよね。
関本:そうなんですよ。もう日々を回すのに精一杯でカッコつけていられないですよね(笑)
家事は「それぞれが得意なことをやる」でいい
——ただ、すべての家事をお願いしているわけではないですよね? そのほかの家事はどのように分担しているんですか?
関本:夫が洗い物と洗濯、アイロン担当で私は料理や子どものお弁当づくり、宿題や勉強フォローの担当です。最近は長男が掃除機をかけてくれます。それぞれが得意なことをやればいいし、気づいたほうがやるというのでいいと思うんです。先週末は、私が風呂とトイレ掃除をしました。その前の週は夫が風呂場の大掃除をしてくれました。
例えば、私ばかりが家事をしていると夫が「フェアじゃなくて由紀子が可哀想」と言うんです。お互いが家庭の中でジェネラリストとして働くことや「公平に!」という概念は夫から影響を受けた部分ですね。
「両立」って何だろう?
——すごくうらやましいです。まだまだ世間では、家事は女性の役割という考えがあったり、働いて結婚している女性に対して「仕事と家庭を両立していてすごいですね」と言ったりすることってあると思うんです。
「両立」って一見、耳ざわりのいい言葉だと思うんですが、最近「本当に両立って必要なの?」という疑いもあって。男性に対してはあまり「両立」という言い方はしませんし。そのあたりがモヤモヤしているんです。
関本:私がイメージする「両立」って仕事も家庭のこともどちらも100%でやるというイメージなんです。枠内に入るようにセーブしてどちらも過剰にならないようにする感じ。
でも実際は、うまくやれていることもあるけれどやれていないこともあって無理くり進んでいる。ぐわってお互いがフル回転で回っている感じですね。うまくやれているかって言ったらやれてない。
実は最近、我が家にも変化がありまして。夫がこれまでは在宅勤務だったんですが、6月から週3で出勤することになって、子どもを学童に通わせないといけなくなったんです。
学童に通う準備とか学校に出す提出物の準備をしているとあっという間に夜も深い時間になっている。さらに昼間に残った仕事をやることもあるから睡眠時間が3時間のときもあるんです。これが「うまくやれているか?」って聞かれたらやれていないですよね。
昼間は昼間で、会議が1日に5〜6個も入っているなんてザラだし、会議室に数時間こもってガーッと資料を作っていることもある。人によっては「大変そう」「無理していてかわいそうだな」って思うんじゃないかな。
ということを総合すると「両立できてないじゃん!」って言われると思うんですが……。自分では、いっぱいいっぱいのところでなんとか帳尻を合わせている感じですね。こんなこと言ったら、読者さんに怒られますよね?
——いえ、なんか安心しました。関本さんでもそうなんだーって。
関本:でも日々を回していくしかないし、1日24時間あるからそこをどう使おうかという発想になるんです。まあその考えに行き着く前に葛藤や失敗もたくさんありました。
——ぜひ、その部分を聞きたいです!
次回は、関本さんの仕事について聞きます。
■プロフィール
関本由紀子(せきもと・ゆきこ)。1973年生まれ。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科卒業。化粧品・香水等ラグジュアリー製品の輸入販売を行う仏系商社にてマーケティングアシスタント、大手通販化粧品会社にてスキンケア製品の商品企画担当等を経て、2014年1月エイボン・プロダクツ(株)マーケティング本部ブランドマーケティング課マネージャーとして基幹ブランドMISSIONを担当。2017年1月より同社マーケティング本部商品企画部次長。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)
「#両立って必要?」キャンペーンがスタート
「仕事と家庭」「恋愛と仕事」「有能さと可愛げ」などなど……私たち働く女性の周りにはたくさんの両立が存在します。「どっちも手に入れたい!」という人もいれば「でもそれも大変そう」という人や「そもそもそんなこと意識したことなかった」という人もいるのでは?
そんな「両立」について、ちょっと立ち止まって考えてみない? というわけで、ウートピ編集部では9月11日から「#両立って必要?」キャンペーンをスタートしました。あなたが普段感じていることをハッシュタグ「#両立って必要?」をつけてSNSでつぶやいてください。皆さまからの生の声をお待ちしております。